可憐な花と上品な香りで春の訪れを告げてくれる梅の花。奈良時代以前に日本に伝わり、現在では実に200種類以上も種類があります。


珍しいのは、1本の木から、紅・白・うす桃色・絞り・まだらと、さまざまま色合いの花を咲かせる、その名も「思いのまま」という梅。

梅とは深いゆかりのある、学問の神様・菅原道真を祀る京都・北野天満宮では、「思いのまま」の枝を厄除け・無病息災の縁起ものとして授与することでも知られているのです。後編では、「思いのまま」の魅力をお伝えします。

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「思いのまま」……の名通り。1本で紅・白・絞りと色を変える無病息災・厄除けの梅【前編】

■さまざまな花を咲かせる珍しい梅

「思いのまま」……の名通り。1本で紅・白・絞りと色を変える無...の画像はこちら >>


白・紅・まだら……1本で違う色の花が咲く「思いのまま」(写真;高野晃彰)

白い花を咲かせる梅には、「冬至梅(とうじばい)」「春日野(かすがの)」「内裏(だいり)」「緑萼梅(りょくがくばい)」などが。

赤い花を咲かせる梅には、「八重寒紅(やえかんこう)」「楠玉(くすだま)」「鹿児島紅(かごしまこう)」「八重旭(やえあさひ)」などがあります。

そして、白梅といっても、白・うっすらとピンク味を帯びた白・グリーン味を帯びた白などニュアンスは異なり、紅梅も、濃いめのフューシャピンク、桃のようなピンク、鮮やかな深紅、淡いピンクなど色の濃さは異なるのです。

そして、白・紅・濃いピンク・うす桃・白と紅の絞り柄など、1本の木から、さまざまな種類の色合いの花を咲かせるのが、「思いのまま」という品種。
梅の品種にしては、面白い名前ですよね。

人ではなく梅が「思いのまま」に咲かせる 「思いのまま」という名前は、人が思いのままにいろいろな色合いの花を咲かせることができる……という意味ではありません。

今年、白が咲いたからといって翌年も同じ場所にしろが咲くとは限らないそう。紅しか咲かないときも、白しか咲かないときもあるそうで、梅の「思いのまま」しか咲かないのだとか。


厄除け・無病息災の梅「思いのまま」
「思いのまま」……の名通り。1本で紅・白・絞りと色を変える無病息災・厄除けの梅【後編】


 厄除けの玄米が入ったひょうたんを取り付ける梅の枝「思いのまま」(写真:北野天満宮)

「思いのまま」……の名通り。1本で紅・白・絞りと色を変える無病息災・厄除けの梅【後編】


 梅の枝に瓢箪と短冊(写真:北野天満宮)

写真記事:招福の梅の枝「思いのまま」元旦より授与 北野天満宮

学問の神様・菅原道真は、こよなく梅を愛したことで知られています。そして、菅原道真を祀る「天神さま」では梅の紋や梅の木がシンボルです。

中でも、京都・北野天満宮の梅苑には50種類約1500本の梅があり、一般公開される2月初旬~3月下旬は、多くの人で賑わいます。

そんな北野天満宮では、お正月に「思いのまま」の梅の枝を使った縁起物の授与を行っているのです。

境内の梅園の梅を剪定した際に出る枝に、「思いのまま」と書かれた短冊と厄除けの瓢箪を結びつけたもので、瓢箪の中には、厄除け・災難除け・無病息災のご利益がある玄米が入っています。

「思いのまま」……の名通り。1本で紅・白・絞りと色を変える無病息災・厄除けの梅【後編】


 瓢箪の中には無病息災・厄除けのご利益がある玄米が(写真:北野天満宮)

その枝は、自宅に持ち帰り花瓶に挿して定期的に水を差し替え大切に扱い、蕾が膨らんできたら暖かい部屋に置くと花を咲かせてくれるそうです。ちなみに玄米は、お米に混ぜて炊くとご利益が得られます。

何色の花が咲くのから、咲いてみてからのお楽しみ。一色しか咲かないことも白・紅が混ざって咲くこともあるそうです。

自分の意思を持つ梅「思いのまま」。盆栽で楽しむ方、庭先で育てる方も多く、「今年はどんな色合いになるのか」と楽しみにしているそうです。

梅の香りが漂う季節には、そんな「思いのまま」を探してみてください。
ささやかなご利益が得られるかもしれません。

「思いのまま」……の名通り。1本で紅・白・絞りと色を変える無病息災・厄除けの梅【後編】


 いろいろな色の花が咲く梅「思いのまま」を探してください。(写真:高野晃彰)

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