妖怪の中には人を驚かすだけでなく、時には人間に被害を与える妖怪もいました。例えば髪切りは、名前の通り人の髪を切る妖怪です。
佐脇嵩之『百怪図巻』より「かみきり」
鎌鼬(かまいたち)は、つむじ風と一緒にきて人の足や腕を斬りつけるとか。これも髪切り同様いつ切られたのか気づかず、後から出血があり痛みを感じるのが特徴です。

鳥山石燕『画図百鬼夜行』より「窮奇」
■水の中へずるりと引き込みます。
切りつけられるのも怖いけれど、どこかに無理やり引きこもうとする妖怪も恐ろしいですね。
引き込み系妖怪、最初にご紹介するのは千葉県によく出現した手長婆(てながばばあ)です。手が長くて、髪は白髪、いかにも恐ろしい風貌の老婆の姿をした妖怪です。いつもは水の底に棲んでいますが、水辺で子どもたちが遊んでいると長い手で水の中に引きこんでしまいます。
沖縄のカーカンローは、井戸に棲み、子どもが井戸をのぞきこむと井戸に引きずり込んだり、水面に映る影をとってしまうんだとか。陰を取られると死んでしまう、などのこわい言い伝えもありますから気をつけないといけません。

■人を襲ったり、食べてしまいます。
牛と鬼が合体したような妖怪の牛鬼は、海や滝などの水辺に出現し、人や家畜を襲うそう。また、福島の安達ヶ原の鬼婆は、宿を探している旅人をもてなすふりをして殺して食べてしまうという、なんとも恐ろしい妖怪です。

佐脇嵩之『百怪図巻』より「うし鬼」
大阪の土蜘蛛も、人間を食べてしまうと言われていました。身の丈が1m以上あるというから、かなり大きな蜘蛛の妖怪ですね。高知県の三目八面(さんめやづら)は、山道を行く者を獲って食べてしまうそうで、目が3つ顔が8つあるから見た目のインパクトもなかなかのもの。
死んだ赤ん坊がなる妖怪のアカングワーマジムンは、はいはいをしながら現れ、これに股の下をもぐられると、魂を奪われて死んでしまうか腑抜けになってしまいます。股の下を通ることができないよう、足を交差させるとよいと言われていました。
■捕まったら逃げられない最恐妖怪
最も恐ろしい妖怪は、女郎蜘蛛。昼間は美しい女性の姿で男を惑わせておき、夜になると本性を現します。とても大きな蜘蛛で細い腰そして大きくとがった尻、長くて黒い手足、黄色や黒などの斑点模様が特徴です。そして、その尻から太くて黄色いネバネバした糸を出して、男に絡みつくのだとか。いったん絡みつかれるともう逃げられず、蜘蛛の毒で弱ってしまい生き血をすすられるそう。

鳥山石燕『画図百鬼夜行』より「絡新婦」
こういう恐ろしい妖怪を知ると、脅かすくらいの妖怪がなんだか可愛くみえてくるほど。江戸時代には、日本のいろんなところで妖怪の目撃談があったのでしょうね。
参考文献:善養寺ススム(2015)『絵でみる江戸の妖怪図巻』廣斉堂出版.、小松和彦(2015)『知識ゼロからの妖怪入門』 幻冬舎.
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