日本人にとって洋菓子の定番で、コンビニやスーパーでも気軽に手に入るものとしてエクレアが挙げられます。今回はこの、日本におけるエクレアの歴史をたどってみましょう。
エクレアは洋菓子の一種で、フランス発祥の菓子です。エクレアという名前はフランス語で稲妻を意味するéclair(エクレール)が語源で、長方形の形が稲妻に似ていることから、そのように名付けられました。
この長方形の生地にカスタードクリームやチョコレートなどの詰め物を入れて、上にアイシングしたものなのは皆さんご存知の通りです。
エクレア
このエクレアが、日本史の記録上で最初に登場するのは幕末から明治時代にかけてで、横浜で洋菓子店を開いていたフランス人が日本にシュークリームやエクレアなどの洋菓子を伝え、1896(明治29)年には日本の洋菓子店も販売し始めたとされています。
いつ、どこのお店で最初に販売されたのかは不明ですが、やはりほかの多くの洋菓子と同様に、開国を境にして輸入されてきたんですね。
そんなエクレアが普及する大きなきっかけを作ったのが、かの不二家です。
■日本のエクレアのパイオニア・不二家
不二家は、現在はお菓子メーカーというイメージが強いですが、もともとは1910(明治43)年に横浜で創業した洋菓子店です。
当時は日本に洋菓子がまだ珍しかったので、不二家は高級洋菓子店という位置づけでした。
特に、不二家が普及発展に寄与した洋菓子として有名なのが、クリスマスケーキ・シュークリーム・そしてエクレアで、いずれも日本初の販売だったと言われています。

シュークリームとエクレア
ちなみに、シュークリームとエクレアを一緒に販売し始めたのは偶然ではありません。
実はエクレアは、シュークリームを応用したものです。シュークリームとエクレアの違いは形状とコーティングの有無にあります。
シュークリームは丸くてコーティングがありません。一方のエクレアは細長く、なおかつチョコレートやコーヒーなどのフォンダン(糖衣)によるてコーティングがなされているもの、と考えるといいでしょう。
また、フランスではエクレアの方がよりポピュラーで、シュークリームはあまり見かけません。そもそもの話、シュークリームは日本でできたカタカナ語で、フランス語ではシュー・ア・ラ・クレーム(Chouàlacrème)と呼ばれたりします。
■普及と発展
不二家が販売を始めたシュークリームやエクレアは、当時は高級洋菓子という扱いで、一般家庭には普及しませんでした。
しかし、都会の洋食店や喫茶店では人気があり、特に若い女性たちに愛されていたと言われています。西条八十が作詞した1927(昭和2)年の童謡『お菓子と娘』の中でもエクレアはエクレールとして取り上げられるなどしています。
エクレアはその後、日本で独自の発展を遂げました。例えば本場フランスではカスタードクリームを使うのが基本ですが、日本ではホイップクリームを使うこともあります。また、抹茶やあんこ、チーズなどを材料に使うことも珍しくありません。

抹茶エクレア
また、先述の通りエクレアは、フランスでは上にチョコレートやコーヒーなどのフォンダンをかけるものですが、日本では苺や抹茶、ナッツやドライフルーツなどをトッピングするバージョンもあります。
こうした歴史を踏まえて食べると、手軽に手に入るエクレアも、より深く味わえそうですね。
参考資料
スッキリ
オリーブオイルをひとまわし
株式会社不二家
The Okura Tokyo
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan