「Unreal Engine 5」によって描かれるレトロで美しい英国風の街を舞台に、プレイヤーは「探偵」としてさまざまな事件を解決に導いていくことになります。
◆名探偵はなぜ街を去り、そして夕焼けの中で帰ってきたのか。フォトリアルとアニメ調の間にある映像美
物語は、三年前に起こった“とある事件”がきっかけで姿を消していた「探偵」こと主人公が、大都市シルバニアへ帰還する場面から始まります。主人公は過去にシルバニアで名を馳せたことがある有名な探偵であり、その名を知らない人はほとんどいないようです。しかし、それは必ずしも良い意味で有名という訳でもなさそうです...。
そんな悲喜こもごもとした心境で訪れたシルバニアの街では、女王の即位式が執り行われていました。街中はすっかり賑やかなパレードムード。紙吹雪とかも舞っちゃってます。ですが、シチュエーション以上に“夕焼け”の表現がとにかく素晴らしい。石畳に反射する太陽光、ほんの僅かに濡れている箇所が判別できる床の表現。妙に現実感のある街並みは、目的もなくブラブラと街歩きしたくなるほどの美しさがあります。
「アニメ調ゲーム作品もここまで来たか」と、舌を巻かずにはいられません。
パレード中の広場を抜けた後、クラシックなバーで旧友のローレン警視庁と再会を果たしました。主人公は三年前に自身の家族を失っており、家族の命を奪った何者かを探し出すために街へ戻ってきたのだそうです。ただ、この事件は既に捜査も打ち切られてしまい、事実上の迷宮入りでした。ローレンと情報交換を進めていたところ、突如お店の中で1匹の人狼が騒ぎを起こし始めて、早速シルバニアでの最初の仕事が始まりました。
それにしても、この手のゲームにしては珍しく主人公が成人しているようで、ゲーム冒頭からバーでカクテルを嗜む姿など中々にアダルト。最初はてっきりノンアルコールカクテルなどと思いましたが、主人公がたらふく酒を飲んで酔いどれるサブクエストがあったのでちゃんとお酒のようです。凛とした女性主人公も、美味しいカクテルを目前にすると、少女のような幼さが一瞬だけ現れるような気がしました。かわいいですね。
ゲーム中は主人公の職業が探偵であるというコンセプトを活かして、事件で得た情報から推理を行うパートや現場で手がかりを探し集めるパート、逃げる容疑者を問い詰めるパートなど、ドラマや映画、小説のようにヒロイックな探偵像の活躍シーンが盛りだくさんです。
しかし、「推理を成功させないとバッドエンディング」のように、ゲーム体験においてコアとなる要素ではありません。あくまで物語の没入感を高める演出効果。ただ、既に公開中の実機映像などからも分かる通り、映像表現に強くこだわる作風なので、体験を強めるいち演出目的であっても、プレイヤーを物語にしっかり引き込むための仕掛けとして上手く機能しています。
探偵要素がゲームシステムと密接に紐付いている箇所もあります。街中で気ままに過ごしているNPCたちを「観察」アクションで捉えると、一人ひとりに服装や特徴が個性として割り振られているようです。そうした要素を瞬間的に分析し、主人公の中で「この人物は何者なのか?」を結論付けることができるのです。
この要素で街ゆくNPCたちを観察していく、人間観察的な遊びが意外に楽しいです。また、人に化けた人狼を見つけると、そのまま正体を見破ってバトルに突入することもできます。ストーリーでは、この観察を使って逃げ隠れた犯人を見抜く場面もありました。運営型のオープンワールドゲームだと、比較的有象無象になりがちな街中のNPCを有効活用できる面白い仕組みだと言えます。
◆フィールド探索は楽しい。でも「ジャンプ」が出来ない違和感は気になる
オープンワールドゲームなのでやはりマップ探索は醍醐味の一つでしょう。
マップ探索は乗り物による移動が思いの外スピーディでした。跳躍できるポイントに行くとそのまま上空を飛ぶこともできて便利です。当然、スタミナの概念があるので、常に飛び続けることは難しいですが、今回のクローズドβテストで探索できる範囲においては、ファストトラベルに頼らないスムーズな移動体験が心地よいものでした。
キャラクター単体での移動も感触としては悪くありません。マップ内の各建物にはフックで移動できるポイントが随所に設けられており、探偵なのに怪盗のような身のこなしでスイスイ高所へ移動できます。上層階へと行きたい場合、ほんの少し周りを見渡すだけでフックを引っ掛けるポイントが見つかるので、目的地に中々辿り着けないというストレスは少ない気がしました。ちなみに馬を召喚して飛んでしまえばさらに時短です。
