しかし、日本では古くからお米を育て、食べてきたため、「パン」というとやはり西洋のもの、というイメージがある方も多いのではないでしょうか。
実は、日本生まれのパンがあるんです!
そこで今回の記事では、日本生まれのパン「甘食(あましょく)」に迫ってみたいと思います。
■日本語だけの名前がついたパンはめずらしい
クリームパン、メロンパン、あんパン、揚げパン、食パンなど、パンと言うとやはりカタカナ語や、漢字・ひらがなとカタカナの組み合わせでできている名前がほとんどですよね。
そのなかで、「甘食」は日本語だけの名前がついたとてもめずらしいパン。これは、発祥が日本だからなんです。
甘食の見た目は、上から見ると丸っぽく、横から見ると中央が盛り上がっているため、富士山のようにも思えます。素朴な形も何となく日本らしさを感じさせますよね。
ちなみに、このように真ん中が盛り上がるのは、生地の状態の時に十字の切れ目を入れているからなんです。
■甘食は明治時代に生まれた?
甘食が生まれたのは、大正時代とも明治時代ともいわれていますが、有力なのは明治時代という説の方です。明治時代、開国を通じてさまざまなものが日本にもたらされましたが、パンやビスケットが入ってきたのも明治時代でした。
甘食の発祥のお店には諸説あるものの、1894年(明治27年)に東京・芝区田村町の「清新堂」というパン屋によって作られたという説が有力。清新堂では「イカリ印のまき甘食」という商品が販売されており、これが甘食の元祖と考えられています。
ただし、甘食のルーツ自体は、安土桃山時代のポルトガルやスペイン人によってもたらされた南蛮菓子にあるとも言われています。
■甘食はなぜ生まれた?そして名前の由来は?
当時、パンを作るのに約半日ほどかかっていたと言われています。甘食は、そうした労力をできるだけ減らし、短い時間で作るために作られた、という内容のことも手記に残っているそうです。

甘食、という名前の由来は諸説あります。「食事の間に食べる甘い間食」から甘食になった、という説や、「甘いビスケットを大きくしたような食事用のパン」ということが理由という説などがあります。スイーツにも近いのですが、パンの一種とされています。
■認知度には地域差がある
関東生まれの筆者(私)は甘食を知っていました(そこまでたくさん食べた記憶はありませんが……)が、実は関西・西日本地域ではあまり知られていません。また、最近では関東であっても甘食を見る機会が減っているとか。
素朴でどこか懐かしい味と雰囲気を持つ甘食。長く続いてほしいものですね。
いかがでしたか?この記事が、みなさんが少しでも日本文化や歴史の面白さに興味を持つきっかけになれば嬉しいです。
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan