以前紹介した記事「宵越しの金は持たねえ!そんな江戸っ子の暮らし、実はレンタル店に支えられていた」では、損料屋*が家財道具や晴れ着などを貸し出していたことを紹介しましたが、他にも色々なものを貸し出していました。

今回は損料屋の意外な人気商品とその背景について紹介致します。

*損料屋:江戸時代、日用品を貸し出していたお店。

■風呂敷、手ぬぐい…損料屋は布一枚から請け負います!

今のレンタル業も食器や帽子などちょっとしたものを貸し出す事がありますが、江戸時代の損料屋も同じでした。例えば、損料屋が町人らに貸し出すものには手ぬぐいや風呂敷など一枚の布もありました。

江戸時代、吉原遊郭での勝負下着に男たちはレンタルふんどしを使...の画像はこちら >>


歌川国貞 五人男「布袋市右衛門」三代目嵐璃寛

現代人の視点からすれば、手ぬぐいくらい買えばいいのにと思いがちですが、当時は技術面・生産性で現代ほど進歩していなかったため、新しい布は比較的高価だったのです。江戸期に古着屋が流行ったのも、そうした事情が背景にありました。

■男の勝負にゃ損料屋が欠かせない!その必須アイテムはなんとふんどし

同じ理由で損料屋の人気商品になっていた“レンタル可能な一枚の布”が、主に男性が愛用した六尺ふんどしです。越中ふんどしなど布地が少なく、経済的な下帯類(そのため、近代化以降も軍などで採用された)ならば個人で所有できても、布をふんだんに使った六尺は簡単に買えるものではありませんでした。

江戸時代、吉原遊郭での勝負下着に男たちはレンタルふんどしを使っていた!?


欠留人物更紗[あくびどめじんぶつさらさ](歌川国芳 画)

損料屋と直接の関係はありませんが、落語「蛙茶番」で建具屋の半公が緋縮緬のふんどしを質屋から請け出すシーンがあり、縮緬など高価な布を用いた六尺は相当な値打ちがあったことを如実に描いています。

そうした“高価な六尺ふんどし”が必要な時、すなわち着物をからげるお祭りや、吉原遊郭での勝負下着として六尺をレンタルすることが、男性の間ではごくごく常識的なこととなっていったのです。

江戸時代、吉原遊郭での勝負下着に男たちはレンタルふんどしを使っていた!?


江戸名所 吉原仲の町桜時(歌川広重 画)

■クリーニングも請け負います!損料屋はふんどしビジネスでもあった?

六尺ふんどしまで貸し出して多くの男性に重宝された損料屋ですが、ふんどしをレンタルするお客様のハートをつかむサービスをしていました。損料屋も心得たもので、汚れたふんどしを客人が持って行けば、引き取ってクリーニングしてくれたのです。

しかも単に洗うのではなく、洗濯済みで火熨し(アイロン)をした物を、無論有料ではありますが貸してくれました。
“●●ビジネス”と言う言葉が昨今はやっていますが、損料屋のビジネススタイルは、さしずめふんどしビジネスとでも言ったところでしょうか。

汚れたら洗うだけでなく、アイロンまでして交換する―こうした先進的なサービスこそ、損料屋を一大ビジネスにまでのし上げたのかも知れませんね。

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