相撲と言えば、実力によりランキングされた「番付」が全ての、完全実力社会です。その地位は、番付表に名前の記載されない「前相撲」から「大関」まで、勝ち越せば上がり負け越せば下がるという、実にシンプル、かつ厳しいものです。
そんな相撲界の階級社会は、実は力士だけではありません。力士の取組みを裁く「行司」にも、力士と同じように階級が存在します。階級の上下による厳しい上下関係も、力士と全く同じです。
■行司の階級とは
力士が入門して「前相撲」という地位につくのと同様に、行司のキャリアも最初は「見習い」としてスタートします。行司見習いになるためには、「19歳未満で、義務教育終了後の健康に問題がない男性」という条件があります。
見習いは3年間、先輩行司の指導を受けながら、相撲部屋での雑用などの仕事を任されます。相撲の番付表の独特の書体の筆文字を書くのも行司の仕事のため、書道の練習も欠かせません。
そして、最初に任じられるのが「序ノ口行司」です。
序列は、下から
- 序ノ口行司
- 序二段行司
- 三段目行司
- 幕下行司
- 十枚目行司
- 幕内行司
- 三役行司
- 立行司 式守伊之助
- 立行司 木村庄之助
ちなみに式守伊之助と木村庄之助は、共に最高位の「立行司」ですが、結びの一番のみを裁く木村庄之助の方が階級が上となります。
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■服装も階級で違う
力士は階級により服装や髪型などが異なりますが、行司も階級により、それぞれ違いがあります。
その中でも、ぱっと見て分かりやすいのは、足元です。序の口から幕下までの格の行司は、袴をたくし上げて裸足で土俵に上がっています。土俵上で足袋を履くことが許されるのは、十枚目行司に上がってからです。更に昇進して三役格の行司となると、足袋の上に草履を履けるようになります。

画像出典:Pixabay
最高位の立行司は、腰に短刀を差しています。横綱・大関の取組や優勝決定戦などの大事な一番を裁く立行司は「万が一差し違えがあった場合は責任を取って切腹します!」という意味。力士の最高位の横綱と同じく、行司の最高位である立行司の「責任のシンボル」なのです。
行司の昇格や降格は、必ずしも年功序列ではありません。土俵上の態度・裁きの正確さ・かけ声や声音・後輩の指導能力などが考慮され、昇進が決められます。
また降格についても、原則として1年間に一定数以上の差し違えがあった場合には、一枚降格という定めがあります。立行司が差し違えをした場合には、協会に進退伺いを出したり、引退届を提出することもあるそうです。
相撲界の厳しさは、力士だけでなく行司も同じなのです。
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