2025年大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で、圧倒的な存在感を放ち人気を集めているのが吉原屈指の名妓と名高い「花の井」(小芝風花)こと「瀬川」です。

瀬川は江戸時代中期に実在した花魁として知られていますが、彼女に関しての明確な記録はほとんどなく、生没年も不明です。


大河『べらぼう』実在した花魁「花の井」が五代目「瀬川」を襲名...の画像はこちら >>


『[新吉原細見]/籬乃花(安永4, 1775年)』(江戸東京博物館所蔵) 出典: 国書データベース,https://doi.org/10.20730/100450858

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「べらぼう」のドラマ内では、蔦屋重三郎(横浜流星)と同じ新吉原に生まれ育った幼馴染みとして描かれています。

美しく頭の回転がよく気丈で、心の中では蔦重を慕いながらも恋愛感情を持っていることはおくびにもださず「幼馴染の親友」として蔦重に接する花の井。

16日(日)放送の7話では、花の井が蔦重のビジネスを成功に導くため、松葉屋に代々伝わる「瀬川」花魁の襲名を決意。そのあまりにも「男前ぶり」なかっこよさに、SNSでも「花の井がカッコよ過ぎる」という声が数多くあがりました。

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松葉屋の「花の井」NHK「べらぼう」公式HPより

蔦重がお江戸の名プロデューサーとして大成功したのも、花の井のアドバイスやサポートがあったからこそといっても過言ではありません。今回は蔦重のピンチを救った「瀬川襲名」を中心に、花の井の魅力を探ってみました。

■蔦重に想いを寄せながらおくびにも出さない花の井

客脚が遠のいた吉原を再び盛り上げようと、さまざまなアイデアを出し奔走する蔦重。時に裏切りにあったり、差別的な扱いを受けたり、衝撃的な出来事があったりなど苦労も多いのですが、いつまでも下を向いてはおらず顔を上げて、自分の夢を叶えるために歩き出します。

そんな蔦重を支えているのが、幼馴染の花の井です。花の井の支え方は、いわゆる「内助の功」的な、陰になってそっと目立たず慎ましく支える……という感じではありません。

頭の回転の速さ・きっぷのよさ・決断力・ポジティブ思考・行動力で力強くサポートしています。

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幼馴染で仲がいい蔦重と花の井のイメージ ac-illust

本当は、幼馴染の蔦重に思いを寄せながらも、そんな様子は蔦重にまったく見せない花の井。


ドラマの第2回「吉原細見『嗚呼(ああ)御江戸』」では、亡くなった女形役者の恋人を懐かしむ平賀源内に「蔦重への想い」をふと漏らす場面がありました。けれども、吉原の花魁である自分と蔦重が結ばれることはないと割り切っているようでした。

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平賀源内の恋人の女形役者「二代目 瀬川 菊之丞」wiki

困難が起こったときに落ち込む蔦重を「まことのことが分からないならできるだけ楽しいことを考える。それが わっちらの流儀だろ?」と励ます花の井。

もともとは、二人が幼いときから慕っていた亡き朝顔姉さん(愛希れいか)の言葉です。この台詞に「花の井が素敵すぎる」「花の井に惚れる」という声も上がりました。

花魁として正装した姿も、化粧っけのない顔にゆるい着付けの普段着もどちらも「きれい」「表情が素敵」とドラマの回数を追うごとに人気も高まっています。

言いたいことをポンポンと遠慮なく言っているようで、常に正鵠を得た一言を放つ花の井。そんな花の井が今回の7話で、蔦重のために一肌脱ぎました。

■蔦重のため吉原のため大きな賭けに出る花の井

海賊版を作っていたことで逮捕された鱗形屋(片岡愛之助)の代わりに、より売れる吉原のガイドブック「吉原細見」を作って売ると名乗り出た蔦重。

金儲けのことしか頭になく吉原のことなど少しも考えていない西村屋(西村まさ彦)らのやり方を批判し、亡八(吉原の楼閣などの主)らに、「女郎の血と涙がにじんだ金」で細見を作るなら、いい本を作って吉原が大盛況になるようにしようじゃないですかと呼びかけます。

「女の股で飯食ってる腐れ外道の忘八の、たった一つの心意気なんじゃねえですか!」という蔦重の言葉が胸に響いたのでしょう。
忘八たちも協力する気になったのです。

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吉原 仲之町の楼閣 photo.ac

そんな蔦重の苦境を話し合う松葉屋の主人・松葉屋半左衛門(正名僕蔵)と女将いね(水野美紀)。二人の会話を立ち聞きした花の井は表情を曇らせます。

けれども松葉屋の主人に、蔦重が新しく作る『吉原細見』が売れるアイデアを「一つ俺達も考えて見るかい?」と声をかけられ「あい」と嬉しそうに返事をするのでした。

蔦重にはいつもクールな笑顔を見せる花の井ですが、ここでは、ぱあっと花が咲くように表情が輝き、少女のように無垢で明るい表情をみせます。胸に秘めた蔦重への想いが溢れ出るようなシーンでした。

そして、主人・女将・花の井は皆で過去の『吉原細見』を調べます。「どれもこれも同じないようだねえ」と言いつつ、突然カッと目を見開いて「見切ったざんす!」という女将のいね。(この「見切ったざんす!」というセリフも「今年の流行語大賞だ」「使ってみたいセリフ!」などとSNSで話題になっていました)

『吉原細見』がバカ売れするのは有名な名跡の襲名が決まった時……ということに気がついたのでした。それを聞いて、なにかを決心する花の井。

■「礼には及ばねえ。けど…任せたぜ 蔦の重三」

ページ数を減らし、最新の情報を集め、何度もレイアウトをやり直しを繰り返し、やっと刷り上がった蔦重版の吉原細見『籬(まがき)の花』。


九郎助稲荷に供えて「売れますように」と手を合わせる蔦重のもとに、花の井がやってきます。

笑いながら、「これを付け加えてほしい」と差し出した書き付けには「花の井改瀬川」と書かれていました。話題を作り蔦重の作った細見が売れるよう、花の井は妓楼・松葉屋で代々続いていた「瀬川」の名前を継ぐことにしたのです。

大河『べらぼう』実在した花魁「花の井」が五代目「瀬川」を襲名...の画像はこちら >>


『[新吉原細見]/籬乃花(安永4, 1775年)』(江戸東京博物館所蔵) 出典: 国書データベース,https://doi.org/10.20730/100450858

名跡襲名は大きなニュース。当然ガイドブックもよく売れます。

「男前だな お前」という蔦重。ドラマの視聴者もまったく同じことを感じたことでしょう。

「いつもありがとな」の蔦重の言葉に振り返り、「吉原を何とかしたいと思ってんのはあんただけはない。だから礼には及ばねえ。けど…任せたぜ 蔦の重三。」のセリフがなんともかっこよかったですね。

【後編】の記事はこちらから↓

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