フィクション・ノンフィクションに限らず怖い話や不思議な話、あるいは怪奇現象や心霊体験などに関する物語や説話の総称である「怪談」。

現代でも怪談ファンは多く、エンターテイメントの世界でも怪談をテーマにした作品は数多。
怪談の歴史は意外と古く、江戸時代には怪談ブームが起こり庶民の間で流行した。

今回は、そんな日本の怪談について紹介してみたい。

■「怪談」の起こり

古くは「日本書紀」などに妖や物怪などの記載を確認することができるが、神話や伝説的な意味合いが強く明確に怪談とは定義しづらい。また、平安時代末期に成立したと考えられている「今昔物語集」には霊体験の記載がある。

江戸時代中期には、妖怪にまつわる説話をまとめた「稲生物怪録」、江戸時代後期には、妖怪を描いた画集である「画図百鬼夜行」なども刊行されている。

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妖怪画といえばこれ!水木しげるも参考にした、江戸時代 鳥山石燕による妖怪図鑑「画図百鬼夜行」

なかでも、上田秋成によって書かれた「雨月物語」は様々な古典文学から怪談の類を集めて一冊にまとめた読本であり、怪談本としては代表的な作品だ。

■日本三大怪談

怪談は古今東西、様々な種類が存在するが、代表的な三つの怪談を「日本三大怪談」と呼ぶ。

四谷怪談
日本三大怪談も紹介!庶民の娯楽として江戸時代に大流行した日本の「怪談」


『四ツ谷怪談』月岡芳年

四谷在住のお岩は伊右衛門と結婚するが、お岩は病がちとなる。そんな時、高家の娘が伊右衛門に恋をし、伊右衛門は仕官を条件に結婚を約束。お岩が邪魔になった伊右衛門は、毒を使ってお岩を殺そうとする。毒によって容姿が醜く変貌したお岩は、伊右衛門を呪って死亡する。伊右衛門はお岩の霊に苦しめられ狂乱してゆく。


皿屋敷
日本三大怪談も紹介!庶民の娯楽として江戸時代に大流行した日本の「怪談」


「皿やしき於菊乃霊」月岡芳年

位の高い武家屋敷に奉公している女中のお菊。奉公の際中、お菊は主人が大事にしている皿の一枚を割ってしまう。酷い叱責を受けた結果、お菊は自責の念から屋敷内の井戸に身投げしてしまう。以降、屋敷には夜な夜な皿を数える女の声が響く。

牡丹灯籠
日本三大怪談も紹介!庶民の娯楽として江戸時代に大流行した日本の「怪談」


『ほたむとうろう』月岡芳年

浪人の新三郎は旗本の娘お露と出会い恋仲となる。お露は夜な夜な牡丹灯籠を持って新三郎の元を尋ねるが、お露の正体は亡霊であり新三郎は日に日にやつれていった。寺の和尚の計らいによって、お札を部屋中に貼ることでお露の来訪を阻止する新三郎であったが、命よりもお露に対する思いを優先し、ついにお札をとって外へ出てしまう。

■夏の怪談は江戸期から?

現代において怪談や怖い話は夏の風物詩といっても過言ではない。この「怪談=夏」というイメージが定着した理由には諸説ある。

一つは、江戸期に起こった怪談ブームだ。上述の日本三大怪談を代表する怪談は、江戸時代に「歌舞伎」や「浄瑠璃」の演目として行われた。その時期が夏場であり、いつしか夏場に階段を見たり聞くことが慣習となったという説。


もう一つが、「お盆」の存在。現世に帰ってくる祖先の霊を祀る行事として、江戸時代には庶民の間にも定着していたお盆。そんな時期に怨念や無念を伴った霊魂を語るようになったという説。

起源は定かでないが、いずれにしても怪談にとって夏は特別な季節であることは間違いない。

興味がおありの方は魅惑的な怪談の世界を体感してみてはいかがだろうか。

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