平家を恐れる伊東と、それに抗う北条。さぁ、初回で視聴者の度肝を抜いた?NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。物語は前回に引き続き、伊豆の豪族・伊藤祐親(演:浅野和之)と北条時政(演:坂東彌十郎)のにらみ合いから再開します。
坂東の片隅で起きた、一族同士の
ささいな諍いがやがて…。
義時の運命が動き出す。
※NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第2回プロローグ
※前回のあらすじ&振り返りはこちら
1月9日(日)放送開始!2022年大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第1回あらすじを予習
「鎌倉殿の13人」コメディとシリアスの調和。初回放送の振り返りと次回のポイント
■衝突する坂東武者の意地
北条時政「俺だって、どうしてこうなっちまったのか分かんねえんだ。だが武士として、一度かくまうと決めた以上、死んでも佐殿(頼朝)を渡す訳には行かないんじゃあ!」
いつもヘラヘラしているようでいて、ここ一番で肚を括ると、相手がどれほど強大であろうと譲らない。坂東武者の意地を見せる時政、カッコいいですね。
伊東と北条の争いを仲裁する大庭景親(イメージ)
よろしい、ならば力づくで……いよいよ戦さと思われたその時、相模国から大庭景親(おおば かげちか)が伊東勢をも圧倒する大軍を率いて仲裁に乗り込んできました。
伊東も北条も同じ身内で何をやっているんだ……三浦義澄(演:佐藤B作)からの依頼でやって来た景親は、頼朝公の処遇について以下の取り決めを提示します。
一、頼朝の身柄を伊東から北条に預け替えること。
一、頼朝に、八重姫(演:新垣結衣)と絶縁する起請文を書かせること。
時政とすれば申し分ない条件で、対する祐親は不承不承ながらこれを呑まざるを得ませんでした。
不満たらたらで伊東屋敷へと戻る祐親らの前に、前回頼朝の刺客として祐親の暗殺を命じられた工藤祐経(演:坪倉由幸)らが襲撃するも、あっさり撃退。
祐親「雑魚に構うな!」
このことが後にトラブルの火種となるのですが、それはまた別のお話し。
(※)史実では、ここで祐親の長男・河津祐泰(演:山口祥行)が討死にし、その遺児たち(曾我兄弟)が工藤祐経に対して仇を討つ「曾我兄弟の仇討ち」が繰り広げられますが、果たして「鎌倉殿の13人」では描かれるでしょうか。
■北条屋敷へ戻った二人
一方そのころ、伊東勢の包囲を脱出した北条義時(演:小栗旬)は源頼朝(演:大泉洋)を連れて富士の裾野までやって来ると……。
飛んできた一筋の矢。すわ追手か!?……と思ったら、矢柄に刻まれた名前は、頼朝の乳兄弟である山内首藤経俊(演:山口馬木也)。

乳兄弟と知って一安心(イメージ)
狩りに来ていた経俊は頼朝との再会を喜び、「佐殿が立てば、多くの武士が馳せ参じましょう。私もしかり」なんて調子のいいことを宣(のたま)います。
皆さん、このセリフ。よくよく覚えておいて下さい。こやつは数年後、頼朝の挙兵に際して、真逆のことを吐(ぬ)かします。
加えて飛んできた一筋の矢というのもポイントで、後に石橋山の合戦で頼朝公の鎧の袖を射抜くのも、この経俊……という伏線なのでしょう。
後に捕らわれた経俊の助命を嘆願する山内尼(頼朝の乳母)に対して、頼朝は黙って射抜かれた鎧の袖と、射抜いた経俊の矢を持ってくる……というエピソードが劇中に盛り込まれるかはお楽しみです。
……さて、みんなはどうなったかと伊豆の北条屋敷まで帰って来ると、祐親らと一応の和解をし、改めて頼朝が北条家の預かりとなったことが告げられました。
北条家に対するあいさつの場では丁寧に振る舞っていた頼朝でしたが、いざ滞在と決まれば、やれ小骨が多いから魚は嫌だ、殻が面倒だから貝は嫌だと掌を返すタヌキぶり。
そんな頼朝を姉・北条政子(演:小池栄子)に近づけさせまいと躍起になる義時でしたが、父・時政は新たに京都から迎える後妻りく(演:宮沢りえ)のことで頭がいっぱい、当の政子も近づく気満々です。
頭を抱える義時のところへ、大庭に仲裁を求めた三浦義村(演:山本耕史)が現れて恩を着せ、頼朝を預かることについては「首、刎ねちまえ(斬ってしまえ)よ」「ま、がんばってくれ」と軽くあしらったのでした。
■最後に逢瀬を取り計らうも……
さて、伊東屋敷へ帰ってきた祐親は八重姫に対して「頼朝とは二度と逢うな」「お前を他家へ嫁にやる」と伝えます。
父の決定に不服を抱きつつも従う八重姫でしたが、せめて我が子の千鶴丸に会わせて欲しいと懇願したものの、祐親は(本当は既に殺したが)出家させたと言いつくろったのでした。
八重姫は伊東の家人・江間次郎(演:芹沢興人)に嫁ぐことが決められ、格下の江間へやることから、頼朝と密通した娘に対する制裁の意思が見て取れます。

