セガゲームスが2012年より運営を行っている『ファンタシースターオンライン2(以下:PSO2)』は、シリーズ作品でありながら過去作を未経験の人でも予備知識なく楽しめる世界観、誰もがすぐに楽しめる操作性、基本プレイ無料という遊びやすさが魅力のオンラインRPGです。

PCはもちろんPS Vita、スマートフォンといったさまざまな機種に対応したこともあり、現在までに350万IDを突破した人気作品へと成長を遂げています。
そしてゲームもさることながら、オンラインRPGとしては非常に珍しいメディアミックスを行っていることでも有名です。昨年12月には舞台が上演され、高い人気を集めました。そして2016年には、満を持してテレビアニメが放送されます。

このアニメ化を含めたメディアミックスにはどんな狙いがあるのか。今回、『ファンタシースター』シリーズプロデューサーの酒井智史氏にインタビューを敢行し、これまでに感じた手応えと、アニメについて訊ける範囲のことを伺ってきました。

◆舞台は驚くほど好評だった

――本日はよろしくお願いします。

酒井氏:はい、よろしくお願いします。

――今回は『ファンタシースターオンライン2』のメディアミックスについていろいろとお伺いしたいのですが、その前にひとつ…。先日、スタッフによる「『アークスダンスフェス』を踊ってみた!」という動画を公開しましたよね?

酒井氏:ああ、やりましたね(笑)。

――ファンの間でもかなり話題になっていましたが、一体どういった狙いで公開したのでしょうか?

酒井氏:あれは7月に実装した参加型ステージライブ「アークスダンスフェス」の一環として公開したものですね。これまでもゲーム内でライブを見ることはできましたが、今回はプレイヤーさん自らが参加できるようになっていて、ガイドに合わせてボタンを押すと演出が派手になっていく、音ゲーの要素を取り入れた「ユーザー参加型のライブイベント」なんです。

そして先日有明コロシアムで開催した「アークスフェスティバル2015」では、この遊びをリアルで再現しよう、と言う事で、イベントの最後にみんなで「リアルダンスフェス」を踊りたいと思ったのです。
リアルで踊ると言う事を前提にしていたので、振付も特徴的なものをと言う事でパパイヤ鈴木さんにお願いしました。

ただ、皆さんにいきなり「踊ってください」というのもハードルが高いじゃないですか。そこで、誰もが楽しめる踊りをお手本として見せようということで公開しました。

――僕自信も、初めて見たときは驚きました(笑)。

酒井氏:ゲームの開発者としては逸脱していますからね。ただ、私たちが今までやってきたことを振り返れば、これも全然ありじゃないかと思っています(笑)。

――しかしいきなりダンスを踊って、体の方は大丈夫でしたか?

酒井氏:しばらくは筋肉痛が続きましたね(笑)。でも、イベントでの「リアルダンスフェス」は大成功でした。アリーナに降りてきたユーザーの皆さんが本当に楽しそうにダンスを一緒に踊ってくれたのは嬉しかったですね。スタンドも含めて掛け声やダンスで有明コロシアムが震えていましたから。

オンラインゲームのイベントではなく、ライブ会場のような一体感が合って、みんなでダンスをすると言うのがこんなに楽しいのか!と思った方もたくさんいたと思います。こういう、ゲームを越えた楽しさを自分たちが提供していくのも、『PSO2』ならではの良さだと感じました。


――(笑)。それでは改めて、昨年の舞台化、そして2016年のTVアニメ化とメディアミックスが盛んですが、ここにはどのような意図があるのでしょうか?

