♪かごめ かごめ目隠しをして座った鬼をみんなで囲み、歌いながら回って歌が終わった時、後ろに誰がいるかを鬼が当てる「かごめかごめ」。
かごの中の鳥は いついつ出やる
夜明けの晩に 鶴と亀がすべった
後ろの正面だあれ……♪
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筆者も子供の頃に友達と遊んだ覚えがありますが、愉快なようでいて、どこか薄暗さを感じる節回しと、よく考えると意味が判らない歌詞が、少し不気味にも感じました。
そもそも「かごめ」って何だろう?次に出て来る「かごの中の鳥」の名前だろうか……でも、図鑑を見てもカモメしかいないし……夜明けの晩?後ろの正面?一体どういう意味なんだろう……など、疑問に感じた方も少なくないかと思います。
そこで今回は、童謡「かごめかごめ」について調べてみたので、諸説ある内の一部を紹介したいと思います。
■籠の網目?囲め囲め?それとも籠女?
まず「かごめ」とは「籠目」、つまり竹を編んで作った籠の網目で、編み方にもよりますが、六角形の穴が特徴的です。それで「かごの中の鳥」につながるのですね。

編まれた籠目。
また、異説には遊びの様子である「(鬼を)囲め、囲め」と言っているのが訛ったとする説や、籠女(籠を抱えたようにお腹の膨れた女=妊婦)を指しているとする説もあります。
続く「かごの中の鳥は いついつ出やる」は、文字通りかと思いますが、「いついつ出やる」と繰り返している辺り「いつだ?いつ出てくるんだ?」と心待ちにしている、あるいは待ち構えているかのようです。
鳥(に喩えられたもの)が出てくるのは「夜明けの晩」、これは夜明け前の午前3~5時ごろを指しているとか、先ほどの妊婦説では、胎児にとって出産直前の臨月を意味しているなどと考えられています。
そしていきなり「鶴と亀がすべった」のですが、これは長寿の象徴(鶴は千年、亀は万年)がすべることで死を連想させ、例えば甲羅を抱えた亀のような妊婦が、足を「つるっと」すべらせ、階段を転げ落ちたとか……。
彼女の「後ろの正面」に立っていたのは誰なのか、もしかしたら、その誰かが彼女を突き飛ばしたのかも知れませんね。
■彼女を突き飛ばした犯人は?
以上をまとめていると、ざっくりこんなストーリーが浮かびます。
今は昔、さる良家に一人息子がおりました。
彼はすくすくと成長し、年ごろになると「妻を娶りたい」と、一人の娘を連れてきました。
どうやら夜這いに成功したようで、そのお腹は大きく膨れています。現代で言えば「できちゃった結婚」ですが、急いで身元を調べたところ、あまりいいところのお嬢さんではないようです。
「このままでは我が家の名折れ、何とかあの娘を始末しなければ……」
いよいよ娘のお腹が大きくなってきたある夜のこと、母親は娘を罠にかけます。
「下の階にあるモノをとってきておくれ……」

後ろの正面だあれ(イメージ)。
とか何とか、あとは皆さんお察しの通り。姑(となる母親の)言いつけなら仕方がないと階段を降りようとした娘の背中を突き落とし、お腹の赤子もろともあの世いき。
「上手く行った!後は回り道で帰って、素知らぬ顔をしておればよい……」
嘆き悲しむ息子を横目に、不幸な事故死ということで処理したのですが、古来「天網恢恢疎にして漏らさず」とはよく言ったもの。
事の次第を目撃していた者がいて「彼女は足を滑らせて死んだのではなく、突き落とされて殺されたんだよ。さぁ、後ろの正面=犯人は誰だろうね?」というメッセージを、遠回しに歌ったところ、これが子供たちに大ヒット。
(※現代人の感覚なら「お役人に直接訴え出ればいいじゃないか」とも思いますが、公益通報制度などなかった時代のこと、よほど報復が恐ろしかったのでしょう)
♪後ろの正面だーあれ……♪
子供たちが楽しそうに歌うたび、メッセージを感じ取った母親は、独り恐怖に震え続けたのでした。
■終わりに
他にも「かごめかごめ」の不思議な歌詞は色々な解釈がされており、
「鶴は敦賀(現:福井県敦賀市)、亀は亀岡(現:京都府亀岡市)で、そこを統べていたが失って(滑って)しまった戦国武将・明智光秀(あけち みつひで)のことを歌っているのだ」

舞い踊る神具女たち(イメージ)。
「かごめとは神具女(かぐめ。巫女)の訛りで、鬼を囲んで遊ぶのは何か秘密の儀式を模したもの。一子相伝の秘術を伝える暗号として、一見意味が判らないわらべ歌を当てはめたのだ」
「遊郭の店格子を籠の目にたとえて、自由になれない遊女たちが身の上を嘆いた様子を暗喩した歌なのだ」
「籠目は六芒星(ろくぼうせい。いわゆるダビデ星)の形でもあり、これは日本人とユダヤ人との深い関係性を示しているのだ」
「後ろの正面とは、斬られた首が身体の前に転がった(目の前の身体が誰のものか、あるいは自分を斬首した者は誰かを問う)様子を表わしているのだ」
……などなど、陰謀論めいた説もあるようですが全体的に暗いテーマで一貫しているのは興味深いところです。実際のところは判りませんが、だからこそ奥知れぬ面白みがあり、古くから親しまれて来たのでしょう。
皆さんは、どの説だと思いますか?
※参考文献:
合田道人『案外、知らずに歌ってた同様の謎』祥伝社黄金文庫、2003年10月
日本の童謡研究会 編『誰も知らなかった 本当はこわい日本の童謡』ワニブックス、2002年1月
柳田國男『民間伝承論』共立社、1934年1月
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan
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