日付の根拠となったのは、その名の通り今上陛下の祖父に当たる昭和天皇(第124代・在位:昭和元1926年12月25日~昭和六十四1989年1月7日)のお誕生日です。
■激動の時代を生き抜かれた昭和天皇
若くして摂政(せっしょう)となって病弱な父・大正天皇を補佐し、即位後は青年将校らによるクーデター「二・二六事件」を果断に鎮圧。そして国家の存亡を賭けて米英を相手取った大東亜戦争(太平洋戦争。昭和十六1941~昭和二十1945)を決断されました。
君民一丸となって強大な連合国に挑むも、敗戦の後は祖国復興の精神的支柱として日本全国を巡幸し、取り戻された平和と高度経済成長期を見届けるように、宝算87歳をもって崩御された……まさに激動の生涯と言えるでしょう。
昭和天皇の巡幸を歓迎する広島の人々。たとえ原爆を落とされようと、天皇陛下さえいらっしゃれば、日本人は何度でも復活できる。
現代の平和(※色んな解釈はあるものの、とりあえず戦火には晒されていない)は決して当たり前のものではなく、平和のために尽力された方々に感謝すると共に、次世代へ受け継いでいく意志を新たにする……そんな一日としたいものです。
しかし、この昭和の日は最初から昭和の日だった訳ではなく、平成元1989年から平成十八2006年までの間「みどりの日」という祝日でした。
いったい、どういう事情によるものでしょうか。
■天皇誕生日⇒みどりの日⇒昭和の日……4月29日の移り変わり
昭和天皇のご在世中、天皇陛下のお誕生日である4月29日は元々「天長節(てんちょうせつ。現:天皇誕生日)」という祝日です。
しかし、昭和天皇が崩御され、皇太子殿下(現:上皇陛下)が即位されると天皇誕生日が12月23日に変更、4月29日は祝日でなくなる予定でした。
しかし、4月29日は5月3日~5日の「ゴールデンウィーク」につながって大型連休を構成する重要な祝日となっており、国民生活への影響を懸念されたため、祝日としての存続が図られます。
そこで「昭和天皇は植物に造詣が深く、自然をこよなく愛されていたから」という理由で「みどりの日」とされたのでした。

生物研究に励まれる昭和天皇。
また別案として、昭和天皇が生物学者として多くの研究成果を残していた事績から「科学の日」とする意見もあったようですが、いずれにしても昭和天皇の人柄を後世に伝える縁(よすが)となるよう、熟慮しての事でしょう。
その後「激動の昭和を生き抜かれた先人たちと、その象徴たる昭和天皇の事績を後世に伝えたい」という人々の熱い思いによって、平成十八2006年に4月29日を「昭和の日」に制定。みどりの日は「国民の休日」であった5月4日に移動して今日に至ります。
■終わりに
今年は新型コロナウィルスの感染を予防するため外出自粛が呼びかけられており、せっかくのゴールデンウイークも#StayHome予定の方が多いと思います。
そこで、4月29日は心静かに激動の昭和を生き抜いた先人たちに思いを馳せ、現代の平和と豊かな自然に感謝する一日としたいものです。
※参考文献:
松村明 編『大辞林 第三版』三省堂、2006年
小林よしのり『ゴーマニズム宣言SPECIAL 昭和天皇論』幻冬舎、2010年
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