誰もが一度は食べたことがあるホットケーキあるいはパンケーキ。
どちらも似たようなもので、いずれかの名称で呼ばれていますね。
それにしても両者にはどのような違いがあるのでしょう? 大きな違いはないとすれば、なぜ2つの名称が存在するのでしょうか?
まず重要なポイントは、そもともホットケーキは日本で生まれた呼び名で、パンケーキの一種だということです。つまり、最初に存在したのはパンケーキの方です。
ちなみに、パンケーキの「パン」は食パンやフランスパンのパンではなく、英語で鍋を意味する「pan」のことです。
小麦粉と卵・牛乳・砂糖・ベーキングパウダーを混ぜ合わせて焼くパンケーキは、もともとはフライパンや鍋を用いて調理するケーキ全般のことを指していました。

海外では主食メニューのひとつで、厚さは薄めに焼かれ、他の料理に合うように砂糖を控えめにしたものもあります。
そのレシピが日本に伝わったのは明治時代のことで、はじめは薄餅と呼ばれていました。
それがやがてハットケーキと呼ばれるようになり、昭和初期に温かいケーキというニュアンスの呼び名としてホットケーキが広まります。
■日本と海外の呼び名の違い
さてその後、1950年代に甘い味付けに調整されたホットケーキミックスが売れた影響もあり、日本ではホットケーキ=甘いものというイメージが定着しました。
その後も、日本では、商品名などでパンケーキという名称が使われることはほとんどありませんでした。かろうじて、海外の絵本や童話などにその名称が残っていた程度です。
子供の頃に海外の童話などを読んで、パンケーキという名前を目にし「ホットケーキはおやつで食べたことがあるけど、パンケーキって何だろう?」と疑問に感じた人は多いと思います。

ところで、海外に「ホットケーキ」という単語が存在しないかというと、そんなことはありません。
ただ、海外ではパンケーキという呼び方が主流のため、お店でホットケーキと注文しても基本的には伝わりません。
しかし、アメリカの一部地域(特に南部)では分厚いパンケーキのことをホットケーキと呼ぶことが多いらしく、そこではかろうじて伝わるようです。
アメリカでは他にも、ジョニーケーキやグリドルケーキ、フラップジャックという呼び方があります。

お皿に盛られたジョニーケーキ。おいしそう?(英語版Wikipediaより)
さて、そんなパンケーキ、もといホットケーキですが、どうしたことか、最近はカフェなどでもパンケーキがメニューに載るようになりました。
これは2010年頃に、ハワイやニューヨークなどの有名パンケーキ店が東京・原宿に続々と出店したのがきっかけだったようです。
■復活!新生パンケーキ
新しいパンケーキ店では、何段にも重ねた甘さ控えめの薄めの生地に、山盛りの生クリームと色とりどりのフルーツをトッピングするというスタイルで、お客さんに提供しました。これが大流行したのです。

フルーツととろとろハニーのパンケーキ
もともと、日本のホットケーキは生地自体にしっかりと甘みがあるため、トッピングはバターやシロップ程度のシンプルなものがほとんどでした。
そのため生クリームやフルーツといったトッピングは新鮮で、見栄えも良く、日本の若者たちを魅了したのです。
ちょうどSNSが流行し始めたこともあり、写真映えするということで「新生パンケーキ」は全国にあっという間に広まります。
こうして、日本ではパンケーキが新たな生命を吹き込まれた形で復活したのでした。

バナナパンケーキ
現在は、昔ながらの分厚い生地にバターやメープルシロップをかけたものを「ホットケーキ」と呼び、一方で甘さ控えめの薄い生地にクリームやフルーツをトッピングしたものを「パンケーキ」と使い分けることが多いようです。
参考資料
- DELISH KITCHEN
- 京都製菓BLOG
- 阪急阪神百貨店公式通販
- macaroni
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan