ITが発達した現代ならではのような感じがしますが、そんな輩どもが存在しているのは現代だけではありません。
江戸時代は長期にわたり戦いがなかったせいで「平和な時代だ」という人もいます。ところが実は現代に通じる犯罪はたくさん!ネットも電話も携帯もカードもない江戸時代、どうやって人を騙していたのか?……いろいろな詐欺事件をご紹介しましょう。
■役人のふりをして金品をたかる
「暴れん坊将軍」で有名な8代将軍「徳川吉宗」(写真:wikipedia)
「庶民感覚」を身に付けていたという徳川吉宗が将軍だった享保2年(1717年)頃に交付された『御触書』。そこには、詐欺への注意喚起が書かれていたそうです。
そこには「街には役人のふりをしてお金をゆすったり、飲食をたかったりする人間がいる。詐欺師でも、もし本物の役人でも必ず番所に連れてくること」とあったとか。
詐欺師だけではなく、江戸の治安を守るのが役目の与力や同心の中にも、ゆすりたかりの常習犯がいたのです。時代劇などでもよく見かけますよね。数百年の時を経た現代でも、役人や警察を装った詐欺、あるいは本物による犯罪が絶えないのは何とも情けないことです。

左「同心白岡金兵衛 市川小団次」
■チームを組んでシステム化した詐欺グループ

岡っ引きと戦うやくざもの(写真:wikipedia)
江戸時代後期、儒学者であり「経営コンサルタントの先駆け」とも評される海保青陵(かいほせいりょう)という人がいました。
その海保が、加賀藩藩士のために執筆した『東贐(あずまのはなむけ)』という江戸の食・言葉・生活環境・風俗・犯罪事情を詳しく書いた書物があります。
その中で紹介されているのが「あらかせぎ」と呼ばれる犯罪集団。
「数人の無法者が道でわざと通行人にぶつかって難癖を付け、懐のお金や櫛などを奪う」という犯罪が紹介されています。
そして、それらの強奪したものは次々仲間の手に渡り、もしぶつかった当人をお縄にしても証拠はなく追及を逃れられる……というシステム。
現代の集団スリや、「かけ子」「受け子」など分業になっている詐欺の手口と同じです。
「あらかせぎ」という言葉は「手段を選ばずに一気に大金を稼ぐこと」という意味で一般的ですが、「力ずくで乱暴に人の金品を奪い取る人間」という意味もあります。

小判(写真:photo-ac)
巧妙に人を騙して金品を奪う、そんな卑劣な犯罪はITというツールがなくても、江戸時代から存在していました。
【後編】でも引き続き「まるで現代と同じじゃないか!」と驚くような江戸時代の「詐欺」をご紹介します。
【後編】はこちらから
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