「四人目の妻になれ」

プロポーズの言葉としては最悪の部類に属するでしょうが、藤原宣孝が紫式部に求婚したのは、まさにそういうことでした。

「四人目の妻になれ」紫式部に求婚した藤原宣孝(演: 佐々木蔵...の画像はこちら >>


大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより

紫式部と結婚する以前から3人も妻がいた藤原宣孝。
果たして彼女たちは、どういう女性だったのでしょうか。

今回は『尊卑分脈』より、藤原宣孝の妻たちを紹介したいと思います。

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■藤原宣孝の妻たち一覧

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宣孝の妻たち(イメージ)

  • 正室・藤原顕猷女(あきみちのむすめ)
  • 側室・平季明女(すえあきらのむすめ)
  • 側室・藤原朝成女(あさひらのむすめ)
  • 側室?紫式部
『尊卑分脈』から確認できる藤原宣孝の妻たちはこちらです。一人ずつ見ていきましょう。

■宣孝の正室・藤原顕猷女

生没年不詳

子供:藤原隆光(たかみつ)

父親の藤原顕猷は藤原南家巨勢麻呂流の末裔で、紫式部(藤原北家良門流)とははるか遠縁の存在です。

【略系図】
……藤原鎌足-藤原不比等-藤原武智麻呂-藤原巨勢麻呂-藤原真作-藤原三守-藤原有方-藤原直行-藤原邦統-藤原顕猷……

その娘とどのような関係にあったかは分かりませんが、仮に面識があったとしてもそう親密ではなかったことでしょう。

息子の藤原隆光は各地の国司を歴任し、最終的には正四位下・備中守となりました。

■宣孝の側室・平季明女

生没年不詳

子供:藤原頼宣(よりのぶ)

父親の平季明は光孝天皇の末裔(光孝平氏)で式瞻(しきせん)王の子として誕生。天暦年間(947~957年)に皇族の身分を脱して臣籍降下しました。

【略系図】
光孝天皇-是忠親王-式瞻王-平季明-女子(宣孝室)

父親の代に臣籍降下しているとは言え、皇族の血を濃く引いていることが、彼女の性格や行動にどのような影響を与えたのか興味深いところです。

息子の藤原頼宣は従四位下・陸奥守となっています。




■宣孝の側室・藤原朝成女

生没年不詳

子供:藤原隆任(たかとう。隆佐の誤記か)、明懐(みょうかい)

父親の藤原朝成は紫式部から見て義理の大おじ(妹が紫式部の祖父・藤原雅正と結婚)に当たる人物です。だから藤原朝成女は紫式部のいとこおばにあたります。

彼女が生んだ男子二人のうち、兄の藤原隆佐(隆任は誤記か)は従三位・大蔵卿にまで昇進しました。

弟の明懐は出家して興福寺の別当職を務めます。

■宣孝の側室?紫式部

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紫式部と藤原宣孝の娘・大弐三位(画像:Wikipedia)

天禄元年(970年)ごろ?生~寛仁3年(1019年)以降?没

子供:藤原賢子(けんし/かたいこ。大弐三位)

彼女が宣孝と死別し、一条天皇の中宮となった藤原彰子へ出仕する以前の経歴についてはあまり詳しく分かっていません。

宣孝との間には一人娘の藤原賢子を生んでおり、母親に似ず恋多き女流歌人として活躍するのでした。



■母親不詳の子供たち

その他にも宣孝には子供がおり、彼らの母親についても気になるところです。

  • 儀明(ぎみょう)
  • 女子(藤原道雅室)
儀明は僧侶なので、恐らく身分の低い(妾ですらない?)女性が生んだ男児を寺へやったのでしょう。

一方の女子については、藤原道雅(中関白家・藤原伊周嫡男)の正室となっており、めったな娘を出す訳にはいきません。

だから身分ある女性が生んだ娘であろうと思われますが、詳しく記録されていないのが気になるところです。


既にいる三人の誰かが生んだのか、それとも他にも側室がいたのか、今後の究明がまたれます。

■終わりに

今回は『尊卑分脈』より、藤原宣孝の妻たちを紹介してきました。

はっきり分かっているだけで四人、もしかしたら六人以上いたのかも知れません。

果たしてNHK大河ドラマ「光る君へ」では彼女たちが登場するのか、登場するならまひろ(紫式部)とどんな人間関係を築いていくのか、気になりますね!

※参考文献:

  • 藤原公定 撰『新編纂図本朝尊卑分脈系譜雑類要集 第7巻』国立国会図書館デジタルコレクション
トップ画像:大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより

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