2月は暦の上では春に当たりますが、まだまだ寒さが残るので温かい料理(出来れば熱燗も)が恋しくなりますね。そんな時には栄養豊富な根菜と豆腐、健康食材のコンニャクを使ったけんちん汁は何とも美味しいものです。


そこで本項では、けんちん汁にまつわるうんちくをご紹介致します。

■建長寺汁?それとも巻繊汁?名前の由来も色々だった

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鎌倉の建長寺。Wikipediaより

けんちんと言う言葉の由来には二通りがあり、ひとつ目が江戸時代に幕府の保護を受けた寺のひとつである建長寺説。鎌倉時代に南宋(今の中国)から建長寺に招かれた僧侶が、崩れた豆腐を無駄にせず、野菜と一緒に煮込んだ汁物が『建長寺汁』と呼ばれ、それが『けんちん汁』になったと言われています。

ふたつ目が、江戸時代に京都の萬福寺(まんぷくじ)で作られ始め、広く愛好された普茶料理※のひとつ、巻繊(けんちぇん)が語源とする説。この料理は本来、野菜と豆腐の炒め物を具にした春巻のような食べ物、もしくはもやしの炒め物なのですが、いつしか炒め煮の汁物を指すようになりました。

このように、けんちんの由来は大きく分けて2つ存在しますが、豆腐や野菜を炒める調理法であること、中国文化、特に禅の影響を受けた寺で作られ始めたことが共通しています。仏教の戒律に基づいた精進料理の伝来を物語っているとも言えますね。

※普茶料理(ふちゃりょうり)江戸初期に中国から伝わった中華風精進料理。

■昔は慈悲と平等、今はエコ。けんちん汁は優しさの集合体

江戸時代グルメ雑学(12)寒い日の味方けんちん汁は材料を粗末にしないエコ料理


筆者謹製のけんちん汁

先述した建長寺由来説ではけんちん汁の起源は、崩れた豆腐を再利用したお汁でしたが、それには“食材=他者の命をおろそかにしない”と言う慈悲の教えが込められていると言われています。また、野菜やコンニャクを細かく切る、ないしはちぎることでたくさんのお坊さんや信者が平等に食事できるようにしているとする説もあります。


こうした食と人に対する“優しさ”は、食材を無駄にせず食べるエコの考え方にも通じるものがあり、飽食の時代と言われる現代でも見習いたいものです。余った野菜や豆腐などを使って環境に優しいだけでなく、経済的かつ美味しい料理を作る点も見逃せませんよね。

なお、余談ではありますが画像に使っているけんちん汁は筆者がチャレンジした拙作です。豚汁用のカット野菜を使うと簡単に作れるので、忙しい方にもおススメです。

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