そして、開発期間が長いからといって、必ずしもそれに見合う面白さが保証されるわけではないのがゲーム業界の難しいところです。長くゲームを遊び続けてきた人であれば、何年も期待し続けた作品がいざ発売された際、自身の期待値に内容が追いつかず、肩透かしを食らってしまったという経験が一度ならずあることでしょう。
筆者自身も、これまで幾度となく同じような苦い体験を繰り返してきました。しかし、5年以上もの歳月を待たされたカプコンの完全新作アクション『『PRAGMATA(プラグマタ)』に関しては、今や期待感しかありません。
■待たされ過ぎた「次世代のゲーム」
『プラグマタ』が初めて発表されたのは、2020年6月です。当時まだ発売されていなかったPS5でどのようなゲームが遊べるのか、そのランナップを紹介する映像の中で、本作が披露されました。
「PS5でこんなゲームが遊べるのか」と大きな期待を抱かせてくれた『プラグマタ』は、当初2022年に発売される予定でした。2年後の登場を楽しみにしながら、PS5を購入する理由のひとつにもなったほどです。しかし『プラグマタ』の発売は延期され、さらに数年が経過しました。PS5は発売から5周年を迎え、今やハードとしての円熟期に差し掛かっています。
「あの発表の瞬間に興奮した、あのゲームが、未だに遊べていない」という事実は、期待値が高かっただけに、相応のもやもやを募らせていきます。待てば待つほどグラフィック水準も上がっていくため、いつしか期待が高まる一方で、不安も感じ始めていました。
■待ち焦がれた気持ちを、体験版がもう一度奮い立たせてくれた
これだけ長く待たされると、「もういいかな」と諦めがよぎる瞬間もあります。また、年月が経つほど期待値は高くなり、「このハードルを本当に超えられるのだろうか」という疑問も拭いきれません。
そんな複雑な心境の中、『プラグマタ』の発売日が4月24日に決定しました。さらに、購入するかどうか悩んでいたところ、発売に先駆けて体験版が配信されます。
遊ぶべきかどうか、そして期待に応えてくれそうかどうか。この体験版を試金石にしようと決めました。実際に自分の手でキャラクターを動かし、その手応えを確かめた上で、期待に応えてくれそうかどうかを判断しようと考えたためです。
■特徴的なバトルシステム
『プラグマタ』のゲームジャンルは、SFアクションアドベンチャーです。主人公の「ヒュー」と、アンドロイドの少女「ディアナ」が協力しながら、さまざまな状況に立ち向かいます。ただし操作の主体はヒューであり、ディアナの操作は主に戦闘の一部パートのみです。
本作の戦闘はTPS形式で、銃撃や回避といった基本アクションはヒューが担当します。しかし敵として登場する“ボット”は非常に頑丈で、銃を撃つだけでは十分なダメージを与えられません。
ディアナは小柄な少女型アンドロイドのため直接的な戦闘能力はありませんが、ハッキングに長けており、“ボット”のガードを解除して弱点を露出させるなど、戦闘から探索まで幅広くサポートしてくれます。
ただし戦闘中のハッキングは、プレイヤー自身が操作します。つまり銃撃や回避を行いながら、同時にハッキング操作も進める必要があります。この「バトル」と「ハッキング」を並行して行う操作感こそが、『プラグマタ』におけるバトルデザインの核です。本作を象徴するシステムと言っても過言ではないでしょう。
体験版でこの独特のプレイ感を味わった時点で、すでに十分な手応えを感じました。しかし、筆者が見失いかけていた期待を取り戻した理由は、ゲームシステム以外の部分にもありました。
■ヒューとディアナの「バディ感」に、期待感が再燃
まず最初に期待を高めてくれたのは、ヒューとディアナの関係性です。システム監査員であるヒューは当然ながら大人であり、ディアナの見た目は可憐な少女です。この点だけに注目すると、ヒューが保護者、そしてディアナは守られるべき「弱き存在」として映ります。
しかし前述の通り、ディアナは高度なハッキング能力を持つアンドロイドです。
一見守られる存在に見える子どもが卓越した能力で大人を助け、そして大人はその身を挺して子どもを守る。この「大人×子ども」のバディ関係は、漫画や映画、小説などさまざまなメディアで魅力的に描かれ、受け手を魅了しています。
ヒューとディアナの関係からも、まさにその魅力を感じることができました。ディアナはアンドロイドなので、「子ども」と定義するのは正確ではないかもしれません。しかし、画面を通じて直感的に伝わってくる彼女の仕草や、ヒューとの関係性から感じるものは、理屈では抗いようのない確かな温かみがありました。
