10月20日ってなんの日か知っていますか?実は「えびす講」の日なんです。

日本の昔からの伝統行事なのですが、ご存知ではない方も多いかもしれません。
かくいう私もそうでした。しかしとてもお目出度い行事なので、今回はその「えびす講」についてご紹介していきます。

■「えびす様」とは

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えびす様

「えびす様」とは福をもたらすとして信仰されている“七福神”の一人であり、唯一日本古来の土着の神様です。鯛を抱え釣り竿を持っている姿はご存知の方も多いでしょう。

えびす様はもともとは言えば漁民の神様で、「海運守護や豊漁」といったご利益があるとされていました。

それが時を経て、商家では「商売繁盛」、農村では「五穀豊穣」の神様として信仰されるようになったのです。

にっこり笑った顔を“えびす顔”と言うように、“えびっさん、えべっさん、おべっさん”などと呼ばれ、「知恵を絞って汗水流して働けば幸福を授けてくださる」という皆に福をもたらすありがたい神様なのです。

■神無月(旧暦10月)

10月20日は「えびす講」の日!商売繁盛、家内安全…民衆の幸福に寄り添ってくれる神様とは?


大日本歴史錦繪 「出雲國大社八百万神達縁結給圖」 画:豊国 国立国会図書館デジタルコレクションより1

上掲の浮世絵は10月の出雲大社の様子で、たくさんの神様が描かれています。

10月は日本中の神様が出雲大社に集まるため、和風月名で10月を『神無月(かんなづき)』と呼びます。逆に、出雲地方は10月の事を「神在月(かみありつき)」呼び、出雲大社では「神在祭」というお祭りも行われます。

神が消えてしまうなんだか不吉な10月の旧称「神無月」。でも安心、留守番役にはあの人が!

出雲大社で神々は何をするのかというと神議り(かみはかり)と言い、日本の国や私たちの繁栄や安寧、それに縁結びや五穀豊穣など、人々の幸福のためにあらゆる物事を話し合っているのです。


出雲大社に祀られている大国主大神は〝縁結び〟の神様として古くから知られていますが、単に男女の縁結びだけではなく、人々のあらゆる繋がりの縁、広く人々と幸せのご縁を結ぶ縁結びの神様なのです。

日本には八百万の神、あらゆるところに神がいると言われていますが、神様がみんないなくなると困るということで、誰か留守役の神を置いておこうということになり、抜擢されたのが“えびす様”となったのです。

何故、えびす様が選ばれたのかというと秋といえば五穀豊穣が願われる訳で、そのような季節にえびす様がいなくなっては困る、などといういくつかの説があります。

結局、えびす様は留守神様の代表となったのです。(他にも“かまどの神様”など何人かは留守役をしています)

■えびす講

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恵比寿講ゑびすこふ 画:喜多川歌麿 アメリカ議会図書館

留守神様として残った「えびす様」を人々は慰め、お祀りするようになりました。

その日が旧暦10月20日で二十日戎と呼ばれます。そのまま新暦の10月20日にお祀りしたり、また旧暦と新暦のズレを考慮して11月20日に行われる地域もあります。

近畿以西では“十日戎”といって1月10日や1月15日に行われることが多いようです。

“えびす祭り”や“えべっさん”と呼ばれ、えびす様を主祭神として祀っている神社だけではなく、その摂末社として祀っている社寺でも祭祀が行われます。祭りの際には多くの市がたち、熊手や笹に種々の縁起物をつるした“福笹”などが売られたり、その年に収穫した農作物なども売られたりしています。

10月20日は「えびす講」の日!商売繁盛、家内安全…民衆の幸福に寄り添ってくれる神様とは?


浪花名所図会 今宮 十日恵比寿 画:歌川広重 シカゴ美術館所蔵

上掲の浮世絵を見てみると、タイトルに今宮とあるように“今宮戎神社”の十日戎に参詣した人々の様子が描かれています。お参りから帰る人は手に“福笹”を持っていますね。


この神社は商売繁盛の戎神社として有名で1月9日~11日にかけて十日戎が行われています。

しかし東日本や関東では「えびす講」は社寺での祭祀というよりも、各家庭内で行われる祭祀という意味合いが強いと言われています。

■家庭でのお祀りの仕方

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風流子供遊十二月 十月 画:石川豊雅 国立国会図書館デジタルコレクションより

上掲の浮世絵の上部に「えびす講」のお供えをしている人物が描かれています。えびす様は元来おおらかな方なので、お供えに決まった様式というのはないようです。

しかし出来れば、えびす様の置物や絵を飾り、鯛のお頭つきや葉つきの大根、新米などをお供えするのが基本的なようです。

それに加えてあんころ餅やけんちん汁・秋刀魚、あるいは生きた魚を生かしたまま、お供えする地方もあるようです。

そのようなご馳走とともに小銭や財布、そろばんなども一緒にお供えする地域もあります。

つまりその季節に収穫したものをお供えして、これまで一年の無事を感謝し、これから先また一年の五穀豊穣や大漁祈願、商売繁盛、家内安全などをお願いするのです。

このように日本では特有の宗教というよりも、八百万の神様からいただいた恵みをお供えし、自然とともに時を過ごすという民族だと言えるでしょう。

今年はみなさんも神社に参拝するのもよし、家庭でえびす様の神棚を作ってお供えをするのもよし、この先の見えない今の日本の情勢を、少しでも明るく希望を持って過ごせたらいいですね。

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