風鈴はガラス・金属・陶器など種類があり、また地域によって形や柄など特徴が異なるのです。その歴史はとても古く、音色を楽しむだけではなく流行病などを追い払う魔除けとして用いられた時代もありました。
実は、風鈴には涼しさを感じる以外にもいろいろな効果があったのです!2020年の夏は、9月まで高温が続くと予想されています。この夏は窓辺に風鈴を飾ってみましょう。
■風鈴は平安時代から使われていた
緑に映える涼しげな風鈴(写真:photo-ac)
夏になると軒先に飾られる風鈴。いつぐらいから存在していたのでしょうか。
実は、風鈴は中国から伝わってきたといわれています。(諸説あり)
一説によると、唐の時代に占いの道具として用いられていた「風鐸(ふうたく)」が、風鈴のルーツだとか。
唐では、青銅製の鐘を竹林に吊るし、風向きや音で吉凶や政治判断を行っていました。その風鐸が仏教文化とともに日本に伝わってきたのは平安時代。
当時、「流行病」や「凶事」は風が運んでくるという考えがあり、お寺では風鐸を軒先にぶら下げ「音が聞こえる範囲」は聖域としていたそうです。そして、貴族たちも「病除・魔除け」として愛用していました。
■地域によって異なる風鈴
風鈴は地域によって個性が異なります。代表的なものをご紹介しましょう。
【ガラス製の「江戸風鈴」】

ガラスの江戸風鈴(撮影:高野晃彰)
見た目も透明で涼しげなのがガラス製の「江戸風鈴」。長崎からガラスが輸入されてきた当時は、希少価値が高く現代の値段で200~300万円ほどしたそうです。
その後、ガラスの普及に伴い徐々に値段は下がり、江戸風鈴が全盛期を迎えたのは明治20年代。東京の庶民が、家の軒先に吊るして楽しめるようになりました。
ガラスの音色を楽しむのはもちろん、夏場は流行病が蔓延しやすかったことから、平安時代と同様に「魔除け」「病除け」の効果も求め、魔除けの意味がある「赤色」の風鈴が多かったとか。
そして、時代と共に、赤色は暑苦しいので見た目も涼しげな透明地に金魚やお花などが描かれたものが人気となりました。

金魚や花などの柄も楽しい江戸風鈴(撮影:高野晃彰)
【鉄製の「南部風鈴」】

いろいろな形がある南部風鈴(撮影:高野晃彰)
ガラスの江戸風鈴と並んで、有名なのが南部鉄製の「南部風鈴」です。ガラス風鈴と異なり、り~んと長く響く澄んだ高音が特徴で、「残したい日本の音百選」に選ばれています。デザインもさまざまな種類があり選択肢も豊富です。
【そのほかの風鈴】
●小田原風鈴
小田原の伝統工芸、小田原鋳物で作られた風鈴。
●明珍火箸風鈴(みょうちんひばしふうりん)
兵庫県姫路市で作られている金属製の火箸「明珍火箸」を使った風鈴です。澄み切った音色が美しく、アメリカの有名アーティスト、スティービー・ワンダーが「東洋の神秘」と絶賛したことでも知られています。
●別府竹風鈴
別府の竹細工で南部風鈴を包んだ伝統工芸品です。

別府竹風鈴(撮影:高野晃彰)
●越前和紙風水母
越前和紙の丸い傘に包まれた「風水母(かぜくらげ)」。中空チタンの涼やかな音色が特徴です。

越前和紙風水母は、夏のお土産にも(撮影:高野晃彰)
■風鈴の効果ってなんだろう?

涼しさを運ぶ風鈴(写真:phote-ac)
【換気と共に音色を楽しむ】
最近は、昔のように縁側の軒先に風鈴を吊り下げる……という家庭は少なくなってきた感じもします。
けれども、今年はウイルス感染防止策として、エアコンをかけつつも窓を開け「室内の換気」につとめることが推奨されています。窓を開け、外に向けてサーキュレーターや扇風機で室内の空気やウイルを追い出すのがベストだそう。
窓辺に風鈴を吊るせば、換気効果と共に音色を楽しむことができます!
【古来から伝わる病・魔除け】
昔の人にあやかって、病除け・厄除け効果を願って風鈴を吊るしてみましょう!
【音色の癒し効果】
風鈴の音色を聴くと、なんとなく気持ちが癒されますよね。風鈴の音色には、脳内にα波を生まれさせる「1/fゆらぎ」があるそう。α波は、リラックス効果をもたらしてくれます。
【体温を下げる効果】
風鈴の音を聞くと、風が吹いたと脳が判断し、涼しいと感じるそうです。実験によると本当に皮膚温度が下がったとか。
けれども、夏に風鈴を軒先に下げる習慣のない外国人はその効果はなく、「風鈴の音色=風」と幼い頃から脳に刷り込まれている日本人だけの結果だとか。
病除けになりリラックス効果や涼しくなる効果も得られる風鈴。今年はぜひ窓辺に飾ってみてくださいね!
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