■発祥はオランダ

誰が最初に気付いたのか、「砂糖と油」の組み合わせといったらまったく悪魔的で、揚げ菓子は日々世界中の人々を魅了し続けています。今回は、そんな揚げ菓子の代表格であるドーナツの歴史を説明します。


ドーナツがどのようなお菓子なのかは周知のごとくですが、一応説明しておくと、主成分である小麦粉と水・砂糖・バターを混ぜた生地を油脂で揚げたものです。

内側はしっとりふんわりしたケーキのような食感のものや、モチモチした食感のものなどがあり、形状はリング状のものが一般的ですが、ボール状のものや棒のような形のものもあります。

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たくさんの種類のドーナツ

このドーナツのおこりは17世紀まで遡ります。まずは、ヨーロッパでの普及についてざっくり見ていきましょう。

当時、オランダでは中心に胡桃を乗せた揚げ菓子が食べられていました。これはオランダ語でオリークックと呼ばれ、小麦粉・砂糖・卵を混ぜた生地を発酵させて、ラードで揚げたボール状の菓子でした。

ちなみにドーナツの名前は、「生地」を意味するDough(ドウ)と「木の実」を意味するNut(ナッツ)の二つの単語の組み合わせが由来です。ここにも、もともとドーナツには木の実が使われていた名残が伺えますね。

後年、大航海時代にこれがアメリカに持ち込まれたことで、私たちがイメージする「あのドーナツ」へと大きく近づいていきます。



■アメリカで発展を遂げて

ドーナツは、その手軽さからあっという間にアメリカ中に広まりました。有名な話ですが、第一次世界大戦中に、救世軍の女性たちが現地のアメリカ兵にドーナツを配ったところ大人気で、戦争が終わるまでに100万個が配られたと言われています。

ちなみに、穴の空いたドーナツがどのような経緯で誕生したのかは諸説あります。
アメリカでは胡桃が手に入らなかったので、本来なら胡桃を乗せる場所に穴を空けるようになったとか、船乗りが総舵輪にパンを引っかけられるように穴をあけた、など…。

味わいに世界中がぞっこん!「ドーナツ」が日本で巻き起こしたブームとその歴史


胡桃

その後、1870年代になるとドーナツの大量生産が可能となり、1950年頃にドーナツ店がアメリカ各地に登場します。当時流行だったのは、ケーキ生地を揚げたミルクドーナツでした。

では、日本はどうだったのでしょうか。基本的に、日本とアメリカは戦前から関係も良好だったので、ドーナツのレシピもかなり早い時期から知られてはいたようです。

ドーナツはシンプルな料理なので家庭でも作りやすく、また牛乳・卵・小麦粉・砂糖が生み出す素朴な味わいも親しまれていました。



■まさに「ミスター・ドーナツ」のミスタードーナツ

さて、そんなドーナツが日本で一気に流行するのは、やはり専門店が登場してからです。

本邦で登場した初めての専門店は、1971年のミスタードーナツだったと言われています。アメリカ企業と提携する形で大阪に出店したもので、さらに1970年代以降にはダンキンドーナツも出回るようになりました(その後、ダンキンは1998年に日本史上から撤退)。

この頃には、アメリカで完成したドーナツというお菓子は世界規模で知られるようになり、大量生産・大量消費の時代の象徴となっていきます。

もともとは素朴なお菓子として知られていたドーナツですが、中にクリームを入れたりグレーズをかけたりするなど、さまざまなバリエーションがみられるようになったのも、やはりミスタードーナツの登場以降です。

味わいに世界中がぞっこん!「ドーナツ」が日本で巻き起こしたブームとその歴史


愛され続けるドーナツ

それからしばくの間は、ドーナツ・ブームも落ち着いた感がありましたが、2006年にアメリカのクリスピー・クリーム・ドーナツが日本に上陸し、ミスタードーナツを超えるお洒落さや目新しさを前面に打ち出したことで評判になり、新しいブームを生み出しました。


今では大手コンビニでも気軽にドーナツが買えるのはご承知の通りですが、これも2015年頃から始まった新しいブームだと言えます。

一方で、やはりドーナツショップの定番と言えばミスタードーナツでしょう。日本ではさまざまなライバル店が登場したものの、結局パイオニアが一番しぶとく生き残っている感がありますね。

材料もレシピも素朴で古典的、手軽で扱いやすいからこそアレンジもしやすく、時代に合わせてさまざまな作り方や売り方ができるのがドーナツの特徴です。昔ながらの味だからこそ逆説的に古びないという強みを生かして、これからもドーナツは多くの人に愛されていくことでしょう。

参考資料
ヘザー・デランシー ハンウィック『ドーナツの歴史物語 (お菓子の図書館)』原書房、2015年
グリコ栄養食品株式会社
東洋経済オンライン
JBpress

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