日本独自の鍛冶製法で造られる刀剣「日本刀」。

古墳時代より行われてきた刀の製造が、日本刀と形容されるようになったのは平安時代末期といわれている。
以後、日本では1876年(明治9年)の廃刀令発布まで、日本文化の象徴としてその時代の人々と共に歴史を紡いできた日本刀。

今回は、そんな日本刀の魅力を紹介したい。

■「諸家名剣集」とは

諸家名剣集とは江戸時代に成立した刀剣書「享保名物書」の写本である。享保名物書は時の徳川将軍である徳川吉宗が、代々日本刀の研磨を生業とした一族といわれている、本阿弥家の3代当主本阿弥光忠および本阿弥一族に命じて編纂させた名刀リストだ。原本は現存せず、写本のみが残されている。

世に名高い名刀を記録し格付けした本書。
出自や伝来を明確にして公的に保証することによって、貴重な文化遺産として後世まで語り継ぐ狙いがあったとされている。

■「刀剣」の種類

一般的に日本刀と呼ばれる刀剣は五つに分類される。

【直刀(ちょくとう)】
反りのない真っ直ぐな刀剣。主に平安時代中期以前に製造された。

【太刀(たち)】
反りを持った湾刀。平安中期以降に製造され始め、主流となる。
刃を下に向けて腰に吊り下げて携帯する。

【打刀(うちがたな)】
戦国時代に用いられた刀剣。一般的な日本刀のイメージはこの打刀に由来する。室町時代以降、主流となった型。刃を上に向けて腰に刺して携帯する。

【脇差(わきざし)】
打刀よりも短寸で反りを持った刀剣。
小刀とも。接近戦や、屋内などの狭い場所での戦闘に用いられた。

【短刀(たんとう)】
脇差よりも短寸の刀剣をいう。主に首級を上げる際や、護身用として用いられた。

■天下五剣

語り継がれる刀剣の歴史。世に名高い名刀を記録し格付けした「諸...の画像はこちら >>


数多ある日本刀の中でも、特に完成度が高く名刀と呼ばれる五振り。諸家名剣集にも記載を確認することができる。
江戸時代には定着していたようだが、選定の経緯や選定者、基準は不明。

【童子切安綱(どうじぎりやすつな)】
日本刀の横綱とされ最も優れた名刀といわれている。制作は11世紀前後と考えられており、足利将軍家から豊臣秀吉、徳川家へと継承された。1951年に国宝に指定。現在は東京国立博物館所蔵。

【鬼丸国綱(おにまるくにつな)】
鎌倉時代製造とされる名刀。
明治天皇以降、皇室の所有物となっており文化財指定を受けていない。そのため一般公開の機会が非常に少ない日本刀である。

【三日月宗近(みかずきむねちか)】
平安時代に名工・三条宗近によって造られたとされる。名は刀身にある三日月型の模様に由来すると考えられている。長らく徳川将軍家の所蔵であったが、太平洋戦争を経て個人所蔵家の元へ。現在は東京国立博物館所蔵。
国宝。

【大典太光世(おおでんたみつよ)】
平安時代後期に造られたとされる名刀。三池典太光世作。豊臣秀吉から前田利家に送られた。以来、前田育徳会所蔵。1957年に国宝指定。不定期に行われる刀剣展示会で展示されている。

【数珠丸恒次(じゅずまるつねつぐ)】
平安末期ごろに製造されたとされる。日蓮宗の開祖である日蓮が所有していた守刀であったものが、現在は本興寺に所蔵されている。号である数珠丸は、日蓮が柄に数珠を巻きつけていたことから。重要文化財。毎年11月3日の文化の日に一般公開あり。

■本物を肉眼で

天下五剣のうち、二振りは東京国立博物館で閲覧することができる。どちらも国宝であり、刀剣としての芸術的な完成度もさることながら、当時の歴史や逸話なども楽しむことができる。また、全国各地には刀剣を鑑賞できる様々な博物館や美術館、刀剣展示会が行われている。興味がある方はぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

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