酒井氏:結局『PSO2』やその元となった「PSO」が何を目指しているかというと、「オンラインゲームの楽しさを1人でも多くの方に知ってもらうこと」です。メディアミックスは、楽しさを広げる際の手段のひとつですね。

オンラインゲームは一度出来上がったら終わりではなく、ずっと続いていくものじゃないですか。そういう中で、何年も情報を出し続けていると、受け取る側も徐々に慣れてきてしまい、ゲーム内の情報だけでは、ニュースが話題になることも少なくなってきます。そういう場合に何らかの驚きを与えるニュースが出ることで、目に留まり、また話題として活性化していくことができます。

驚きのあるニュースを出し続けることはプロモーションという意味でもすごく大事ですし、今までリーチしていなかった方にまで作品の存在を知らせることも魅力のひとつです。さらに、コンビニや飲食店でのコラボなどは、先ほどのメディアミックスのニュースと同じく、新規ユーザーへのアピールになる部分も意識しています。CM以外でも「これどこかで見たな」と思ってもらえる機会として、使わせていただいている部分もありますね。

そうして新規を獲得するための施策を行いつつ、ゲーム内のユーザーのモチベーションを維持していけるよう、ニコ生やオフラインイベント、皆さんが望んでいるコラボであったり、コンビニとのコラボや、カフェなどのコラボイベントなど、リアルでゲームのアイテムが手に入るキャンペーンも織り交ぜながら、ユーザーさんのモチベーションを活性化させています。

――メディアミックスからは少し離れますが、ニコニコ動画で配信している「PSO2放送局」も、モチベーションを上げることに一役買っていますよね。

酒井氏:確かに「PSO2放送局」も、ユーザーさんのモチベーション維持という点でものすごく効果のあるコンテンツですね。
メディアを使い分けつつ、外と中、両方にアプローチをかけて長く遊んでもらえるよう心がけています。

――では一連の展開は、ゲームの制作時から構想としてあったのですか?

酒井氏:もちろんやりたいとは思っていましたが、やるためにはそれだけの人気や実績が必要です。今でも『PSO2』や『ファンタシースター』と言うシリーズは誰でも知っている、というものではないんです。ですから、「これだけの実績がありますよ。これだけの効果がありますよ」と言う事をコラボやメディアミックスをしていただく皆さんに提示して、納得していただき、それだけの実績を作っていかないと次には繋がりません。今の結果はそれだけの実績をあげられたからあるようなものです。

また、「いきなりコラボしまくり」と言うのはやはり「元の世界観を大事にしてほしい」と言うユーザーの皆さんには反感を買いますし、世界観としても崩れてしまうので、最初の半年くらいは『PSO2』というものをユーザーの皆さんにしっかりわかっていただき、そして次の展開のための下地を作る期間として、特に動いたりはしていませんでした。

実際問題として、オンラインゲームは絶対に、私たちが作った世界観だけで完結しないんですよ。ユーザーさん一人ひとりが独自の遊び方を見つけて、好きなように楽しむことができるからこそ、面白いんです。ですので私たちは、ユーザーさんの幅広い楽しみ方を受け入れられる世界観を作ることが大きな仕事だと考えています。柔軟な世界観を作っておけば、後々メディアミックスをすることになってもやりやすいですからね。

――確かに、世界観をあえて語りすぎないのは、今となっては『PSO2』の強みにもなっていますよね。


酒井氏:『PSO2』ならではの、“どこにでも行ける、何でもアリ”のSFの世界観と言うのが非常に強みになっていると思います。色々な惑星の文明が入り乱れているから、ファンタジーもSFも、和風もごった煮になっても、許される世界観になっていると思いますし、これはもともと意識して設定していました。

――舞台化やコラボカフェなど、すでに形になっている展開も多数ありますが、ファンからの反響はいかがですか?

