明治時代~大正時代・昭和時代にかけて、広告メディアといえばポスターが花形といえる時代でした。その1890年代~1960年代に製作されたポスター作品にフォーカスした展覧会「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」が開催されます。


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「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」展

明治期の美しい石版印刷ポスターや、大正から昭和にかけて活躍した図案家によるポスターなど、日本のグラフィックデザインの変遷を紹介する本展。約100点のさまざまな資料が展示されます。展示構成を見ていきましょう。

ポスター黎明期 世界における近代ポスターの誕生は1880年代とされ、石版印刷の技術とともに発展していきました。日本では、江戸時代から商品の広告や芝居の告知を目的として制作された「引札」や「絵びら」がありました。これらは、現在のチラシに類する広告宣伝用の摺り物で、浮世絵版画(木版)の技法を使い、美人や風景などの挿絵が描かれたものに商店名や商品名を入れて配りました。

これは興味深いぞ!明治〜昭和の日本のポスター文化を紹介する展覧会「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」


明治期の代表的なたばこ会社の商品やキャラクターが描かれた引札 1902年頃 多色刷り木版 25.7×38.0cm

これは興味深いぞ!明治〜昭和の日本のポスター文化を紹介する展覧会「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」


W.S.KIMBALL&CO.“OLD GOLD”ポスター 1890年代 多色石版 60.0×46.0cm

明治時代になると、日本でも欧米からの輸入紙巻きたばこ(シガレット)を宣伝するために現地で作られた石版刷りのポスターが街を飾るようになりました。文明開化の日本では、「引札」などの伝統的な広告と欧米生まれのポスターが同時代的に街を飾りました。

このコーナーでは、日本の引札や、欧米で作られたポスター、日本向けに欧米で作られたポスターなどを紹介します。

たばこポスター全盛期(1) 明治たばこ宣伝合戦 1890年代から1900年代初頭(明治20~30年代)には、日本でも多色石版印刷のポスターが製作されるようになりました。

これは興味深いぞ!明治〜昭和の日本のポスター文化を紹介する展覧会「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」


村井兄弟商会「ピーコック」ポスター原画 伏木英九郎画(東洋印刷株式会社) 1902年頃 水彩画 75.3×50.6cm

明治初期に紙巻たばこが国内で製造されるようになると、たばこ製造業者が販売競争を繰り広げるようになりました。その中でも「天狗煙草」で名を馳せた東京の岩谷松平と、「サンライス」「ヒーロー」といった商品を販売した京都の村井吉兵衛の争いは、のちに「明治たばこ宣伝合戦」と称されるほど有名でした。
看板・新聞・ビラ・宣伝隊など、当時考えられるあらゆるメディアを使った宣伝活動は、明治の広告業界をリードし、その中でも石版印刷のポスターは先端を行くメディアでした。たばこ産業の宣伝活動は印刷技術の向上に大きな役割を果たしました。20世紀、日本でポスターというメディアの幕を開き、リードしたのはたばこ産業といえます。

このコーナーでは、日本でポスターが製作され始めた頃の作品や明治たばこ宣伝合戦が繰り広げられた当時の作品を中心に紹介します。

収蔵品に見る明治期のポスターの作り方 当館では、明治のたばこ王・村井吉兵衛が自社製品のパッケージ印刷のために1899年に設立した東洋印刷株式会社(後に大蔵省専売局京都印刷工場)の関係資料を所蔵しています。たばこの民営期から専売時代を含み100年続いたこの工場の資料には、当時の石版印刷ポスターはもちろん、その原画や印刷工程を示す写真も含まれ、明治から昭和へと移りゆく印刷の歴史がうかがえます。

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合名会社村井兄弟商会「ヒーロー」ポスター 1894年 多色石版 72.5×50.4cm

これは興味深いぞ!明治〜昭和の日本のポスター文化を紹介する展覧会「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」


岩谷商会「天狗煙草」ポスター 1900年頃 多色石版 56.6×43.5cm

このコーナーでは、石版印刷ポスターやその原画、校正刷りなどと合わせ、東洋印刷工場内での作業工程をとらえた写真などを展示し、明治期のポスター製作工程を紹介します。原画が残っていることにより、画工が手描きで石版に写す工程を持つ石版印刷にとって、画工の腕が完成ポスターの出来を大きく左右するものだったことがうかがえます。

