最近、忍術書のバイブル『萬川集海』のベースとなる忍術書『軍法 間林清陽(かんりんせいよう) 巻中』が発見されたというニュースが話題になりましたね。

忍者の里・甲賀で忍術書『間林清陽』発見!リアルな忍者像を知る貴重な手がかりに

そこで忍術書の『萬川集海』や『正忍記』に、実際何が書かれているのか調べてみました。
忍びとしての基本の考え方や、変装や必需品の道具について今回はご紹介します。

江戸時代の貴重な忍術書に書かれていた変装術「七方出」や「忍者...の画像はこちら >>


忍者と光源氏。歌川国貞画「今源氏錦絵合 須磨 十二」(1853年)

■陽忍と陰忍

忍術の世界には「陽忍」と「陰忍」という言葉があります。陽忍は謀計の智慮を以て姿を現しながら敵中へ張り込むことで、陰忍は術を以て姿を隠して忍び込むこと。

要は、陽忍は身元を偽装して白昼堂々、敵を調査するスパイですね。時と場所に相応しい姿に変装し、髭の反り方もその地方の人と同じようにすべきしと書かれています。後述しますが、僧侶や山伏に変装したり、必要があれば女装もしました。

あると便利なもののなかに「敵国の大将が使う旗印や幕紋、城主の印鑑の写しなど」なども書かれています。

陰忍は皆さんが思い浮かべる映画やドラマで描かれるような、闇夜に忍んで敵方の秘密を探ったり謀(はかりごと)を暴く活動のことです。

・闇夜に忍び込むため、月が出る前か入った後に忍び込むべき
・夜間活動するため、眠くならないよう昼寝をしておく
・逃走経路を確保しておく

など基本的なことや、巻十四には「察知サシ十六箇条」というのがあり、このサシは錠前のことで、様々な錠前の解説がされています。

ここでは正心の心を説いています。正心とは、「目的のために正しく道理を踏まえること」という意味で、「忍者は盗人と違う」ことを強調しています。


■変装するなら…七変化ならぬ「七方出」

『正忍記』には、変装に適した7つの職業を紹介しています。

①出家(僧侶)…仏門に入った者として寺院建立のため諸国を回る「勧進僧」や、「托鉢僧」に扮しました。

②虚無僧…禅宗の有髪僧のことで、尺八・深編笠の出で立ちで帯刀を許されていました。これに化ければ顔も隠せて一石二鳥ですね。逆に幕府は虚無僧そのものを隠密として用いて、諸国往来自由の特権を与えていたとか。

③山伏…言わずもがな、修験道の行者です。山野に分け入っても怪しまれませんね。

④商人…行商人に化け、商品を売りながら諸国をめぐりました。

⑤放下師…曲芸師のこと。猿回しや手品を見せながら諸国を巡業。「放下」とは仏教用語で全ての執着を捨て去ることで、芸をしながら仏法を説いた「放下僧」が由来となっています。

⑥猿楽師…能役者のこと。
勧進能といって社寺の修繕などの寄付を募る為、諸国を巡業しました。

⑦常の形…特殊な職業ではなく、農民や職人、武士に成りすますこと。これらの者は全国どこにでもいますが、よそ者が身元がばれないようにするには最も困難な変装です。

■忍びの必需品、忍び六具

俗に七つ道具といいますが、『萬川集海』には「忍び六具」が必要と書かれています。気になるその6つとは…。

①印籠…携帯用の薬入れ。傷薬、腹痛の薬、必要なら毒薬まで忍ばせていました。

②編み笠…日除けや風雨を避けるため、旅行時の必需品でした。更に顔全体を隠すことのできる深編笠や虚無僧笠などは好都合ですね。

③石筆…蝋を固めた筆記具で、現代でいうところのチョーク。味方に情報を伝える際に、いろいろな素材に文字や目印を書き残すことができました。また、矢立(墨壺と筆の携帯筆記具)も必需品でした。


④三尺手拭…三尺(約110センチ)の木綿の手拭。ピンと張れば丸腰で敵と戦う時の防具に、濡らして使えば鞭のようにしならせて相手を叩くこともできます。また、包帯や頬かむり、水のろ過など様々な用途に使えました。

⑤打竹(うちたけ)…竹筒の中に火種を入れたもので、ライターのように火をつけたり、懐炉として使いました。

⑥鉤縄(かぎなわ)…いかにも忍者っぽい唯一の道具かもしれません。縄の先に金属のフック(船の錨のような金属のフックが付いたものです。投げ縄の要領で放り投げ、屋根の上に登ったり堀を渡るときに使いました。また、振り回して鎖鎌として武器にしたり、捕縄術(ほじょうじゅつ)といって縄で相手を補足する道具として利用しました。

いかがでしたか?

次回は意外な人物が忍びの者だったのでは?という説をご紹介できればと思います。

参考:忍者の教科書-新萬川集海(笠間書店、伊賀忍者研究会/編)

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