「ねぇ、あの文字は何?」
そこには「鎌倉宮」という神社名の上に「官幣中社(かんぺいちゅうしゃ)」という文字が刻まれているのですが、その部分がコンクリートのようなもので埋められています。
「あれは国家神道(こっかしんとう)の名残で、戦後都合が悪くなったから隠そうとして埋めたんだよ。興味があるなら、もう少し詳しく話すけど」
国家神道の名残。隠そうとして却って目立っているけど、わざと?鎌倉宮にて。
筆者の話は冗長かつ退屈なことに定評があるため、なるべく不快な思いをさせないよう(そして筆者も口が疲れないよう)、あらかじめこう確認しておくのですが、友人は案の定「もういいや。別にそこまで興味ない」と答えたので、その話題は終了しました。
しかし、こうした神社は全国各地にあり、興味のある方がいないでもないでしょうから、せっかくなので今回まとめて紹介したいと思います。覚えておくと、どこかで見つけた時に楽しめるかも知れませんよ。
■神社は全部で11ランク!社格制度を紹介
さて、神社にランク付けをする制度は古く律令時代からありましたが、明治時代に入ってそれがよりシステム化された、いわゆる国家神道における神社のランク(社格と言います)は、高い順に以下の通りです。
【国家神道における神社のランク一覧】
1.官幣大社(かんぺいたいしゃ)
2.国幣大社(こくへいたいしゃ)
3.官幣中社(かんぺいちゅうしゃ)
4.国幣中社(こくへいちゅうしゃ)
5.官幣小社(かんぺいしょうしゃ)
6.国幣小社(こくへいしょうしゃ)
7.別格官幣社(べっかくかんぺいしゃ)
8.府県社(ふしゃ・けんしゃ)
9.郷社(ごうしゃ)
10.村社(そんしゃ)
11.無格社(むかくしゃ)

鎌倉宮の御祭神は、後醍醐天皇の第一皇子・護良(もりなが)親王。例外も多いですが、皇室にゆかりの深い御祭神は官幣社なことが多いです。
官幣社(かんぺいしゃ)とは政府(官)が奉幣(ほうへい。幣を奉げる)=お祀りする神社を、国幣社(こくへいしゃ)とは旧律令国単位でお祀りする神社を意味し、大・中・小ランクが先で、同ランクなら官幣社>国幣社となります。
ちなみに7.別格官幣社とは、国家のために貢献した武将や志士、軍人たちを祀る神社であり、南北朝時代の名将・楠正成(くすのき まさしげ)を祀る湊川神社(みなとがわじんじゃ)や、幕末以来、200万柱以上の英霊を祀る靖国神社(やすくにじんじゃ)などが有名です。
8.府社・県社は明治時代以降の行政単位でお祀りする神社、9.郷社は現代で言う郡または市単位、10.村社は現代の町村あるいは字(あざ)単位、そして11.無格社はランク外となります。
こうしたランクが設けられていたのは、神社の格によって政府や地方自治体からの支援があったためで、いかに戦前の日本が神道を保護していたかが分かります。
敗戦後、アメリカによって国家神道が廃止され、憲法でも政教分離が謳われている現代ですが、国家の保護がなくなっても、神道の文化は日本人の生活や精神に根づき、これからも伝えられていくことでしょう。
ともあれ今度神社に行ってみたら、そこがどのランクに該当するのか、調べてみるのも楽しいですよ。
※参考文献:
安津素彦ら編『神道辞典』神社新報社、2000年1月
薗田稔ら『神道史大辞典』吉川弘文館、2004年6月
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan