■古代の日本人も「爪」を彩った

マニキュアと言えば、私などは「近代以降にヨーロッパから輸入されてきたもので、主に女性が爪に塗るもの」というイメージがありますが、皆さんはいかがでしょうか?

後半の「主に女性が塗るもの」というのはさすがに古く、今は男性がマニキュアを使っていてもおかしくない時代ですが、実は前半の「近代以降にヨーロッパから輸入された」というイメージも全く違っていたことを最近になって知りました。

実は、日本人も昔から爪を装飾するオシャレを楽しんでいたのです。
それも古代から……!

もともと日本では縄文時代から、身体を装飾する習慣が存在していたと考えられています。その筆頭はもちろん「顔」のメイクで、特に赤色で彩っていたと思われます。

ただ、それくらい昔だと、こうしたメイク全般は魔除けやおまじないなど、呪術的な意味合いの方が大きかったでしょう。

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女性を象った土偶のレプリカ

人間の身体、特に顔から始まり、爪に至るまでの「化粧」が行われるようになるのは、飛鳥時代や奈良時代のことです。紅殻と呼ばれる赤い塗料を、額の中央や唇、そして爪の先に塗るというメイクが行われるようになったのです。

これが、現代のマニキュアやネイルの大元になったと考えられています。つまり、爪に施される化粧の歴史は顔のメイクの歴史と同じくらい古いのです。



■平安時代~明治時代の日本のネイル文化

もともとこうした化粧は、身分の高い貴族たちが主に行っていたようです。一般に普及したのは平安時代で、街の遊女が宮廷の女性の化粧を取り入れたのがきっかけでした。

そこで、現代のネイルの原型ともいえる爪紅が登場します。これはホウセンカとホオズキから作られた塗料を爪に塗るというもので、実はホウセンカの別名がツマクレナイ(爪紅)と呼ばれるのは、これが由来です。

大昔の日本人もマニキュアをしていた!?意外と知らない「爪の装飾」の日本史


ホウセンカの花

ここまでは平安時代までのネイルについて解説してきましたが、やがて中国から、紅花を使った染料の技術が輸入されると、発色も色持ちも格段に良くなりました。


江戸時代になると、ホウセンカの花弁にミョウバンを加えた塗料が使われていたそうです。

またこの頃すでに、指を長く見せるための指のマッサージも行われており、実は現代のネイルサロンやセルフネイルで行われているマッサージの起源もこんなところにあったのです。

明治時代になると西洋のマニキュアの技術が伝わり、当時は魔爪術と呼ばれたとか。まるで何かの魔術のようですが、マニキュアにはそれくらい、見る人を魅了する悪魔的な魅力があったということでしょうか。

■「ネイリスト」の登場と地位向上

あとは比較的最近の話になりますが、戦後になると1980年頃からネイルサロンと呼ばれる業種が登場し、国内で普及します。2000年頃には今も主流であるジェルネイルが拡がり始め、ネイルを楽しむ女性たちはどんどん増えていきます。

2012年には、ネイリスト技能検定試験は検定試験センターの認証資格になり、ネイリストの社会的な地位が確立。2014年にはネイルサービス業が独立したひとつの産業であることが認められました。

現在ではオシャレなどの用途に限らず、また性別を問わず、爪のトラブルに悩む人もネイルサロンを利用しています。ネイルの色や材質、施術方法も増え、手の指先を美しく見せる技術は日々進化し続けています。

人間の体全体で見れば、爪の占める範囲はとても小さいです。しかしこうして見ていくと、日本人も古代からその小さな範囲にこだわりを持ち、そこを装飾することに価値を見出してきたことが分かりますね。


参考資料
イミュアネイルブログ
Itnail
NailMoco
All About

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

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