■おいてけぼり
『本所七不思議之内 置行堀』三代目 歌川国輝・画(Wikipediaより)
一人でその場に取り残されてしまうことを、「置いてけぼりにあった」「置いてけぼりをくう」などと言います。
この「置いてけぼり」という言葉の語源は、本書七不思議に登場する怪談のひとつ、「置行堀」が語源です。
■やまびこ

佐脇嵩之『百怪図巻』より「山びこ」(Wikipediaより)
高い山に登って大きな声を出すと、声がそのまま反響する現象を「やまびこ」と言います。このやまびこも、もともとは妖怪の名前でした。
昔の人たちは、自分が出した声がもう一度聞こえるのは、山に住む妖怪が真似をしているからだと考えました。そのため、この現象のことを「山彦」と名づけ、恐れていたのです。
■もっけの幸い
「もっけの幸い」とは、思いがず偶然やってきた幸運という意味の慣用句です。この「もっけ」という単語は漢字で書くと「勿怪」、つまりお化けや妖怪のことを指します。
妖怪は通常であれば人に悪さをしたり、怖がらせたりするものです。しかし、その妖怪がごくまれに幸運を運んでくることがあります。
このことから、めったにない幸せが突然やってきたことを「勿怪の幸い」と言うようになったといわれています。
■逆鱗に触れる

「釈迦八相記今様写絵」 二代目歌川国貞(Wikipediaより)
目上の人が、自分の行いにより激しく怒り狂うことを「逆鱗に触れる」と言います。
龍はもともと直接的に人に危害を加えない生き物と考えられていました。しかし、この逆鱗に触られることを非常に嫌い、触ったものは激怒した龍に殺されるといわれています。
■鼻が高い

『美勇水滸傳』木曽駒若丸義仲に鼻を摑まれた天狗(一魁芳年筆:Wikipediaより)
誇らしい気持ちや得意になることを「鼻が高い」と言います。この言葉は、鼻が高いことで有名な天狗が語源だといわれています。
「天狗になる」という言葉もあるように、天狗はもともと自己顕示欲が強く慢心な性格だと考えられていました。その天狗のように得意満面であるということから、このような言葉が誕生したという説があります。
このように、普段から使っている言葉の中にも、ふとした拍子に妖怪が現れることがあります。
古来より人びとは不思議だと思った現象に名前を付け、妖怪として姿かたちや性格を与え、事象を共通認識できるようにしてきました。その片鱗が現在の言葉の中にもまだたくさん残っています。
言葉を使うときに、「この言葉の語源はなんだろう?」と考えてみると、おもしろいかもしれませんね。
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