酒井氏:舞台のときは、最初の「は?」と言う反応に対して、実際に観た方の「おもしろかった!」と言う反応の差がすごくて、私自身驚きました。ゲームの舞台化はまだまだ珍しく、今まで経験したことのないユーザーさんも多いです。そして経験のないことは、どうしても敬遠されがちです。しかし舞台に関しては「こういう見せ方もあるのか!」と、驚きをもって迎え入れてくれました。

アウトプットをしっかりすれば受け入れてくれることが分かったので、今後もユーザーさんが思いもよらないことに挑戦していきたいですね。他の展開についても、どれも良い実績を残すことが出来ています。次につなげることができれば、より大きな形で展開することもできます。それに乗ってくれるユーザーの皆さんがいればこそですね。

――舞台に関しては、ゲームファン以外からの、反響も大きかったと思います。

酒井氏:3月に舞台DVD発売記念イベントを開催したのですが、ゲームではなく舞台が好きな方や、蒼井翔太さんのファンも多く、「この舞台がきっかけでゲームを始めた」という方もかなりいましたね。
ゲームの裾野を広げるために始めたことなので、そういう意味では手応えがありました。

――その舞台ですが、ストーリーも凝ったものになっていましたよね。あえてプレイヤーも劇中に登場させるという、他ではなかなか見られない内容でした。

酒井氏:実は元々、前作の『ファンタシースターオンライン』のときにもアニメ化の話はあったんです。その際いただいた企画だと、ゲーム内のシナリオをそのままアニメにしようという話だったのですが、当時開発の中心にいた中さん(中裕司氏)が「これだと面白くない」と言い切って、結局なくなったんですね。中さんは、「オンラインゲームであることを反映したアニメにしてほしい」とも仰って、僕もすごく共感したんです。なので舞台も、そして次のアニメも、ゲームの中だけでなく外側まで描くことにしています。

――しかしファンの中には、このストーリー展開に驚いた人もいるのではないでしょうか?

酒井氏:だからこそ、アニメの前にまずは舞台で、どんな反応が返ってくるか試してみた面もあります。企画自体はアニメのほうが先にあったのですが、まずは舞台でプレイヤー主体の物語を描いてみようとなったのです。

――次のアニメは舞台の成功が良い影響を及ぼしていそうですね。

酒井氏:受け入れられることは分かったので、今度のアニメについても成功する土壌はあると感じています。最近オンラインゲームを題材にしたアニメも多いですし、そんな中で「実働しているオンラインゲームが元になる」という試みがどのようにできるのか、と言う部分で挑戦をしていきたいと思っています。


――アニメ以外にも、メディアミックスの企画は考えているのですか?

酒井氏:もちろん今の段階で言えることはないのですが、できたらいいな、とは思っています。ただ、さきほども言いましたが、『PSO2』は誰もが知っている国民的ゲームではないので、何ができるのか、何をするべきかを考えながら、段階を踏んで次を考えていきたいです。自分たちだけでメディアミックスと言うのはできませんから。

オフラインイベントで外に出てオフ会に参加して他のユーザーと知り合ったり、ダンスしたり、色々な業態とのコラボやメディアミックスをすることによって、自分が今まで知らなかった世界に触れる楽しみってあるんじゃないかと思います。そうして、『PSO2』に触れたユーザーの皆さんの人生がより豊かになっていくなら、こんなに嬉しいことはないです。それこそ、『PSO2』が目指す冒険以上の楽しさ、そして境界を超えるRPGだと思います。

◆プレイヤーを軸に描かれるアニメ

――続いてはアニメについてお伺いしたいのですが、こちらはどのような形で企画が進行したのでしょうか。

酒井氏:『PSO2』も運営が3年目に差し掛かり、ユーザー層としても円熟期にさしかかっている部分もあります。初期に比べれば、新規のユーザーさんも少なくなっています。そういう中で、よりコンテンツとしての広がりを求めて、タイミング的には「アニメ化をしてもいいのではないか」と考え、企画を立ち上げました。セガの中にはメディア化を担当している部署がありまして、そこのスタッフに相談しつつ、どう展開するのがベストかを模索していましたね。

――先日主要スタッフも発表しましたが、スタッフを選ぶ際に決め手となったものはありますか?

