長期間に渡って戦争がなかったため「平和な時代」だという印象を持っている人も多い江戸時代。しかしながら「人を騙して金品を巻き上げる」さまざまな詐欺が存在していました。


【前編】では、役人のふりをした人間、もしくは本物の役人がゆすりたかりを行う犯罪や、システマチックにグループで行う犯罪など、そのまま現代にも当てはまるケースをご紹介しました。

「江戸時代は平和」だって?そんなの大間違い!現代に通じる悪党らの卑劣な詐欺事件【前編】
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【後編】でも、愛人斡旋詐欺や生首詐欺など驚きの事件をご紹介しましょう。

■将軍の御落胤だと名乗り金を募る

「江戸時代は平和」だって?そんなの大間違い!現代に通じる悪党らの卑劣な詐欺事件【後編】


 尾上菊五郎の「徳川天一坊」

8代将軍・徳川吉宗の時代の話。紀州生まれの山伏・天一坊 改行は、「自分は吉宗の御落胤だ」と称して裕福な商家などから献金を受けたり、仕官の口を求める浪人たちを集めて金品をだまし取ったりなどの行為を繰り返していました。

結局、天一坊は捕らえられ品川の鈴ヶ森刑場にて処刑されてしまったのですが、「天一坊事件(てんいちぼうじけん)」として、その後、この事件は講談・歌舞伎「大岡政談」に取り入れられ世間に広まることとなったのです。(実際は大岡忠相が「お裁き」をしたものではないそうです。)

天一坊は、昔から亡き母に「お前は高貴な血を引いている。“吉”の字を大切にしなさい」と繰り返し言われていたため、「自分の父親は吉宗だろう」と思い込んでしまったと伝わっています。

「江戸時代は平和」だって?そんなの大間違い!現代に通じる悪党らの卑劣な詐欺事件【後編】


 葵の紋を付けた詐欺が横行したそう(写真:photo-ac)

天一坊事件の影響か、享保時代には葵の紋を付けたり、徳川の姓を名乗ったりして金品を騙し取る詐欺事件が相次いだそうです。他人を騙ってお金を巻き上げる詐欺は、現代でも共通していますね。

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 名奉行で知られる大岡越前守忠相(写真:wikipedia)



■金持ちのお妾さんとなってお金を巻き上げる

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 江戸時代の妖艶な美人画(写真:wikipedia)

江戸時代、お金持ちや大名などは「お妾さん(愛人)」がいて当たり前という風潮がありました。そこで「愛人を紹介する詐欺業」が登場。


お金持ちや大名を相手に「美しいお妾さん」を紹介すると持ちかけ、大金を支払わせて愛人契約を結びます。その後、本当に美しい女性を愛人として送り込むのですが、実はその女性と斡旋した人間はグル。

女性のほうは「とっととおさらばしたい!」のが本音なので、夜の営みの際に毎晩わざと寝小便をした者もいたとか。

いくら美女でも毎晩寝小便をされては「こりゃたまらん!」とばかりに、男性側は契約解消を申し出ます。男性からの契約解除なので、もちろんお金は返さずそのまんま……という驚きの手口。この詐欺グループは、「小便組」と呼ばれて江戸中で有名になったそうです。

さすがに現代では「寝小便詐欺」は通用しませんが、現代のマッチングアプリで無差別に騙す「美女詐欺」の元祖のような感じですね。

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 妾桂木 実ハ児白菊



■「生首」を見せて驚かせる詐欺

「江戸時代は平和」だって?そんなの大間違い!現代に通じる悪党らの卑劣な詐欺事件【後編】


 葛飾北斎の「百物語 さらやしき」

江戸時代末期の、火災や飢饉、事件や噂話などを詳細に記録した『藤岡屋日記』。文化元年(1804年)から明治元年(1868年)までの65年間に及ぶ記録だったのですが残念ながら関東大震災で焼失してしまいました。

その日記によると、18555年(安政2年)のある夜、浅草の質屋に見知らぬ武士が訪れ、100両の借金を申し出たそう。

応対に出た番頭に、「借金のかたなら持っている」と持参した風呂敷を取り出し解いて中身を取り出したところ……なんと、まだ血が流れている女の生首だったのです。

驚いた番頭は、それでも気丈に「ちょっとお待ち下さい」と武士に言い、店の奥から棒を持ってきて武士に襲いかかったとか。


さらに「火事だ!火事だ!」と大声をあげて近所の人々を集めました。こりゃたまらんとばかりにその武士は逃げたのですが、あとにポツンと残された生首は、実は精巧に作られた偽物だったそうです。

偽生首の出来具合は上出来だったものの、おそまつな結末となった詐欺事件でした。

今回ご紹介した以外にも、印鑑偽造詐欺や息子の名前を騙って多額のお金を親から騙し取る現代のオレオレ詐欺などまだたくさん。

歴史は繰り返すとはよく言われますがまさに「犯罪は繰り返す」。使用するツールは発達しても、「誰かを騙して金をまきあげよう」という浅ましい輩は、今も昔も絶えることなく存在しているので十分気を付けたいものです。

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