令和4年(2022年)に放映が予定されている大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。脚本が三谷幸喜氏とあって、今から視聴者の期待も高まっているようです。


さて、平安末期から鎌倉時代にかけて活躍したいわゆる鎌倉武士を知る上で欠かせない史料が『吾妻鏡(あづまかがみ)』。

頼朝公の挙兵前夜から鎌倉幕府の第6代将軍・宗尊(むねたか)親王の時代にかけて80数年(治承4・1180年~文永3・1266年)の歴史が綴られており、まさに「鎌倉殿の13人」を予習するのに好適なテキストと言えるでしょう。

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『吾妻鏡』には様々な武士たちの登場・活躍が描かれている。

そんな『吾妻鏡』のタイトルについて、吾妻は東≒東国武士(坂東武者)たちを指しているのは判るものの、鏡って何なのでしょうか。

今回は『吾妻鏡』の鏡について調べたので、紹介したいと思います。

■後世の「鏡」となる鎌倉武士たちの歴史

結論から言うと、『吾妻鏡』の鏡とは、私たちが日ごろ使っている鏡(ミラー)そのもの。

古典に興味のある方なら、他にも『大鏡(おおかがみ)』や『今鏡(いまかがみ)』などの書名を目にしたことがあるかも知れません。

鏡は万葉仮名(まんようがな)で「可我見」すなわち「我を見るべ(可)し」と書きますが、これは鏡自身が「私を見てあなたの姿を映し、自身を省みなさい」という意味になります。

……聞く人の 可我見(かがみ)にせむを 惜(あたら)しき……

【原文】……伎久比等能 可我見尓世武乎 安多良之伎……
【意訳】……聞けばその人の教訓となるだろうに、もったいない……

※大伴家持(『万葉集』第20巻・集歌4465)

そのことから、鏡とは「お手本、教訓」の意味も持つようになり、先ほど登場した作品も古老の昔話という形で歴史の教訓を伝え、模範を示しているのです。

※ちなみに「鎌倉武士の鑑(かがみ)」などと言いますが、この鑑も鏡と同じ意味です。

つまり『吾妻鏡』とは「教訓が込められ、模範とすべき東国武士たちの歴史」ということになります(もちろん反面教師も登場しますが……)。

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の予習におすすめ『吾妻鏡(あづまかがみ)』の鏡って何?


多くの犠牲を払い、時に悪名をも厭わず武士の世を実現した北条義時。
守川周重「星月夜見聞実記 鎌倉営中の場」より。

頼朝公の挙兵前夜(それこそ流人時代)から幕府草創を補佐し、承久の乱(承久3・1221年)を経て武士の世を実現した北条義時(ほうじょう よしとき)はじめ、鎌倉武士たちのエピソードを後世の「鏡」とするために編纂された『吾妻鏡』。

大河ドラマが放映される来年までしっかり読み込んで、主人公の義時だけでなく、お気に入りの武将を見つけて欲しいと思います。

※参考文献:
小学館『日本大百科全書ニッポニカ』小学館、1993年4月

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