そういえば豆腐など食材を四角く切ることを「やっこに切る」と言うこともありますが、なぜでしょう?
冷ややっこ(フォトACより)
そういえばお正月に揚げる凧にも、ぎょろりと見得を切ったような表情の男性が両手を広げた「やっこ凧」というものがありますね。
また子どもの時、折り紙で「やっこさん」を一度は作った人も多いのではないでしょうか。sこれらに共通する「やっこ」っていったい何者なのでしょうか。
■奴は身分の低い武家の家来

「奴凧」フォトACより
やっこは漢字で「奴」と書き、江戸時代に武士につかえた下僕のこと。
武士ではなく、農民や町民の主に次男坊など家を継げない者が雇われ、主人が出かける際に付き従い荷物持ちやその他雑務をこなしていました。参勤交代でも「やり箱」をもつ係として先頭に立ちました。
「中間(ちゅうげん)」や「折助(おりすけ)」とも呼ばれていた奉公人の蔑称で、あまりいい呼び名ではありません。時代劇では「中間」と呼ばれている場面が多いですね。
また、大名奴や旗本奴と呼ばれる人たちも現れました。
江戸時代も太平の世になると、傾奇者(かぶきもの)や伊達者(だてもの)と呼ばれた浪人くずれの遊び人が登場しますが、ここに大名家や旗本からも同じような派手で奇矯な振舞いをする者が現れるようになり、これを「大名奴」「旗本奴」と呼びました。
その姿は歌舞伎などにも登場し、時には滑稽に大げさに歩いたり、大立ち回りをみせることも。派手で粋な要素が奴に加わっていきます。

奴凧平_市川市蔵・夢想兵衛_下り中村鶴助(Wikipediaより)
■半纏の紋が由来
しかしなぜ奴が「冷ややっこ」や「やっこに切る」という言葉になったのか? それは奴の着ていた衣装に由来します。
奴は主人の家紋をつけることは許されず、庶民もよく着ていた「半纏」をまとっていました。そのお仕着せの半纏の紋が◆だったので、これが転じて「やっこ」といえば「大きな四角い形」を示すようになったということです。
参考:「歌舞伎 今日のことば」など
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