まさかの桶狭間から開幕した令和5年(2023年)NHK大河ドラマ「どうする家康」。冒頭から松平次郎三郎元信(後に松平蔵人元康)だったため、幼少期は演らないの?と思った視聴者も少なくないと思います。


そこで今回は江戸幕府の公式記録『徳川実紀(東照宮御実紀)』より、家康の誕生シーンを紹介。幸せもつかの間、母・於大の方(演:松嶋菜々子)と生き別れるまでをたどって行きましょう。

■寅神様に授かった奇跡の子

天文十一年十二月廿六日此御腹に   若君安らかにあれましける。これぞ天下無彊の大統を開かせ給ふ當家の   烈祖東照宮にぞましましける。その程の奇瑞さまざま世につたふる所多し。(北方鳳来寺峰の薬師に御祈願ありて。七日満願の夜薬師十二神将の寅神を授け給ふと見給ひしより。身重くならせ給ふなど。日光山の御縁起にも記されし事多し。)石川安芸守清兼蟇目をなし。酒井雅楽助正親胞刀を奉る。御七夜に   竹千代君と御名参らせる。


※『東照宮御實紀』巻一「天文十一年家康生」「命名竹千代」

※「若君」「烈祖東照宮」「竹千代君」など家康を指す言葉の前に空白があるのは、名前のすぐ上(原文は縦書き)に文字が踏みつける不敬を避けるための配慮(原文ママ)です。

時は天文11年(1543年)12月26日。家康(烈祖東照宮)が安らかに誕生しました。

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十二神将の一・寅を司る真達羅大将(伝 浄瑠璃寺蔵)

かつて北方(正室。ここでは於大の方)が子宝祈願のため鳳来寺の薬師堂に参籠して七日目の夜。薬師如来が十二神将の一柱・寅神を遣わしたところ、たちまち妊娠したという奇跡の子だと言います。

さぁ松平家の跡取りができた。父・松平広忠(演:飯田基祐)の喜ぶまいことか。さっそく重臣の石川清兼(いしかわ きよかね。安芸守)に蟇目の儀式を執り行わせ、酒井正親(さかい まさちか。雅楽助)が胞刀(守り刀)を献上しました。

石川清兼は石川数正(演:松重豊)の祖父で、酒井正親は酒井忠次(演:大森南朋)の父親です。


名前(幼名)はどうしようか……考えた末、先祖代々使っている竹千代(※)に決定。竹のように真っ直ぐ、ずっと元気に育って欲しい。そんな願いが込められているのでしょう。

(※)松平家の幼名略系図
……竹千代(松平親忠)-竹千代(松平長親)-竹千代(松平信忠)-竹千代(松平清康)-竹千代(松平広忠)-【竹千代(松平元康・徳川家康)】-竹千代(徳川秀忠)-竹千代(徳川家光)-竹千代(徳川家綱)=徳松(徳川綱吉)……

果たしてすくすく成長する竹千代。このまま幸せな日々が続けばよかったのですが、そうは問屋が卸しませんでした。

■わずか3歳で母と生き別れ

大河ドラマではまさかの割愛?!竹千代(松平元康)の誕生&母との別れ【どうする家康】


竹千代少年像。母がいなくて寂しくても、松平家を背負うため気丈に振る舞う(イメージ)

こヽに御母北方の御父水野忠政卒して後。その子下野守信元は今川方を背き織田がたにくみせられぬ。   広忠卿聞給ひ。昔今川の興国たるとは人もみなしる所なり。然るに今織田方に内通する信元が縁に結ぼふるべきにあらずとて。北方を水野が家に送りかへさるヽに定まりぬ。
これは   竹千代君三の御歳なり。御母子の御わかれをおしみ給ふ御心のうちいかばかりなりけむ。

※『東照宮御實紀』巻一「天文十三年広忠離別水野氏」

「何、下野殿が?」

時は流れて竹千代が3歳になった天文13年(1545年)。舅の水野忠政(みずの ただまさ)が亡くなると、水野家を継いだ水野下野守信元(演:寺島進)が宗主の今川義元(演:野村萬斎)を裏切り、織田信秀(演:藤岡弘、)に寝返ります。

当時の松平家は東に今川、西に織田と挟まれており、今川の後ろ盾をもってどうにか領国を保っている状態でした。

「松平家の今あるは、今川殿のお陰に他ならぬ。織田方に内通した下野殿と縁を切らねば、わしまで謀叛を疑われてしまう」

そこで広忠は於大の方を離縁して水野家に送り返すことに決定しました。

「母上!」

「竹千代……」

まだ3歳(満年齢で1~2歳)という幼さで母親と生き別れた竹千代。その悲しみは察するに余りあるもの。

永禄3年(1560年)に再会するまで10年以上の歳月は、さぞ辛かったことでしょう。

■終わりに

大河ドラマではまさかの割愛?!竹千代(松平元康)の誕生&母との別れ【どうする家康】


於大の方。楞厳寺 蔵

以上、竹千代の誕生から母との別れまでを駆け足で紹介してきました。
大河ドラマでは第2回で速攻の再会を果たす松平母子(本当は、ここの感動にもう少し力を入れて欲しかったところ)。

ちなみに父・広忠は竹千代8歳の天文18年(1549年)に亡くなっているので、回想シーンのみの登場でしょう。

15年ぶりの再会で、母は我が子にどんな言葉を贈るのか。それを元康がどう受け止めるのか注目ですね!

※参考文献:

  • 成島司直ら編『徳川実紀 第一編』経済雑誌社、国立国会図書館デジタルコレクション

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