現状で気になる点があるとしたら、立体的な地形を行き来するマップ構造であるのにも関わらず、本作は「ジャンプ」ができないということでしょう。簡易的な段差であれば自動的に飛び越えてくれますが、プレイヤー側のボタン操作で移動の全てを制御できないのはやはり気になります。
バトルはマップ探索中に敵に気づかれるか、あるいはNPCの中から敵を見破ることで戦闘開始となります。しかし、既存のアクションRPG作品のようにシームレスにそのままバトルへ突入する訳ではなく、その場が1度バトル用のフィールドとして仕切られてから、あくまでそのバトルエリア内で戦闘を行います。見えない壁に阻まれた中で戦うことになるため、最初はそこに違和感を感じることもありました。
また、初回クローズドβテストの時点ではバトル体験が醸成されておらず、結論としては物足りなさが顕著でした。例えば、対象を1人ロックオンすると、カメラもそこに合わせて追従する仕様のため、背後の敵や真横からの攻撃に対処しづらい状況が生まれます。かと言ってロックオンを外すと今度は微妙に戦い難い。そのため、死角からタコ殴りにされるストレスを受け入れて、戦うしかありません。
加えて、現状のビルドでは攻撃の打撃感もやや希薄であり、率直に言って爽快感をあまり感じられませんでした。ただ、敵を弱体化させた後に発動できる固有アクションだったり、キャラクターごとの専用リソースを使ったスキルは個性が生まれやすくて個人的に好きです。
バトルはキャラクター入れ替えと固有スキル、必殺技などを織り交ぜてゲージを削り、弱体化後に畳み掛けていくわかりやすいフォーマットでした。そこに敵の攻撃を受け流すパリィ要素も加わりますが、肩越しカメラとカメラの取り回しの悪さが起因して、カメラ外にいる敵からパリィを成功させるのは難しいと感じました。
しかし、ボス敵が相手だと戦う対象が基本的にボス1人に限定されるので、ロックオンの仕様は気になりません。すると今度は、ボス敵の連続攻撃をパリィで受け流し続けていることで、徐々に見えない壁へと寄ってしまう状況が生まれ、その“見えない壁の存在感”が気になってしまうのです。何にせよ、バトル部分については今後もベータテストを重ねて磨き続けてほしいというのが、本作を期待するいちユーザーとしての本音です。
◆気になるところは目立つが、磨けば間違いなく光る石。現状でも体感7割くらいは光っている完成度
初回のクローズドβテストという事情もあり、気になる点はとことん目立ちます。先に挙げたジャンプが出来ない違和感とバトル体験のストレスは特に目立つところでしょう。
しかしながら、それらを補えるだけの魅力も十分備わります。シネマティックなストーリー体験、息を呑むほどに美しい映像美、作り込まれたシルバニアの街並みと、生活感溢れるストリートの活気。さらに観察システムのおかげで、NPCの存在にも意味が生まれているようです。
もちろん、キャラクターたちも魅力たっぷりです。特に主人公は近年珍しくない自我を持つタイプですが、1人の登場人物として明確にキャラ立ちしているため、ふざけた選択肢でプレイヤー自身がその世界をかき乱すメタな遊びはありません。依頼を仕事と割り切れるだけのカッコ良さ、少しの非情さ、たまに覗かせるちょっとした弱さなど、皮肉屋気質ですが人間味の溢れる人物として描かれています。
作中では随所にクラシック音楽が引用されているのも推したいポイントです。ゲームの冒頭で唐突に始まるシンデレラ戦のBGMでは、ヴィヴァルディの「四季」から「夏」が採用され、シルバニア冒頭のパレードシーンでは、ヘンデルの「水上の音楽 第2組曲 アラ・ホーンパイプ」が使われていました。ゴシックな世界とクラシック楽曲の組み合わせをアニメ調のゲーム作品に持ってくるなんて反則ですよ。
なお、固有名詞やストーリーの分かりやすさについてですが、プレイヤーが置いてけぼりになることはありませんでした。それも探偵として殺人事件の捜査を行うなど、壮大な冒険を描くファンタジーというよりは、身近な場所で起きた不可解な事件を解き明かすミステリーが主体だからでしょう。街で発生した事件の調査から、どのようにスケールの大きなシナリオへと繋げていくのかが楽しみです。
『白銀の城』は、現在スマートフォン/PCを対象に事前登録が受付中です。AAAクラスの映像美が魅力でもある本作をスマートフォンでプレイしたとき、ビジュアル面でPCと一体どれだけの差が開くのかは気になるところでしょう。
また、最近ではスマートフォンで遊べてもゲーム自体の容量が肥大化している傾向にある点も気になります。ライブサービスゲームもいよいよストリーミングサービスの恩恵を享受できる時期に来たのかもしれません。ゲームの容量問題、なんとかしてください...。


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