妖怪は人間だけでなく動物にも色々いたようで、中でも有名なのは狸や狐です。どちらも化ける動物として有名でしたが、仲は悪かったとのこと。
歌川広景「江戸名所道戯尽 十六 王子狐火」
日本中に狸や狐に化かされた、という言い伝えが残っていますが、眉につばをつけたら、狸や狐に化かされないともいわれていたそうな。
■狸と狐の妖怪もいろいろ
動物妖怪の中でも定番の、狸や狐の妖怪にも色々なものがいました。例えば豆狸という化け狸は人を化かすのが好きで、猫や子犬と同じくらいの大きさでした。
篠崎村(現在の東京都江戸川区篠崎)にいた篠崎狐は、白くて大きな狐でいたずらするのが大好き。なのに、自分たちの昼寝を邪魔されたら倍の仕返しをするという悪い狐なのです。

竹原春泉画『絵本百物語』より「野狐(のぎつね)」
愛知県に出没したのは、人に憑くというおとら狐。憑かれてしまうと、左目から目やにが出て左足が痛くなってしまうのだとか。体の左側だけ具合が悪くなったら、狐に憑かれているかもしれませんよ。
■犬や猫の妖怪
平成元年にニュースになった人面犬、覚えていらっしゃいますか?体は犬なのに首から上は人間の人面犬は、実はすでに江戸時代に話題になっていたのです。驚くほど足が速くて、人間に会うと「ほっといてくれ、なんだ人間か」と捨て台詞を吐くとのこと。現代に出没したら、ネットニュースであっという間に拡散して騒がれそうですね。
愛媛には、犬神という犬の霊もいました。憑いた人には恩恵を与えるものの、憑かれた人間が羨ましいと思った相手には災いをもたらします。

佐脇嵩之『百怪図巻』より「犬神」
猫の妖怪には、猫またや五徳猫などがいました。全国に出没した猫または、歳をとった猫が妖怪になったもので、尾が二つに分かれています。昔から人間を襲う妖怪として恐れられ、性格は凶暴でした。
五徳猫は、名前の通り五徳を頭にのせ、尾がふたつに分かれた猫またの一種。秋田に出没したようです。鳥山石燕の描いた五徳猫は、囲炉裏端で竹で火を吹いていてユーモラス。とっても忘れんぼうで、五徳を頭に載せていることも忘れているようです。

鳥山石燕『百器徒然袋』より「五徳猫」
■牛の妖怪もいろいろ
動物妖怪の中には牛の妖怪もいました。件(くだん)は人間の顔に牛の体を持つ妖怪で、人面犬の牛バージョン。漢字の作りもにんべんに牛です。

倉橋山の件を描いた天保7年の瓦版
道の真ん中に横わたって道をふさぐのは、雄牛(おうし)。踏んで越えられなかったら、行く先にまた再び現れるんだとか。主に熊本県に出没したようです。
また、お盆のあと海に現れる妖怪といえば、海牛(うんむし)。角のある黒牛の姿で、恐ろしい咆哮を発しながら現れるので、なかなかの迫力ですよね。鹿児島県に出没したそう。
動物の妖怪って、意外といろんなものがいたんですね。知れば知るほど興味深い妖怪たちの世界、次回もお楽しみに♪
参考文献:山口敏太郎(2002)『江戸武蔵野妖怪図鑑』けやき出版.、小松和彦(2015)『知識ゼロからの妖怪入門』幻冬舎.
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