男性が着るスーツの上着のことを「背広」といいますが、その語源には諸説あるようです。現在、最も有力視されているのは、明治時代初期の日本の仕立職人の用語に基づくもので、文字通り、「上着の背幅が広い」という意味に由来するというものです。


男性が着るスーツ「背広」という言葉は、英語に不慣れだった日本...の画像はこちら >>


通常、「背広」の背中に当たる部分には通常「背縫い」と呼ばれる縫い目がありますが、「背広」が日本に紹介されたばかりの頃はこの「背縫い」がありませんでした。

「背縫い」がなく一枚の生地で背中に当たる部分が作られると、背中がゆったりとした仕上がりになるのだそうです。「背縫い」がなくて一枚生地が広がっていることから、「背広」という言葉が生まれたそうです。

また、市民服を意味する英語「シビル・クローズ(Civil cloth)がなまった」という説や、ロンドンの有名な仕立て屋街“Savile Row suit”(セィビル・ロー・スーツ)がなまった」という説もあるようです。

■地名の日本語訛りで「背広」に?

シビル・コート(civil coat)は19世紀末の華やかなデザインだった軍服や、イブニング・コートなどの礼服に対して、庶民が着用する服として日本に滞在していた西洋人が愛用していたのだそうです。

また、サヴィル・ロウ(Savile row)は現在もオーダーメイドの紳士服店の老舗の名店が軒を連ねているロンドン中心部の街のこと。この街の地名が、現代以上に英語に不慣れだった当時の日本人の日本語訛りで変化し「背広」になったというのが「サヴィル・ロウ(Savile row)説」です。

『福沢諭吉 背広のすすめ』の著者、出石尚三によれば、元来背広というのは日本で生まれた言葉であったのに、いつの間にか外来語が転じたものとして捉えられるようになったようです。

日本には明治時代から日本人の背広の仕立て職人が存在しており、多くの文人たちの背広を仕立てていたようです。

参考:出石尚三『福沢諭吉 背広のすすめ』(2008 文春新書)

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