多くの人に愛されているフルーツ「ナシ」の歴史を前・中・後編に分けてご紹介します。
明治以降、リンゴ・ブドウ・サクランボ・西洋ナシなどの果物は主に海外からやってきました。
そして、それらの品種の中から日本の気候や日本人の好みに合ったものが選ばれ、それを掛け合わせて作られてきました。
つまり、これらは比較的新しい果物です。
それに対して、ナシ(ニホンナシ・和梨)はとても古い果物です。なにせ古事記に歌われ、日本人の飢えを救い、江戸時代に栽培技術が花開いたという歴史を持っているほどです。
日本の果物文化の中でも貴重なものだと言えるでしょう。
ニホンナシ「豊水」の木(Wikipediaより)
通常、日本でナシと呼ばれるのはニホンナシというナシの仲間です。
現在、日本で栽培されているナシは、日本原産のニホンナシ、中国原産のチュウゴクナシ、ヨーロッパ原産のセイヨウナシの三つがありますが、そのうちの一種ということです。
■ナシの「先祖」と「親戚」
これらナシ属の起源となったのは「アジアナシ」で、7000万年以上前に中国の西部と南西部の山地で生まれ、その後、他の地域に広がっていったとされています。
アジアナシの子孫たちはふるさとから東へ移動し、アジアの気候風土に適応してチュウゴクナシやニホンナシに分かれました。
一方、ふるさとから西へ移動し、西アジアや中近東でヨーロッパの気候風土に適応し、広がっていったものがセイヨウナシです。
ニホンナシはセイヨウナシ・チュウゴクナシなどとともにバラ科ナシ亜科ナシ属に属しています。
セイヨウナシはヨーロッパで栽培され、木の上では熟さないため、収穫後しばらくしてから食べる特徴があります。

香りも味わいも極上のラ・フランス
■海外でのニホンナシ評価
これに対してニホンナシはシャキシャキとした食感が特徴で、中国の長江流域に多く作られる南方のチュウゴクナシが起源です。
砂梨系のチュウゴクナシが日本に伝わり、日本の気候風土に合わせて次第に異なるナシとして分かれていったのです。
チュウゴクナシには他に楕円形や瓶形をした北方の白梨系、寒冷な気候に適し円形で小型の秋子梨系、チュウゴクナシとセイヨウナシが自然に交雑してできた新疆梨系のナシなどがあります。
フランスやイタリアなどのヨーロッパでは、古来よりセイヨウナシが食べられてきました。しかし先述の通り、セイヨウナシには収穫後しばらく置かないと食べられないという欠点があります。
そんなこともあり、最近は西欧でもすぐに食べられるニホンナシの人気が高まっています。日本でおなじみの「二十世紀」や「豊水」なども高い評価を受けています。

箱入りの「二十世紀」
欧米人にとっては馴染みが薄かったニホンナシですが、最近では「ナシ (Nashi)」の名前そのままで通用するほどになりました。
【中編】では、ナシの栽培や品種について説明します。
【中編】の記事はこちらから↓
愛されフルーツ「ナシ」の歴史は想像以上に古かった!その起源と歴史を解説【中編】

参考資料:さわむらゆたか・かじうらいちろう編集『ナシの絵本 (そだててあそぼう)』農山漁村文化協会 (2006年)
画像:photoAC,Wikipedia
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