本稿には、『ドラゴンクエストVII Reimagined』のネタバレが含まれています。
2026年2月5日に発売された『ドラゴンクエストVII Reimagined』(以下、ドラクエ7R)は、PSソフト『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』(2000年発売)を再構築し、ビジュアルからゲーム性まで新たに生まれ変わったリメイク作です。


オリジナルとなるPS版は、『ドラクエ』シリーズの中でもひときわ重みのある物語で知られており、本作もその魅力を正当進化させて受け継いでいます。

受け継ぐべき魅力を進化させ、再構築によって遊びやすさも増した『ドラクエ7R』。見どころも実に多い作品ですが、そのひとつとして外せないのが、主人公の親友である「キーファ・グラン」に関する変化です。

■自分の道を見つけたキーファとの別れ
島を統べる王族の王子として育ったキーファは、しかしその立場に疑問を抱いており、「自分にしかできないことを見つけたい」との想いから、主人公を誘って冒険の旅に挑みました。

その道中で、キーファは自分のやりたいことを見つけ出し、主人公と袂を分かつ決断を下します。「自分の生きる道を見つけた」と好意的に受け止めるか、「一方的に離別された王や妹姫が可哀想」と感じるかは、人によって意見が分かれるところでしょう。

この展開は、オリジナル版の頃から盛り込まれており、再構築された『ドラクエ7R』にも受け継がれました。しかしキーファのパーティ離脱について、物語的な面だけではなく、ゲーム性に関わる部分でも、別の問題が当時持ち上がっていたのです。

■返ってこない「種」に嘆く声
パーティから離れることで発生したゲーム的な問題とは、“キーファに使った「種」が無駄になってしまう”ことです。

『ドラクエ』シリーズの多くには、ステータスを増強させる「ちからのたね」や「まりょくのたね」といったアイテムが存在します。中には「命のきのみ」といった種状ではないアイテムもありますが、ステータスが上昇するアイテムを総称した場合は「種」と呼ばれる傾向にあります。

ステータスが永続的に上がれば、戦力は確実に上がります。
また、長所を伸ばすもよし、短所を補うもよし、使う相手をプレイヤーが任意で選べる点も有用です。「種」を使わなくてもゲーム自体は問題なくクリアできますが、使えば使うだけ楽になるのも確かなので、お役立ち度の高い「種」を重要視する人も少なくありません。

キーファは近接攻撃に秀でており、物理攻撃によるアタッカー的なポジションを務めます。そのため、「ちからのたね」を与えて、攻撃力をさらに高めたプレイヤーもいたことでしょう。

戦士系として有能だったキーファは、しかしその有用性からひとつの悲劇を生み出してしまいます。先ほど触れた通り、キーファは冒険の途中で離脱してしまうため、彼に使った「種」の恩恵もその時までの期間限定。貴重なアイテムだけに、悔やんだ人もいたことでしょう。

キーファの離脱は事前には明かされておらず、また主人公の親友という立場もあって、最後まで一緒にいると思い込んでもおかしくありません。途中でいなくなると知っていたら、主人公や他の仲間に種をあげたのに……そうした嘆きの思いもあり、「種泥棒」というかなり不名誉な呼び名をつけられてしまいます。

<cms-pagelink data-page="2" data-class="center">■『ドラクエ7R』のキーファは、一味違う!?</cms-pagelink>

■『ドラクエ7R』のキーファは、一味違う!?
貴重とはいえアイテムを使ったのはプレイヤーの判断ですし、仲間が離脱するRPGは当時の時点でも前例がいくつもありました。

“泥棒”といった強すぎるワードには、いささか行き過ぎな面も感じます。しかし、キーファが冒険の主導者だったこと、家族への説明責任の物足りなさ、そしてなにより、プレイヤーの分身である主人公よりもやりたいことを優先したキーファに、寂しさや切なさなどを感じた結果、反動として“泥棒”というパンチのある単語に集約してしまったのかもしれません。


一部のプレイヤーから“種泥棒”と囁かれたキーファ。そんな彼のことを思いながら、『ドラクエ7R』で彼との別れを体験した後、ちょっとした違和感を覚えました。それは、キーファ離脱後の「種」についてです。

実は、キーファがパーティから外れる前に、ひとつだけ「ちからのたね」を使っていました。餞別代わりのような、ちょっとした感傷的な理由で。離脱前提で使ったものなので、これに関して後悔や未練はありませんでした。

そして離脱後、キーファから装備品などを返してもらいますが、この時に「どうぐ」欄も合わせて確認したところ、「ちからのたね」の個数が使用前に戻っているように感じました。

キーファ離脱後にどこかで「ちからのたね」を手に入れたのかな……とも思いましたが、この時、脳裏にもうひとつの可能性がよぎりました。

■『ドラクエ7R』では、「種」にまつわる新たな展開が
その可能性を検証すべく、キーファ離脱前のセーブデータからやり直してみます。古のRPGゲーマーなので詰み状態を恐れて可能な限りセーブを残す習慣があり、今回はそのクセが役に立ちました。

そして今度は、「ちからのたね」に「命のきのみ」、さらには「まりょくのたね」など、普通ならキーファに使わないであろう「種」も含め、全てを注ぎ込んでみました。アイテム欄には「種」が何もなくなり、その分キーファのステータスがアップしています。


この状態のままゲームを進め、キーファと別れて、主人公たちの世界に戻ると……今回もキーファが袋を投げ込み、装備品などが返ってきました。

ここで「どうぐ」欄を再び開いてみると……そこには、「ちからのたね」などの「種」がずらり。もちろん、「まりょくのたね」も所持しています。

キーファと別れる前は、「種」が空っぽだったのは間違いありません。しかし、今手元には「種」が残っています。しかも、キーファに使ったのと同じ数の「種」が。

さきほど脳裏をよぎったのは、「キーファに使った分の種は、別離後に戻ってくるのでは」という可能性でした。そしてこの結果を見るに、その予感は的中していたようです。

プレイヤーが損をしないよう、離脱するキャラクターに使った「種」を返却した。システム的に考えれば、そうした処理を盛り込んだのだろうと推測できます。

しかし、キーファの行動という視点で考えると、「使ったと見せかけて、こっそり持っていた説」「いつか別れる日が来るかもと思い、使ったものと同じ分の「種」を自力で用意し、返せるように備えていた説」など、色々と想像が膨らみます。

「種」の返却に関して、果たして何があったのか。
その真実は分かりません。ただし、大事な事実はひとつだけ確定しています。それは、『ドラクエ7R』のキーファは“種泥棒”ではない、ということ。もらった分の「種」はきちんと返す。本作におけるキーファは、そうした男として描かれているのです。
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