前編では、天草四郎の人物像や伝説について紹介しました。後編では、天草四郎が歴史の表舞台に現れる『島原の乱』と彼の最期、噂について解説します。


前編の記事はこちら

総大将は16歳の少年キリシタン。悲しき運命に翻弄された「天草四郎」の実像【前編】

■悲しき運命に翻弄された天草四郎

天草四郎が歴史の表舞台に現れた『島原の乱』。島原の乱という一揆が起こった背景から、悲しい運命をたどった少年の軌跡を解説します。

島原の乱総大将として祭り上げられた少年
総大将は16歳の少年キリシタン。悲しき運命に翻弄された「天草...の画像はこちら >>


Wikipedia 天草四郎の旗印

島原藩のキリシタン弾圧が激しさを増し、領民は年貢を払えなくなるほど生活に困窮していました。最悪の藩主松倉勝家(まつくらかついえ)は、キリシタンや年貢を払えなくなった領民に対し非人道的な拷問や処刑を行います。領民やキリシタンらの我慢もとっくに限界を超えていました。そんな中、遂に1637年12月11日「島原の乱」が勃発します。

おろかで無能な藩主。非人道的な政策で島原の乱を引き起こした暗君「松倉親子」の愚行【前編】

その総大将となったのが、わずか16歳の少年であった天草四郎だったのです。カリスマ性のある予言の子として「救世主」に祭り上げられました。本人の意思というよりは、一揆を先導していた父や浪人たち、キリシタンらによって担ぎ出された可能性が高いです。

天草四郎は、戦い方も総大将としての心構えや覚悟もよくわからないうちに「島原の乱」の総大将として幕府軍と相対するのです。


島原で起こった一揆には、天草での反乱で離反した武士など総勢37,000人もの人々が集結しました。これだけの人々が集結したのは、天草四郎の持って生まれたカリスマ性が大きかったのかもしれません。総大将となった天草四郎は、4カ月に及ぶ『島原の乱』を戦っていくことになったのです。

天草四郎の最期 幕府側は3度戦ってすべて敗戦したため、兵糧攻めに作戦を変更します。この結果、反乱軍は勢いを失いました。天草四郎が法度によって一致団結させ、勢いを取り戻そうとします。しかし、反乱軍は食料を全く取れず限界寸前。その時、幕府側の一斉攻撃が始まり、関わったものは皆殺しにされてしまいます。結局内通者の南蛮絵師だった山田右衛門作(やまだえもさく)のみが生き残ったのです。

幕府側は、総大将だった天草四郎の顔を実は全く知りませんでした。そこで皆殺しにした後、年頃が同じ位の少年たちの首を天草四郎の母親にかわるがわる見せたのです。すると、ある少年の首を見た母親の顔色が変化し、泣き崩れました。
その様子を見て、天草四郎の首と判断したのです。

天草四郎はキリシタンや領民達と命尽きるまで戦い、16歳というあまりにも短い生涯を終えたのでした。

■天草四郎は豊臣秀頼の忘れ形見!?

総大将は16歳の少年キリシタン。悲しき運命に翻弄された「天草四郎」の実像【後編】


Wikipedia 豊臣秀頼

天草四郎には、豊臣秀頼(豊臣秀吉の子供で、大坂夏の陣で自害したと言われている)の子供ではないかというご落胤(らくいん)説があります。ご落胤説の理由としては次のようなものです。

  • 天草四郎の旗印が豊臣の「瓢箪(ひょうたん)」の旗印と同じであった。
  • 島原の乱に関わったものを皆殺しにしようとする徳川の尋常でない執着。
  • 豊臣秀頼が生きていて薩摩へ逃れたとされる説があること。
豊臣秀頼が大坂夏の陣で密かに薩摩へ逃れた際にできた子供が天草四郎だとする説があります。島原の乱は、徳川幕府が豊臣の威光を恐れ、子孫を根絶やしにしようと躍起になった戦いだという説まであります。

しかしこの説の信憑性はかなり低いとされています。島原の乱が起こった背景は、あくまでもキリシタンへのあまりにひどい弾圧や領民への非人道的な対応によるものです。豊臣復興のための戦いではありません。


そもそも大坂夏の陣で豊臣秀頼が生きて逃れたという説自体、信憑性が低いと思われます。そうであってほしいと願う人々によって作られたものである可能性が高いのです。しかし、大坂夏の陣で秀頼の亡骸と断定できるものは何一つ見つかってはいません。秀頼が大阪で死んだと断定もできないのです。秀頼が逃れたとされる薩摩があった鹿児島の書物には、天草四郎が「豊臣秀綱」という名前であったと記されています。真実は謎に包まれたままなのです。

■まとめ

今回は、謎多き16歳の少年キリシタン天草四郎について紹介しました。生まれながらに持っていたカリスマ性によって、周囲の大人たちに神格化され運命に翻弄され露と消えた天草四郎。今もなお人気を博しているのは、謎があまりに多いため伝説や噂が否定できないところかもしれません。

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

編集部おすすめ