■なまはげとは何か

秋田県に伝わる民俗行事「なまはげ」は、おそらく知らない人はほとんどいないでしょう。年の瀬になると年末の風物詩としても、よくテレビでなまはげの来訪行事が行われたとニュースで報道されますね。


そもそも、あのなまはげというイベントはどのような意味や由来があるのでしょうか。

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なまはげと言えば、誰もがすぐにイメージするのが、あの鬼のような仮面をつけて藁でできた衣装をまとった姿でしょう。そして彼らは、包丁と桶を手にして地域の家をめぐります。

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なまはげの像

で、彼らは何をするのかというと、子供たちに対して「泣く子はいねがー」と吠えてびっくりさせるわけです。はたから見ていると、子供をびっくりさせるだけの行事に思えるかも知れません。しかし、あれにはきちんとした由来があります。

なまはげは、まるで鬼のようなお面をつけていますが、あれは本当は鬼ではありません。神様です。日本の民俗でいうところの来訪神にあたり、年の瀬に家々を訪れては怠け心や不和をいましめ、さらに災いを祓って豊作などをもたらしてくれるのです。

では「なまはげ」という名称はどういう意味なのかというと、もとは「ナモミ剥ぎ」という言葉です。

ナモミとは低温やけどのことで、冬場、怠け者は囲炉裏の火にばかりあたってこのナモミができます。いわばこれは怠け者の証拠であり、なまはげは、これを包丁で切って剥ぎ取っていくとされているのです。


先に書いた、人々の怠け心を戒めるというのはこういうところから来ているんですね。

■なまはげに似た各地の行事

さて、実はこの「なまはげ」に似た行事は秋田だけのものではありません。いえ、そもそも秋田県内でも男鹿市・三種町・潟上町の一部などの各地で行われているのですが、実は日本全国にもなまはげの仲間と思われる行事があるのです。

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JR秋田駅に飾られているなまはげ

例えば、鹿児島県の甑島に伝わる「トシドン」。これも古くから島に伝わる来訪神の行事で、大晦日の夜に行われるという点がなまはげと共通しています。長い鼻に大きな口という特徴的な仮面を着けて、家々を訪れては悪い子どもを戒めます。

また、ほかにも、石川県「アマメハギ」は、水木しげるの妖怪の本を読んだことがある人なら一度は見たことがあるのではないでしょうか。これは能登半島に伝わるもので「メンサマ」とも呼ばれます。天狗面などの仮面をつけて家々を訪れ、災厄を祓います。

岩手県吉浜の「スネカ」というのもあります。岩手県大船渡市三陸町の吉浜地区に伝わる行事で、奇怪な面と藁蓑姿のスネカが小正月の夜に地区内の家々で怠け者や泣く子を戒めます。

鹿児島県薩摩硫黄島の「メンドン」というのもあります。
やはり奇怪な姿で八朔の行事日となる旧暦の8月1日・2日に現れて、人々の邪気を祓ってくれます。

これらに共通しているのは、異形の神様が家々を訪れて、住民の怠け心を始めとする悪いモノを取り除いてくれるという点です。



■厄払いと神様

まだあります。鹿児島県悪石島の「ボゼ」、沖縄県宮古島の「パーントゥ」、佐賀県見島の「カセドリ」、山形県遊佐町の「アマハゲ」、宮城県米川の「水かぶり」……。ここに紹介したものは、いずれも国の重要無形民俗文化財とユネスコ無形文化遺産にも登録されています。

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宮古島「パーントゥ」の魅惑的なお面

日本では昔から、大晦日から正月にかけてのタイミングなど、季節の節目のシーズンには悪いモノがたまると考えられていました。そこで、恐ろしい姿の異形の神様を、その悪いモノを象徴する存在として受け入れる行事が昔から行われていたのです。

もちそんそうした神様は、いつまでも居てもらっては困るので必ずお帰りいただきます。

そして悪いモノが取り除かれた後で訪れるのがお正月の神様。少し話がそれますが、実は鏡餅や門松、しめ飾りなどは全て、元をたどればご先祖様の霊を正月に迎え入れるためのアイテムです。

こられの行事から垣間見える日本人のメンタリティは、はるか昔にインドネシア周辺のさらに南の島から受け継がれたのではないかという説もあります。あっちの国々にも、実は似たような行事が存在するからです。


参考資料:
ARUHIマガジン
文化遺産オンライン

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

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