RPGやADVでは見かけることのあるこの関係性ですが、アクションゲームでは意外と多くありません。特に大作規模のタイトルでは守られる象徴として描かれがちなので、『プラグマタ』のような作品は珍しい存在です。
この関係をアクションゲームで体験できるのは貴重な機会なので、製品版への期待もおのずと上がらざるを得ません。
■低重力と宇宙服が生む「重み」の表現
ゲームシステムとは少し異なりますが、ゲームの作り込みとして印象的だったのが「重み」の表現です。もう少し具体的に言うならば、「低重力下の月面における、動きの手応え」が、驚くほど作り込まれていると感じました。
アクションゲームにおいて「動き」の完成度は、そのまま作品の魅力に直結します。
『プラグマタ』体験版の舞台は月面なので、低重力環境ゆえに動きやすいと考えがちです。しかし、ヒューが着用している宇宙服は“ボット”の攻撃にもある程度耐えられるほど頑丈なので、重量も相応だと想像できます。
そのためか、ヒューの繰り出すアクションは、いわゆる他のアクションゲームの主人公のような軽やかさはありません。しかし、それは決して操作性が悪いという意味での「重さ」や「鈍さ」ではなく、「重い宇宙服を着ている感覚」が自然に伝わってくるような動きでした。
コントローラー入力への反応は機敏でありながら、動作からは確かな「重さ」を感じる。「重い宇宙服を着て低重力の月面を歩いたら、きっとこんな感覚なんだろう」と納得したほどです。もちろん、リアルの月面を体験したことがありませんが、想像する動きとゲーム内の挙動に違和感がなく、「リアル」かどうかは分かりませんが「リアリティ」は強く感じました。
こうした「動きの質感」にまでこれほどのこだわりを見せてくれるのであれば、他のあらゆるシステムや演出の完成度についても、同様に高い水準になるはずだと考え、ここでも期待感が高まります。
■ディアナの表情に感じた「成長」の兆し
ヒューとディアナの関係性、そして「重み」の手応え。これらによって期待感が戻ってきましたが、最後の一押しになったのが、ディアナの「精神的な成長」の兆しです。
ディアナはアンドロイドなので、見た目と精神年齢が必ずしも一致するとは限りません。
恐るべきボットが目の前に迫ってきてもパニックにならないのは、機械的な冷静さというよりは、まだ「死(機能の停止)」や「恐怖」という概念を十分に理解していない危うさのようにも見えます。
また設定を読み解くと、蓄積されたデータが少ないようで、アンドロイドとしても「幼い」存在のようです。そのため、ハッキング能力は非常に優れているものの、精神面はまだ成長途中のようにも感じられます。
それを象徴していたのが、体験版のボスを撃破した直後の、何気ない一幕です。無事に勝利したふたりは喜び、ヒューが「よくやった」とばかりに、ハイタッチを促すように片手を高く掲げました。
しかし、ディアナはその手の意味がわからず、ただ不思議そうな顔をして首を傾げるだけ。それを見たヒューは「うまくいった時はこうするんだ」とディアナの小さな手を掴み、自分の手に打ち合わせることでハイタッチを教えます。
それまではヒューと対等に、あるいは少し生意気なくらいに言葉を交わしていたディアナでしたが、「ハイタッチ」というシンプルなボディランゲージすら知りませんでした。
初めて経験した感触が残る自分の右手を、じっと見つめ、驚いたように目を大きく見開いたディアナの表情。その変化はごく僅かでしたが、何気ない表情の向こうに、これから製品版で描かれるであろう物語の奥行きを、筆者は(勝手な想像かもしれませんが)確信したのです。
彼女の成長を最後まで見届けたい──その気持ちに気づいた今、『プラグマタ』という作品のプレイを避けては通れないものとなりました。
■5年待った真価を、自らの手で問うために
『プラグマタ』体験版というごく一部に触れただけで、筆者は一度失いかけていた期待を取り戻すことができました。もちろん、この記事で挙げたポイントを同じように評価する人もいれば、あるいは全く異なる要素に注目し、自分なりの期待を抱く人もいるでしょう。
2020年の発表から5年。これほど長く待たされたという事実は、時として作品にとってのマイナス要因になり得ます。しかし体験版を通じて、その長い歳月をかけて細部に至るまで磨き込んだのであろうという、開発陣の熱量を感じることができました。
果たして『プラグマタ』の製品版は、ユーザーを焦らせ続けた甲斐がある傑作に仕上がっているのでしょうか。その真価を自らの手で確かめる勇気を、この体験版が与えてくれたように思います。今は改めて、4月24日の発売日が待ち遠しくてなりません。


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