これは興味深いぞ!明治〜昭和の日本のポスター文化を紹介する展覧会「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」


村井兄弟商会「ピーコック」 輸出用ポスター 1900年頃 多色石版 75.9×53.7cm

「図案」という概念 大正から昭和初期にかけて、写真製版をはじめとする印刷技術の発展と、留学生からの情報や海外の雑誌などに掲載された作品の影響で、「図案=デザイン」の概念を導入したポスターが製作されるようになりました。三越呉服店や上野~浅草駅間地下鉄ポスターで知られる杉浦非水らが「図案家」として登場し、商業美術の時代を切り開いていきました。

これは興味深いぞ!明治〜昭和の日本のポスター文化を紹介する展覧会「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」


大蔵省専売局「みのり」ポスター デザイン:杉浦非水 1930年 オフセット 52.9×38.6cm

これは興味深いぞ!明治〜昭和の日本のポスター文化を紹介する展覧会「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」


大蔵省専売局「響」ポスター デザイン:野村昇 1932年 オフセット 53.4×38.5cm

大蔵省専売局では、こうした商業美術の発展を受け、杉浦非水に製作依頼し、弟子である野村昇をパッケージやポスターの製作に関わらせたりしました。明治時代のポスター製作では、原画を忠実に石版に描き写すことが画工に求められましたが、写真技術の発達にともない写真をそのまま使って製作できるようになったことで、図案家たちは写真とは違った、手描きならではの面白さや構図を追求しました。


このコーナーでは、杉浦非水、野村昇の作品と合わせ、この頃登場した写真を使用したポスターなどを紹介します。

■ほかにもさまざまなポスターを紹介

ポスターは時代を写す鏡 商品宣伝のためではなく、戦意高揚のために作られた戦時下のポスターや、戦後のヤミたばこ防止を訴えるポスターなど、時代を写すポスターを展示します。

これは興味深いぞ!明治〜昭和の日本のポスター文化を紹介する展覧会「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」


愛知県煙草小売人聯合組合「慰問煙草募集」ポスター 1938年 オフセット 52.7×38.4cm

たばこポスター全盛期(2) 名コピーとグラフィックデザイン 1950年代後半から1960年代、高度成長期を迎え、大量生産、大量消費の社会へと転換する中でさまざまな広告活動が展開されました。

これは興味深いぞ!明治〜昭和の日本のポスター文化を紹介する展覧会「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」


日本専売公社 「いこい」ポスター 1958年 オフセット 55.1×74.0cm

このコーナーでは、名コピーが散りばめられたポスターや、秋山庄太郎や樋口忠男といったフォトグラファーによる美しい写真が使用されたポスターなどを展示します。

世界のたばこポスター 19世紀から20世紀初頭、ポスター文化が花開いたフランスで街角を飾る芸術でもあったたばこポスターや、キャッチコピーも鮮やかな20世紀初めのアメリカのたばこポスターなどを展示します。

これは興味深いぞ!明治〜昭和の日本のポスター文化を紹介する展覧会「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」


REGIE FRAN CAISE(フランス専売)“GITANES”ポスター デザイン:Jules Isnard Dransy 1931年 多色石版 161.0×122.0cm

日本のポスター文化の変遷を紹介する展覧会「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」は12月14日(土)~2020年2月16日(日)の期間、東京・墨田区「たばこと塩の博物館」で開催されます。

■たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代

  • 会期  : 2019年12月14日(土)~2020年2月16日(日)
  • 会場  : たばこと塩の博物館 2階特別展示室
  • 所在地 : 東京都墨田区横川1-16-3(とうきょうスカイツリー駅から徒歩8分)
  • 入館料 : 大人・大学生:100円(50円)、満65歳以上の方(要証明書) 50円(20円)、小・中・高校生50円(20円) ※( )内は20名以上の団体料金
  • 開館時間: 午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
  • 休館日 : 月曜日(ただし、1/13は開館)、12月29日(日)~1月3日(金)、1月14日(火)
たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代たばこと塩の博物館

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