その名も『医薬祖人・五條天神社』。木々に囲まれた閑静な神社です。
五條天神社は、病気平癒を願う一般の人や医療関係者・薬剤師などの方々が詣でている神社です。
■五條天神社は不忍の池から忍坂を登った左手
右手には特徴的な形の手水舎が。撮影:高野晃彰
京成上野駅方面から上野恩賜公園の不忍池東岸に行き、「忍坂」を登っていく途中、左手に鬱蒼とした木々に囲まれるように「五條天神社」の大きな鳥居があります。正面に社殿が見えるので、すぐに分かるでしょう。
JR上野駅の公園口からスタートする場合は、国立西洋美術館→大噴水のある広場→さくら通りを経て、韻松亭と、花園稲荷神社・入り口の横にある坂を下った場合は、右手に五條神社があります。

上野公園内の五條神社
ちなみに、花園稲荷神社は観光客で賑わいを見せていますが、五條天神社は静かで落ち着いた雰囲気。緑が多いせいか清浄な空気が満ちている感じがします。

見上げると緑が迫ってきます。撮影:高野晃彰
■五條天神社は薬祖神の二柱をお祀りしている神社

参道正面の拝殿。撮影:高野晃彰
御祭神=薬祖神
- 大己貴命(おおなむじのみこと)大国主命(おおくにぬしのみこと)
- 少彦名命(すくなひこなのみこと)
相殿(あいどの)
菅原道真公
約1890年前、第十二代景行天皇(けいこうてんのう)の御代に、皇子日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が、東夷征伐の為、上野の忍が岡をお通りになられたとか。
その際、「薬祖神」である大己貴命や少彦名命にご加護をいただいたことを感謝し、この場所にお祀りされたそうです。
また相殿にお祀りしている菅原道真公は、寛永18年に合祀され「下谷天満宮」とも称されていました。
いつ訪れても、医療関係者の方なのか、ご自分や大切な人の病気平癒を願ってか、静かに手を合わせている参拝者の姿が……
■半年間の穢れや罪を祓い清める大祓式

6月の「茅の輪くぐり」。撮影:高野晃彰
五條天神社では、毎年6月末日と12月末日に「大祓式(おおはらえしき)」という儀式が行われます。
大祓式は、私たちが日常生活の中で知らず知らずに犯してしまった半年間の罪や穢れ(けがれ)を祓い清め、次の半年の無病息災を祈る儀式です。
五條天神社では、年2回の大祓式の日を挟み1週間ほど、社殿の前に「芽の輪くぐり」用の大きな芽の輪(ちのわ)が設けられます。
茅(ちがや)という植物で編んだ、直径数メートルほどの大きな輪で、正面よりまず左にくぐり、右・左と8の字型に3回くぐります。
芽の輪が設置される頃になると、境内には病気平癒や健康祈願をする老若男女が、次々と訪れます。

境内にある「茅の輪の由来」の説明文。撮影:高野晃彰
■2月頃は道真公がこよなく愛した梅の花の香りが

上品な香りが漂う。撮影:高野晃彰
上野公園は、桜の名所としても有名ですが、桜満開シーズンよりも一足早く五條天神社に春が訪れます。

ピンクの濃淡が入り混じっている。撮影:高野晃彰
その梅たちも、6月の梅雨シーズンには青い梅の実を付けます。植物の変化に四季の移り変わりも感じられる神社です。

6月には花から青々とした実に。撮影:高野晃彰
また、毎月10日は「病気平癒のご祈祷」が行われる「医薬祭」が。
初穂料と共に、住所・名前・年齢を書いた「人形(ひとがた)※」を神前にお供えすると、無病息災・健康祈願をしていただけます。(境内に社務所があります)
新型コロナなど流行の病が気になる昨今。健康や病気平癒の祈願に五條天神社を訪れてみませんか。
※人形(ひとがた):両手を広げた人間の形をした白い紙
【医薬祖神 五條天神社】
〒110-0007 東京都台東区上野公園4-17
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