♪チョイト一杯のつもりで呑んで昭和後期から令和にかけて、平和な現代なら「困ったヤツだ」とお説教くらいですませてもらえるかも知れません。しかし昔は治安が悪く、無事ではすまないことも少なくありませんでした。
いつの間にやらハシゴ酒
気がつきゃホームのベンチでゴロ寝……♪
※植木等「スーダラ節」より
いい気分で呑んでいるが、どこから敵が襲ってくるか判らない(イメージ)
常在戦場(じょうざいせんじょう/つねにいくさばにあり)。今回は江戸時代、武士道のバイブルとして知られる『葉隠(はがくれ。葉隠聞書)』より、酒の嗜みについて紹介。
いつの時代も、酒でやらかしてしまう者がいたようです。
■大酒にて後れを取りたる人数多なり……
六八 大酒にて後れを取りたる人数多なり。別して残念の事なり。先づ我がたけ分をよく覚え、その上は呑まぬ様にありたきなり。その内にも、時により、酔ひ過す事あり。酒座にては就中気をぬかさず、不図事出来ても間に合ふ様に了簡あるべき事なり。又酒宴は公界ものなり。【意訳】酒で失態を犯す者は数多く、気をつければ防げるだけに残念なことである。心得べき事なり。
※『葉隠聞書』巻第一より
まず自分の適量をよく知った上で呑み過ぎぬようにしたいものだが、それでも諸事情によって飲み過ぎてしまうことも少なくない。
酒の席では特に気を引き締め、いざ有事が起こっても即座に対処できるよう心掛けておくべきであろう。
そもそも酒宴はプライベートではなく、あくまでフォーマルな場であることを自覚しておけば、とるべき態度が判るはずである。

「もう。呑み過ぎですよ……」お酒は楽しく、適量を(イメージ)
……まったく酒を呑まないというのも付き合いが悪く、とっつきにくく思われるかも知れませんが、酔っ払っていざ有事に不覚をとってしまっては武士の名折れ。
いっときの快楽など、家名を末代までけがすリスクに比べれば取るに足らぬ……そう心得ていれば、おのずと酒から離れていくことでしょう。
酒は付き合いで最低限、呑み足りないくらいに呑んでおくのが、円満な人間関係と奉公の折り合い。現代の私たちも、そう心がけたいものですね。
※参考文献:
- 古川哲史ら校訂『葉隠 上』岩波文庫、1940年4月
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