酒井氏:僕からお願いしていたのは、できるだけオンラインゲームのプレイ経験がある方という点です。すべてのスタッフをオンラインゲーム経験者で揃えることは難しいのですが、極力少しでもプレイしてもらって、理解を深めてもらうようにしました。また、原作がある作品をアニメ化してきた方も集めてもらいました。監督の川口さん(川口敬一郎氏)は日常系の表現にも定評があるので、プレイヤーを主軸にした本作でも実力を出してくれるのではと期待しています。

――では、プレイヤーの生活や、人間性も描かれるのですか?

酒井氏:そうですね。むしろ、地球を舞台とした現実世界の比率のほうが高いくらいだと思います。主人公は学校に通っていて、そこで学校内外のプレイヤー同士のコミュニケーションが描かれたりもするんです。最近だとオンラインゲームを題材にしたアニメも多く見られますが、現実世界の人間ドラマを描くことによって差別化はできているのではないでしょうか。

――プレイヤーの視点に立っているのであれば、ファンも楽しみやすそうですね。

酒井氏:舞台同様に、「『PSO2』やオンラインゲームあるある」も随所に盛り込んでいるので、ユーザーさん同士の会話の種になると思います。あとは、このアニメで初めてオンラインゲームを知る人もいるかと思いますので、できるだけ専門用語を出さずに、難しそうなイメージを排除できるように心がけています。

――オンラインゲームのハードルを下げることにも一役買いそうですね。

酒井氏:架空のオンラインゲームのプレイヤーたちを描くアニメは多々ありますが、現実に運営中のゲームのプレイヤーを題材にしたアニメはないと思うんです。そういう意味では、新しいオンラインゲームの見せ方として楽しめるものになるのでは期待しています。また、本作だからこそできる仕掛けも考えています。

――TBS、BS-TBSで放送されるということで、より多くの人に見てもらえる土壌はできているかと思います。

酒井氏:できるだけ多くの人が見られる形にしたいとお願いしていたので、そういう意味では、良い放送局と出会えることができました。さらに多くの地域で見られるように調整をしているところです。

――特にここ数年、アニメ化されたオンラインゲームが多く見受けられますが、なかなか成功にはいたっていません。『PSO2』のアニメ化についても、不安に思っているファンはどうしてもいるかと思います。

酒井氏:そうですね。ただ、本作に関してはアプローチも違いますし、アニメ制作のプロの方々に意見をしっかり出してもらいながら作っています。その中で僕たちのこだわりもしっかり反映されていますし、プレイをしている方にとっても、知らない方にとっても楽しめる作品になるよう努力しています。

不安があるというのは僕たちも同じです。僕たちは最高のものを作っているつもりでも、それがどう受け入れられるかは分からないですから。また、“アニメを作ることによって、終わってしまう可能性”もあるかと思い、だから今までは敬遠していたんです。

――終わってしまうもの、というと?

酒井氏:アニメってオンラインゲームと違って、いつかは最終回を迎えるじゃないですか。アニメが終わると同時に、「コンテンツ自体が終わってしまった気持ちになってしまう」という危険性がつきまとうんです。もちろんゲームがいつまでも続くことを前提にしてアニメも作っていますので、両方がWin-Winになれるものにしたいですね。

――なるほど。あとはキャスト陣についてもお伺いしたいのですが、舞台版に続き蒼井翔太さんは出演されるんですよね。

酒井氏:ええ。

――『PSO2』にとって重要な存在になっていると思うんですけど、酒井さんにとって、蒼井さんの魅力はどこにあると感じていますか?

酒井氏:言葉で言い表すのが難しいんですけど…透明感ですかね。すごくかっこいい声質だけど、変な芝居だって卒なくこなすじゃないですか。今回のアニメはプレイヤーさんを投影することになるので、誰からも嫌われない、嫌味にならないという意味で、蒼井君は適役だと思っています。

――蒼井さん以外にも主要キャストが発表されていますが、こちらはどういった流れで決めていったのですか?

