狂ったような猛暑が過ぎ去ったかと思えば、今度は急転直下の冷え込みに震え……どうした事だと思っていたら、そろそろ10月も終わって新米の季節(日本では、11月1日~翌10月31日を米穀年度=お米取引のサイクルとしています)。

今年に穫れたお米が「新米」として出回るのを楽しみにしている方も多いと思いますが、中世の日本では、別にそれほどでもなかったそうです。


【何故?】そろそろ新米の季節!ところで昔は新米よりも古米の方...の画像はこちら >>


新米と聞くと、それだけでおいしさ五割増し。

「え~!新米おいしいのに?」そんな声も聞こえてきそうですが、その「おいしい」という感覚が現代とは少し違ったのがその理由。

そこで今回は「新米」と「古米」に関する雑学を紹介したいと思います。

■中世は新米より「古米」の方が高価だった

まず、新米を「おいしい」と感じる理由について調べてみると、多くの方が「みずみずしくて、ふっくらしているから」などと答えるでしょう。

しかし、それは見方によっては「ベチャベチャしている」とも言える訳で、そうした食感を好まない方にとっては、あまりおいしく感じられないはずです。

以前「平成の米騒動(平成五1993年)」の時にタイ米(長粒種。インディカ米)を初めて食べた方から「パサパサしておいしくない」という感想を多く聞きましたが、逆に筆者はこっちの方がサッパリしていて好みでした。

こうした食感は米に含まれている水分量が影響しているようで、収穫から年月が経ってほどよく水分が抜けた古米の方が、昔の人には好まれたと言います。

【何故?】そろそろ新米の季節!ところで昔は新米よりも古米の方が高価だった


みずみずしい新米もいいけれど……。

でも、長期保存していれば品質≒味が少なからず劣化する筈だ……と思っていたら、昔は米を籾(もみ。殻)つきの状態で保存するので、玄米の状態で保存する現代に比べて劣化は穏やかでした。

それで中世は古米の方が新米より高価だったそうですが、理由は他にもあって、古米の方が「同じ量で、たくさん食べられる」のです。


どういう事かと言いますと、同じ一合の米を買っても、新米と古米では炊いた時に水を吸って膨らむ量に違いが出てきます。

すでに十分な水分を含んでいる新米よりも、水分が抜けた古米の方がよく水を吸う(欲しがる?)ようで、こういうところにも米が「生きている」ことを実感できますね。

具体的には新米に比べて1.1~1.3倍ほどに膨らむそうで、史料をひもとくと当時の米価格もそのくらいの差額がついており、中には「古米と偽って新米を混ぜ込む」という、一種の食品偽装まで行われていたと言います。

【何故?】そろそろ新米の季節!ところで昔は新米よりも古米の方が高価だった


米問屋の不正(食品偽装)に憤る消費者たち(イメージ)。

古くから新しもの好きな日本人にしては珍しい傾向ですが、やがて時代が下るにつれて新米に限らず「初物」が持て囃されるようになり、現代に至ります。

近年の異常気象で、お米の出来が気になるところですが、今年もお天道様とお百姓さんに感謝して、新米を味わいたいものですね!

※参考文献:
清水克之・高野秀行『世界の辺境とハードボイルド室町時代』集英社インターナショナル、2018年2月

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

編集部おすすめ