ネズミのキャラクターと言うとどんなイメージを思い浮かべますか?ディズニーのミッキーマウスやポケモンのピカチュウたちみたいに可愛い存在?若しくは『トムとジェリー』のジェリーや『ゲゲゲの鬼太郎』のネズミ男のようにイタズラ好き、あるいは不潔で乱暴な困った存在だと思う人も多いことでしょう。
今回紹介する宮沢賢治の童話に登場するネズミ達は、こうしたネズミの持つ二面性を余すことなく描いたキャラクター達です。
今回紹介する宮沢賢治の童話は電子図書館・青空文庫で全文が無料公開されています。記事の最後にリンクを張っておきますので、気になる方はぜひ読んでみてください。
■悪質クレーマー、ツェねずみ
1番手は、絵本などでも有名な『ツェねずみ』を紹介します。このツェねずみは、周囲の動物や家財道具達から助言を受けてしくじると、
「僕のような弱いものをこんな目にあわすなんて」
「まどうてください、まどうてください」
という必殺技を繰り出します。
“まどう”とは“償う”と言う意味で、このツェねずみは気に入らないことがあると被害を盾にして弁償しろと迫るクレーマーとして描かれます。いたち、柱、ちりとり、バケツと言った古家の仲間達は彼と絶交してしまいますが、ツェは改心する事がありません。
結果、ネズミの天敵であるはずのねずみ取り(カゴの形をした罠)と仲良くなるのですが、だんだん態度が横柄になったツェは、餌が腐っていたとクレームをつけます。ねずみ取りを相手に揉めた時、その入り口が閉まってしまい、ツェは人間の手に落ちてしまうのでした…。
■傲慢は身の破滅…『クンねずみ』
『クンねずみ』の主人公であるクンには、傲慢でやきもち焼きと言う困った癖がありました。他のネズミやクモ、むかでといった生き物達が何か良いことを喋ろうものなら、
「エヘン、エヘン、ヴェイヴェイ!」
と咳払いをして威嚇するのです。
クンは意地悪なツェが生死不明との新聞記事を読んで喜ぶ一方、鼠会の新任議員・テねずみが立派な演説をしているのが気に入らず、またしても威張ってしまいました。彼の咳払いによる妨害に怒ったテは、配下にクン暗殺(!)を命じますが、強敵・猫大将の登場で失敗します。
猫大将はクンねずみに同情し、子供達の先生になって欲しいと言って彼を迎えますが、クンは懲りずに子猫達といさかいを起こします。算数が得意だった子猫相手に「エヘン、エヘン、ヴェイヴェイ」と悪癖を露呈してしまったクンねずみは、怒った子猫達に食べられてしまったのでした。
■身近にいるかも「ツェねずみ」「クンねずみ」
ここまで読むと、ある事に気づかされます。私達の周りにも、ツェねずみやクンねずみのようにワガママ、傲慢を押し通す人が必ずいるものです。ひょっとすると、ツェのように人の弱みに付け込んだ意地悪をしてしまったり、クンみたいに傲岸不遜な考え方を持ってしまう心は誰でも持っているのかもしれません。
賢治童話に登場するネズミは、人間に身近な生き物と言うだけあって良くも悪くも人間臭く、ブラックユーモアで笑わせてくれる一方で、時として自己反省する機会を与えてくれます。そうした意味でツェとクンの物語は、ギスギスした社会で生きる大人向けの童話と言えるでしょう。
宮沢賢治の童話「ツェねずみ」と「クンねずみ」は、インターネットの電子図書館、青空文庫で全文が公開されています。ご興味をお持ちになった方は、ご一読してみてはいかがでしょうか。
- 青空文庫|宮沢賢治 ツェねずみ
- 青空文庫|宮沢賢治 クねずみ
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