酒井氏:キャストについてはオーディションを行い決めていきました。相当な数の声優さんに参加していただいて、キャラクターの印象に合う人を当てはめていった格好です。

――キャラクターというと、ゲーム版に登場したキャラクターがアニメに登場することはありえるのでしょうか?

酒井氏:あるかもしれませんね。キービジュアルにもクーナっぽいキャラクターがいますし(笑)。なんにせよ、ゲーム版とまったく関わらないということはないです。

――キービジュアルを見ると、舞台版のときのイラストとはまた印象が違いますね。

酒井氏:今回のキービジュアルは、制作を担当するテレコムアニメーションフィルムの高須さん(キャラクターデザイン担当の高須美野子氏)に描いてもらいました。僕は『PSO2』やファンタシースターシリーズというと、アートディレクターの水野(水野暁一氏)の印象が強いと思っています。なので、できるだけ水野のテイストを残せる方にお願いしたいと思い、何人かの候補の中から高須さんにお願いしました。

――映像はこれから本格的に作っていくと思いますが、ゲームの世界と現実世界とで、表現に違いを付けたりはするのですか?

酒井氏:そこはこれから詰めていくことになります。ただ、ちょっと違った表現にしたいとは思っています。今のところ、ゲームの世界は多くの部分をトゥーン調の3Dで描く予定です。ゲーム版のCGモデルもお渡しして、それをブラッシュアップしていくという具合に、連携しながら制作しています。もちろんアニメならではの表現も入れていきたいので、そこは調整しながらですね。

――酒井さん自身がアニメ制作の要望を出すこともありますか?

酒井氏:現在は毎週シナリオの打ち合わせをしていまして、そこは僕とディレクターの木村、シナリオの宇野は必ず顔を出しています。そこではゲーム内をどうやって表現するか、先ほど話したプレイヤーの「あるある話」をどのように組み込んでいくかを話しています。

あとはゲーム内の戦闘も重要なところなので要望を出しています。どのフィールドで、どんなエネミーが出て、どう戦うのか。どんなアクションがあるのかは木村が字コンテを書いています。そして絵コンテはアニメ側でゲームを実際にプレイしているスタッフに描いてもらっています。ゲームならではのアクション部分も理解してくださっているので、私たちも納得できる内容に仕上がっています。むしろ、「アニメだとこう表現するのか!」と驚かされるところもありますね。

絵コンテもすべてこちらでチェックした上で、調整いただいていますので、『PSO2』のプレイヤーさんが見ても納得できるものにはなっていると思います。

――ゲームのプレイヤーも安心して楽しめそうですね。

酒井氏:プレイヤーさんとしても「このPA(フォトンアーツ)自分も使ってる!」みたいな、いろいろと発見を楽しみながら見られるはずです。反面、出来がいいだけに戦闘シーンのボリュームがどんどん増えていくという、嬉しい悩みもあります(笑)。中にはアニメならではの表現としてゲームではありえない動きもありますが、メディアの違いとして受け入れつつ、できるだけ違和感のないように入れていくので、そこは安心してください。

最終的には、プレイヤーさん同士の話題の種になってくれたらいいですね。どんなPAを使って、どんな展開になったのかをゲーム内と同じ感覚で話せますし、逆にゲームを知らない人は単純にかっこいいと思ってくれる内容を目指しています。

――ゲームを知らない人からしたら、アニメで描かれていた動きがゲームでも再現できると知ったら驚くかもしれませんね。

酒井氏:実は再現できることを知って、そこから初心者と上級者の新しいコミュニケーションが生まれたら面白いですね。私達としてはとにかく、アニメを通してオンラインゲームの面白さを伝えたいと思っています。このアニメが、例え『PSO2』以外であっても、オンラインゲームを始めるきっかけになったら嬉しいです。

――ちなみに、ゲームとアニメの連動は考えているのでしょうか?

