勝川春章の生誕290年にあたる2016年、浮世絵太田記念美術館にて特別展「生誕290年記念 勝川春章−北斎誕生の系譜」が開催されます。本展では葛飾北斎の師匠にして東洲斎写楽のルーツとも言われる勝川春章の版画を中心とした名品、関連作品を紹介します。
勝川春章「五代目市川団十郎の股野五郎 初代中村里好の白拍子風折実ハ鎌田正清娘 三代目澤村宗十郎の河津三郎」
勝川春章(1726?~1792)は江戸時代中期の浮世絵師。歌舞伎役者や力士を写実的に描き、人気を集め、晩年には一筆一筆重ねた、緻密な肉筆美人画の制作に専念するようになりました。
面倒見が良かった春章は、自身の制作活動に加えて多くの門下生を育てました。あの葛飾北斎も若かりし頃に春章に入門し、35歳頃まで勝川春朗の名で活動していたそう。北斎は春章の死後、勝川派を出て独自の画風にたどり着き、冨嶽三十六景などの名作を生み出します。

勝川春朗(北斎)「初代中村仲蔵の景清」

葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」
春章が描く作品はそれまでにあった役者絵よりも、役者の姿、顔形を迫真的に描き出しました。勝川派が描く役者絵は当時のブロマイド的なものとなり大人気に。人気役者をリアルに描き出した作風は、役者絵の主流となり、東洲斎写楽や歌川豊国へとつながっていきました。言ってみれば、春章なくして写楽なしと言っても過言ではありません。

勝川春章
「五代目市川団十郎の坂田金時と
三代目瀬川菊之丞の女暫」

東洲斎写楽「初代市川鰕蔵の竹村定之進」
春章をはじめ勝川派は役者絵が大好評となりますが、春章は更に精進を重ね、美人画や武者絵、相撲絵といった多彩なジャンルを手がけました。50台に差し掛かってからも新しい物に挑戦する姿勢には感服しきりです。
生誕290年を記念した展覧会は出光美術館でも開催されます。

■特別展 生誕290年記念 勝川春章 −北斎誕生の系譜
会期:2016年2月2日(火)~3月27日(日)
開館時間:午前10時30分~午後5時30分(入館は午後5時まで)
入館料:一般¥1,000 大高生¥700 中学生以下無料
会場:浮世絵太田記念美術館
特別展 生誕290年記念 勝川春章 −北斎誕生の系譜
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