『桃太郎』といえば、正義の味方・桃太郎に悪い鬼が退治されるという「勧善懲悪物語」の代表格と言うべきお話です。
月岡芳年 「芳年略画 桃太郎鬼ケ島行」
しかし、ふとこんな風に思ったことはありませんか?「そもそも桃太郎の鬼って、いったい何をやらかしたから、退治されることになったの?」
確かに「鬼退治」されるからには、鬼の側に悪事を重ねてきた事実があるはずです。
もしかしたら、最後に桃太郎が鬼から取り上げた「宝物」が、実は村の人々から取り上げたものだったなどの理由があったのでしょうか?
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桃太郎には桃から生まれた「果生型」と、おばあさんが若返る「回春型」の2パターンある【1】
■鬼のした「悪事」については語られていなかった!
鬼がいったい何をしたから征伐されることになったのかは「分からない」が答えです。
近年出版されている『桃太郎』のお話では、鬼が
・畑を荒らしたり、宝物を奪ったりしていた
・村の娘や子供をさらったり、作物を奪ったりしていた
などの説明がされていることもありますが、「和平交渉の余地もなく、いきなり鬼ヶ島へ乗り込んで退治しなければならないほどの理由」は確認できません。
「鬼は、たとえば性犯罪のような、子供向けの絵本には書けない『口にするのもおぞましい悪事』を繰り返していたのではないか?」
と考えたくもなりますが、どうもそういうことではなさそうです。
実は
「鬼が悪いことをしたから、その鬼を桃太郎が退治しに行った」
という設定は明治時代以降に付け足されたもので、それ以前に出版された『桃太郎』ではなんと
「桃太郎は、宝物欲しさに鬼ヶ島へ行った」
ということになっていたのです。
つまり鬼のはたらいた悪事の内容どころか「そもそも鬼は、『鬼だから悪い』」と一方的に決めつけられ、そこに理由など存在しなかったということです。
さすがにこのような理不尽な設定では、絵本を読んでもらっている子供に親が「ねえ、なんで鬼は悪いの?なんで退治されちゃうの?」と質問責めにされ、困ってしまうでしょう。
そこで時代とともに、子供にもわかる「鬼の悪事の内容」が付け加えられたのでしょう。
■「鬼ではなく桃太郎が悪人だった」という新解釈も

尾形月耕「月耕随筆 桃太郎」
『桃太郎』には、もっと極端な解釈も存在します。芥川龍之介による『桃太郎』では、鬼ではなく桃太郎の方が「悪人」という解釈がなされています。
桃太郎が鬼退治に出かけた理由は「仕事をするのが嫌だったから」というとんでもないもので、降参した鬼の酋長のから桃太郎に対する
「私たちがあなた様にどんな無礼を致したからこのような征伐を受けたのか、教えてください」
という質問の答えは
「もともと鬼ヶ島を征伐したいと考えていたからだ」
答えにすらなっていません。

画像出典:ダ鳥獣ギ画
ここでの桃太郎は、「ラクして金品を手に入れたかったから、(何も罪のない)鬼の征伐に乗り込んだ」という、侵略者・略奪者として描かれているのです。
また坂田寛夫の小説『桃次郎』を原案とした劇団四季のミュージカル『桃次郎の冒険』では、『桃太郎』のお話のその後と、鬼の側から見た物語の世界観が描かれています。
同じ物語でも、様々な時代・作者によって書かれたものをいくつか読み比べてみると、これまでになかった新しい解釈ができるかもしれませんね。
参考
- 桃太郎は盗人なのか?/公益財団法人 図書館振興財団
- 「桃太郎は盗人、鬼は悪くない」200冊読み比べた小6が本を出版 椎名誠さんも絶賛
- 『桃太郎』芥川龍之介
- Wikipedia/桃太郎
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