酒井氏:もちろん考えていますが、今はまだ何も言えないですね…(笑)。実際に運営しているオンラインゲームで、プレイヤーを主軸にしているからこそできる連動をしていきたいです。もちろんアニメだけでも楽しめる作りにしますが、両方を楽しめばよりいろいろなことが分かる仕掛けを用意したいです。

――ストーリーの繋がりがあったりは…?

酒井氏:それは分からないです(笑)。これから先、徐々に紹介していければと思っています。キービジュアルの中にも情報が隠されているので、まずはそれを見ながら想像してみてください。

ゲームのロゴも一新して、アニメのキービジュアルと同じものになっています。そういう意味では、すでにゲームとアニメの連動は始まってると言えるかもしれませんね(笑)。

――このタイミングでロゴを一新するというのは、ゲームとしても新展開を迎える意味合いが強いのでしょうか。

酒井氏:エピソード3はこれからクライマックスへ向けて動き出しますし、来年にはエピソード4やPS4版も控えていますからね。エピソード4やPS4版に関してはまだまだ先の話で、言えることも少ないのですが、とにかくいろいろと驚きが詰まっているので、楽しみにしてほしいです。

◆他のアニメにはない、意外性のある作品に

――これは『PSO2』に限った話ではないのですが、セガはメディア展開するタイトルがかなり多いように感じます。その中でアニメというのは、一体どういった位置づけなのでしょうか?

酒井氏:それはもちろんタイトルによってさまざまだと思います。ただひとつ言えることは、ゲームは能動的に楽しむメディアであることに対して、アニメは受動的に受け取れるメディアという違いがあります。そもそもゲームに触れることのない方にまで訴求できることはアニメの良い部分であり、ゲームにないものを補ってくれる存在だと感じています。

――では、酒井さんとしては『PSO2』のアニメをどのような位置づけにしたいと考えていますか?

酒井氏:これはディレクターの木村とも話していることで、「全部でひとつの『PSO2』」であると考えています。それぞれが独立しているのではなく、ゲームを中心にしつつ、アニメ、放送局、コラボ、オフラインイベントが一丸となって盛り上がるようにしていきたいです。アニメはアニメとして育ってくれればもちろん嬉しいことです。しかし、ユーザーさんがすべてのコンテンツを楽しんでくれることがやはりベストですね。

――その思いのもと、アニメを作っていくと。ところで、本格的な制作はすでに始まっているのですか?

酒井氏:ええ。すでに1話の作画に入っているところで、シナリオも後半まで出来上がっています。絵コンテも結構進んでいますね。でも、シナリオの出来も良いとは思うんですけど、時々不安にもなりますよね。

――というと?

酒井氏:自分たちで作ったものなので、どうしても思い入れを深く持って見てしまうんですよ。そうなると、時々客観的に見たとき、これが本当に面白いのか分からなくなる瞬間があるんです。舞台も同じで、みなさんに見てもらうそのときまでずっと不安でしたね。

――しかし、プロデューサーの目線で出来が良いと感じているのであれば、ファンも納得のクオリティになっているのではないでしょうか。

酒井氏:僕自身はアニメをそれほどたくさん見ているわけではありませんが、“王道な展開もありながらも、他にはあまりない”という意外性のある作品をお届けできると思います。ゲーム内のストーリーではない、プレイヤー視点のアニメというだけでも、どんなストーリーになるか予想がつかないはずですし。特にゲームを遊んでいる方は「こうなるんだ!?」と驚くんじゃないでしょうか。

――それでは最後に、期待しているファンの方へのメッセージをお願いします。

酒井氏:『PSO2』をプレイしている方もしていない方も、アニメ作品として楽しめる内容にしたいと思って制作しています。その中でオンラインゲームに興味を持ってもらえたら嬉しいですね。

――ありがとうございました。
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