従来の「倍」売れる吉原細見を作れば、地本問屋の仲間に入れてもらえる……そう意気込んで吉原細見の刷新に取り組む蔦屋重三郎(横浜流星)。

吉原の未来を、よそ者に任せる訳にはいかない。
そんな忘八の心意気に応えようと、花の井(小芝風花)は不吉とされた名跡「瀬川」の五代目継承を決意しました。

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大河ドラマ「べらぼう」公式サイトより

第2回放送「吉原細見『嗚呼御江戸』」で、亡き二代目瀬川菊之丞を偲ばせた描写の伏線を回収しています。

又しても幼馴染に助けられた蔦重ですが、吉原の未来を切り開くため、これからも力を合わせていくのでしょう。

それではNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第7回放送「好機到来『籬(まがき)の花』」今週も気になるトピックを振り返ってまいります。

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■吉原細見『籬の花』は倍売れる?

吉原細見の販売量を倍に増やすため、定価の半額で売ることを考えた蔦重。定価の半額で売るためには、コストを半分にしなければなりません。

コストを半分にするためにページ数を大きく減らせばいいのですが、それで内容が薄くなっては売れないでしょう。

だから蔦重はレイアウトを工夫して、少ないページに吉原遊廓の情報をぎっしり詰め込みました。

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吉原細見『籬の花』より、大門前の店並み。びっしり文字が並んでいますが、これを彫るのは大変だったはず。そりゃ「吉原十篇じゃすまねぇぞ!」とキレるのも無理はない。

そればかりではありません。
これまで吉原細見に載せていなかったような裏通りの切見世(きりみせ。零細遊廓)まで、これでもかと盛り込みます。

劇中で河岸(かし)と言っていた場末の区域ですね。吉原細見を半額で買う(定価では買わない)ような客層の経済力でも吉原遊廓を楽しめるよう、購買意欲を掻き立てました。

かくして完成した吉原細見『籬の花(まがきのはな)』。名前の由来はお察し通り、格子の向こうに咲き誇る遊女たちの姿を描いたのでしょう。

価格は従来の48文から24文にしました。1文の価値を仮に20円とした場合、960円から480円に大幅値下げ。現代なら札1枚からワンコイン。そう考えるとなかなかのインパクトです。

こうした成果の裏にはみんなの努力があり、力を合わせて本を作り上げる光景は、いつ見ても創作の喜びを感じさせます

果たして吉原細見『籬の花』は、今の「倍」売れるのでしょうか?

■小泉忠五郎『新吉原細見』とは?

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安永4年(1775年)7月『新吉原細見』より、改として小泉忠五郎の名がある。

西村屋与八(西村まさ彦)と組んで吉原細見の出版に乗り出した小泉忠五郎(芹澤興人)。


吉原細見『嗚呼御江戸』に対抗心を燃やし、その奥付にあった鱗の家紋(鱗形屋の商標)を何度も指で弾いていたのが印象的でした。

※余談ながら芹澤興人は令和4年(2022年)NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で北条(鱗の紋)と敵対しており(江馬次郎 役)、それを暗示していたのかも知れませんね。

生まれ変わった、もとい話を戻して小泉忠五郎。西村屋が「(ウチが勝てるに決まってるから)内容はテキトーに……」みたいなことを言ったのに対して「いえ。自分、気張ります」と意気込む姿に感じ入った視聴者も少なくないでしょう。

蔦重に勝てさえすればそれでよいのではなく、自分の腕と誇りにかけて、最高の仕事を世に送り出したい。

こういう職業人としての矜持は、現代の私たちも見習いたいところです。

単に善悪や主役脇役でなく、悪役であっても一人ひとりに背負ってきた人生を感じられる作品は、間違いなく良作ではないでしょうか。

そんな小泉忠五郎が世に送り出した『新吉原細見』。劇中では五代目瀬川の襲名情報を盛り損ねて逆転負け?を喫してしまいます。

しかし仕事の力量と情熱が買われたようで、後に蔦重の改として吉原細見の出版に活躍するのでした。

最初は嫌なヤツだったけど、闘いを通して志を同じくしていく展開に、胸が熱くなりますね!ね?

■花の井が五代目瀬川を襲名

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鳥居清長「雛形若菜の初模様」より、松葉屋瀬川。


蔦重の心意気に胸打たれた松葉屋半左衛門(正名僕蔵)は、いね(水野美樹)と花の井に何かできることはないか相談。花の井が考えついた五代目瀬川の襲名が、吉原細見勝負の決定打となりました。

縁起が悪いから、と二十数年空位になっていた瀬川の名跡。しかし「自分が縁起よくすればいい」という心意気は、なるほど蔦重が言う通り男前です。

ところで自害してしまったという四代目瀬川とは、どんな女性だったのでしょうか。

元は下総国に住む農家の娘で、買われて吉原遊廓へやってきました。

持ち前の美貌に加えて多彩な技芸を開花させ、器楽(三味線・太鼓・笛など)・浄瑠璃・舞踊だけでなく、囲碁・蹴鞠・双六・俳諧に和歌まで堪能だったそうです。

また書や易占まで通じており、こうなると逆に何ができないのか聞いてみたくなりますね。

そんな四代目瀬川を、周囲が放っておくはずもありません。

やがて町人の江市屋宗助(えのいちや そうすけ)に身請けされ、両国薬研堀のあたりで囲われたと言います。

しかし実はとある大名家の家老が、表向き江市屋に身請けさせたのでは?という噂も流れました。

その後も松葉屋は代々の「瀬川」を巨額で身請けさせ、大きな財をなしたそうです。


■その他もろもろ

第7回放送「好機到来『籬の花』」を視聴して感じたもろもろについて、とりまとめておきます。

  • 今回は武家パートなかったですね。次週に期待しましょう。
  • 次郎兵衛(中村蒼)が蔦重の髷を撫でる、義弟に対する何とも言えない愛情が何とも言えませんね。
  • 『籬の花』の版木を彫った職人さんの苦労が伝わりました。
  • 鶴屋喜右衛門(風間俊介)のまぁ何とも胃もたれしそうな表情。いい悪役ですね。
  • 西村屋さんの誘いをピシャッと断った鱗の息子さん、偉いじゃありませんか。
  • 今回は九郎助稲荷(綾瀬はるか)が蔦重とやりとり?する場面はありません。
  • 小田新之助(井之脇海)、うつせみ(小野花梨)に逢いたい一心でブラック蔦屋に入社……お疲れ様でした。
  • どんな商売も誇りを持って働こう。そんな蔦重の心意気、これからもこうあって欲しいものです。
■第8回放送「逆襲の『金々先生』」

次週は鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)が復活?地本屋仲間と蔦重の前途を阻みます。

そして2週ぶりとなるお武家さんがたの動きはどうなっているのでしょうか。

2月ラストとなる次週、もうこれで全体の1/6が終わってしまう。本当にあっという間ですね。

次週も楽しみにしていましょう!

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