江間次郎へ嫁ぐことになった八重姫(イメージ)
嫁ぐのは仕方がないとして、最後に一目だけでも頼朝に会いたいという八重姫を不便に思った兄の伊東祐清(演:竹財輝之助)は義時の兄・北条宗時(演:片岡愛之助)と打ち合わせ、武蔵国にいる比企能員(演:佐藤二朗)の屋敷で密会させることに。
でも、面倒な役割はやっぱり義時の役目。相変わらずです。
祐清は八重姫を、義時が頼朝をそれぞれ連れて比企屋敷へ……となったものの、義時の誘いに対して頼朝は
「今さら会ってもどうにもならぬ」「気持ちくらい、会わなくても解る」
と拒否した上で、兄・宗時に対して「わしに多くを望むな」「わしは兵を挙げぬ」と伝言します。
困った義時の元へやって来たのは妹の実衣(演:宮澤エマ)。
実衣「姉上(政子)が」義時「姉上が?」実衣「化粧を」
政子は頼朝に誘われて三島明神へデートに。あの女好きに姉を近づけさせてなるものか……躍起に説得する義時でしたが、政子からはピシャリ。
「あなたは昔からそう。私に好きな人が出来ると悪口ばかり。私をとられないように」
姉からシスコンを指摘され、反論できない義時はとりあえず比企屋敷へと向かいますが、その道中に出くわした伊豆権守・堤信遠(演:吉見一豊)に土下座を強要され、泥まみれに。もう散々ですね。
※後に頼朝が挙兵した際、真っ先に討たれるのがこの堤信遠であり、ここでしっかりとヘイトを稼いでいます。
■駆けずり回る義時と、女のバトル?そして明かされる佐殿の腹
それでもどうにか比企屋敷へ辿り着いてみれば、比企夫妻からは「(頼朝が来ないことで)用意した料理などが無駄になった」「ちゃんと意思は確認したのか」など散々に責められ、八重姫からも八つ当たり。
「私は父に見つかれば自害する命がけの覚悟でここへやって来たのだから、お前も嘘をつくなら命がけでつきなさい!」
等々、とかく面倒ごとばかり押しつけられた挙句に報われることも少なく、ボロボロになって北条屋敷まで帰って来れば、時政がカンカンです。
せっかく新妻を迎えたと思ったら、家族が誰もいなかったことで激怒しており、政子がどこへ行ったかと聞けば
時政「土肥の次郎の(ところ)……」義時「行って来まーす!」
この辺りの呼吸が三谷脚本らしいコメディ調。遠路武蔵国から帰って来たばかりと言うのに、今度は伊豆から湯河原へ。
もう命を狙われている訳でもないので、別に放っておけばよかろうに、この義時は実に忙しく走り回ります。
で、夜通し走ったのか湯河原へ行ってみれば、いるのは頼朝だけで政子はおらず、今度はどこへ行ったかと言えば伊東屋敷。
目的はもちろん八重姫とサシ(1対1)で話をつけるため……いわゆる「女のバトル」ですね。
「伊東から北条へ乗り換えたということか。何もかも」
既に頼朝の気持ちが離れたことを告げられた八重姫でしたが、未練を断ち切るよう努めると約束。
政子と八重姫の静かなバトルは穏便にカタがついたのでした。義時に当たり散らすなど、これまでワガママばかりの印象でしたが、頼朝に対する愛情の深さは確かなものだったようです。

イメージ
その頃、義時は頼朝と二人で朝風呂に浸かりながら、その胸中を打ち明けられます。
北条の婿となって後ろ盾を持ち、平家を滅ぼして朝廷を助け、天下をあるべき姿に戻す……。
大志を語る頼朝から「兄にも話すな」と前置きの上で「お前はわしの頼れる『弟』じゃ」と告げられた義時は、源氏の棟梁たる頼朝の威厳に心服。
これで義時の籠絡完了……もとい、心からの忠誠を誓うようになったのでした。
■終わりに
……以上、今回も面倒ごとに巻き込まれて駆けずり回った義時でしたが、急ぐあまりにこぼれてしまった場面も拾っていきましょう。
時は少し戻って、福原の大和田泊で東国のゴタゴタ(頼朝の夜這いに怒り狂う祐親と時政らの悶着)について報告を受けた平清盛(演:松平健)。

歌川国芳「豪傑八卦 兵庫夕照 平相国清盛入道浄海」
清盛は頼朝のことをよく覚えていなかったようで、かつて自分で助命しておきながら「なぜ殺さなかった」と訊ねるなど、当人も、平家政権も少しずつ綻びが見え始めていることを表しているようです。
また、せっかく京都から嫁いできたのに、家族が誰もいなくて「嫌われている」と思い込む時政の新妻・りく。この時点ではまだ後世に伝えられるような悪女ではない設定らしいですが、すでに十分イチモツ腹にありそうに感じられてなりません(演者が宮沢りえだからでしょうか)。
そして政子と実衣のおしゃべりシーン。妹の「あんなの、どこがいいの?」「私には、ただのハッキリしない男にしか見えないけど」というツッコミも馬耳東風。
政子の「生涯かけて支えたいと思える男性に出逢えたの」という言葉に「ハイ、いただきましたー!」と茶化すような合いの手。恐らく内心「これで何度目だよ」と呆れている含みがありありと見てとれました。
他にも頼朝がアジの焼き魚に文句をつけた際、ニッコリと微笑みながら、それでも食べないことを許さない断固たる政子の姿に、空恐ろしさを感じます。
頼朝に対して「佐殿、逃げる(政子から手を引く)なら今の内ですぞ!」「この女はやめておけ、将来すさまじいことになりますぞ!」と視聴していて何度ツッコミを入れかけたことか……。
第2回も息つく暇なく場面の展開が早い早い。面白いけれど、うっかり手洗いなんかに立つと伏線や名場面を見逃してしまいそうで、まったく油断がなりません。
次の第3回「挙兵は慎重に」。おごり高ぶる平家政権に叛旗をひるがえした以仁王(演:木村昴)より、呼応するべく求められた頼朝の決断やいかに。次回も見逃せませんね!
2022年 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」※参考文献:
- 『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』NHK出版、2022年1月
- 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 完全読本』産経新聞出版、2022年1月
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