ところで子供の頃から素朴な疑問だったのですが、台風って、どうしてこの漢字を当てるのでしょうか。
強い風を表す「大風(おおかぜ)」という言葉があるのだから、そのまま音読みにすれば「たいふう」になるのに、何故?……という訳で、今回は台風の語源について紹介します。
■台風は「台湾の方から吹く強い風」?
歌川国貞「源氏香の図 野分」
台風の語源について諸説ある中で、最もシンプルなのが「台湾の方から吹く強い風」だからというもの。
台湾や大陸の福建地方で使われていた「颱風(タイフーン。or大風)」という名称を、明治時代末期に中央気象台長の岡田武松(おかだ たけまつ)が採用。
その後、当用漢字が定められた昭和二十一1946年以降、颱の字が台に変更(代用)されて現在の「台風」になったという説です。
ちなみに「台風」の名前が使われるより昔、江戸時代以前では「野分(のわきorのわけ)」と呼ばれており、これは強い風が野原の草を豪快に掻き分けるように見える様子に由来するものです。
■その他、ギリシャ神話の暴神に由来する説も

テュポーン(Τυφών/Tȳphōn)。Wikipediaより。
英語では台風を「Typhoon(タイフーン)」と表記しますが、これは前述の「颱風or大風」を音写したという説に加え、ギリシャ神話の暴神・テュポーン(Τυφών/Tȳphōn)に由来するという説もあります。
テュポーンとは天上の神々に対する大地の怒りを具現化した暴神で、ギリシャ神話における最凶の悪役として猛威を奮いました。
一時は至高神ゼウスさえ窮地に陥れた強大な力が、荒れ狂う台風となって今も人々を恐れさせているのかも知れません。
ちなみに、テュポーンは現在、イタリアのシチリア島でエトナ火山の下敷きに封印されていますが、今も「出せ!出せ!」ともがいては、マグマを吐き続けているそうです。
■終わりに

明治四十1907年の大水害。Wikipediaより。
令和元年に発生した台風15号、19号は東日本各地に深い爪痕を残し、少なくない方々が犠牲となり、また生活再建の途上にあります。
自然の猛威を前にすると、科学技術の限界や人間社会の脆弱さをたびたび痛感させられますが、それでも力を合わせて心ひとつに困難を耐え忍び、乗り越えてきた絆を思い出させてくれるのも、こうした神々の働きと言えるでしょう。
(※とは言え、自然災害などないに越したことがないのは、言うまでもありません)
これからも、神様と人間とが共に幸(さきわ)い、助け合って生きていける日本であって欲しいものです。
※参考文献: 大槻文彦『大言海』冨山房、1982年2月28日
ヒュギーヌス(松田治ら訳)『ギリシャ神話集』講談社学術文庫、2005年2月11日
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