天保の改革では贅沢禁止、文化の統制によって当時庶民の娯楽であった歌舞伎や寄席などに制限がかけられました。浮世絵も贅沢禁止の対象になり、春画、歌舞伎役者絵、遊女、芸者などの美人画を描くことが禁止されます。
しかし、江戸時代の絵師たちは禁止と言われて黙って引っ込むような柔な人らではないのです。禁止令をなんとか回避しようと、あの手この手を使って絵を描き続けます。それも皮肉たっぷりに。。。
今回は天保の改革の贅沢禁止令にガチンコで挑んだ絵師たちの作品を紹介します。
■歌川国芳「源頼光公館土蜘作妖怪図」
源頼光の土蜘蛛退治を描いているように見せかけて、実は天保の改革に対する皮肉たっぷり。源頼光が実は将軍・徳川家慶で、主君の危機に知らんぷりしている卜部季武が実は老中・水野忠邦。
後ろの妖怪にも皮肉がたっぷり込められていて、富くじが禁止された「富くじ妖怪」や、歯のないろくろ首(噺なし)などなどが描かれています。
■喜多川歌麿「高名美人六家撰 辰巳路考」
これも回避するというよりも皮肉たっぷりのような気もしますが、こういった作品によって判じ絵が盛り上がりを見せたとも言われています。
2016.11.9追記: この作品は天保の改革ではなく、寛政の改革下で美人画への名入れが禁止された時期の作品。読者さまからのご指摘ありがとうございます。
出典:浮世絵検索
■歌川芳艶「猫のせかい」
出典:天保の改革と出版物
■歌川国芳「猫の百面相」
出典:中京テレビ
■歌川豊国「工藤左衛門祐経」
出典:浮世絵を読む
■藤川貞「妖怪・着飾」
出典:アロハシャツ着とる!江戸時代に描かれたオシャレすぎる妖怪、その名も「着飾」
■歌川国芳「荷宝蔵壁のむだ書」
■歌川国芳「亀喜妙々」
これはカメを描いているように見えますが、実は役者絵です。カメの顔が人です。人面ガメ。
さらにカメの甲羅にはそれぞれの役者の家紋が描かれているんです。アイデア素晴らしすぎる!
出典:浮世絵検索
いかがでしたか?天保の改革が行われたとき、絵師たちは様々な工夫を凝らして規制を回避していました。
ですが、ご覧いただいたように回避しようというよりも皮肉ってやろう、遊んでやろうという意気込みたっぷり。そのため奉行所に呼び出されて注意を受けたり罰金刑などを受けたりした絵師は少なくなかったといいます。
江戸時代の絵師の中でもやはり歌川国芳は別格で、反骨精神たっぷりの絵を描き続け、何度も呼び出しをくらっていたそうですよ。
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