先日の「人付き合い編」に引き続き、今回は「公共の場でのふるまい編」です。

街に出れば人も多く、足を踏まれたり肩が当たったりなどはよくあること。
そんなときに、いちいち「ぶつかった」だの言い合いをするのは野暮というもの。江戸は、身分も習慣も様々な人が集まる場所でした。だからこそ、トラブルが起きないようにいろんな手だてを工夫したという説があります。

■江戸の町を歩くとき

狭い道ですれ違うときは「肩引き」です。お互いに肩を後ろに引くことで、ぶつからないようにしたのですね。「傘かしげ」もこれと似ていて、雨の日、傘を人のいないほうに向けて、相手を濡らさないようにするのです。

また、屋内から道路に出るときは、まず右そして左と自分の目で確認しようという「片目だし」でした。現代人の私たちも、今すぐ真似したいところです。イヤホンから流れてくる音楽やスマホに夢中になりすぎると、まわりが見えなくなってしまうことがあり実に危険です。どんなときでも「片目だし」を意識したいですね。

気力が消耗してしまったら気遣いもできません。「気」が減ったら、一に眠り、二に眠り、三四はなく、五に赤ナス(トマト)と言われていたようです。
睡眠をしっかりとって栄養バランスを良くすることで、体を整えイライラ解消ということでしょう。

■刺し言葉は控えるのが粋

公共の場では実に様々な人がいますから、時には不快な思いをすることもあるかもしれません。でも、そこで感情をあらわにしてイライラしたり攻撃するのは、粋ではありません。人の感情を逆なでしたりとげとげする言葉を「刺し言葉」といいました。刺し言葉は控え、その場の空気を穏やかにしたいものですね。

江戸時代の暮らしを参考に、粋な立ち居振る舞いを身につけよう ...の画像はこちら >>


歌川広重「新撰江戸名所 日本橋雪晴ノ図」

もしも人込みで足を踏まれたなら、踏まれた方も「こちらこそうっかりいたしまして」と言ってみてはどうでしょう。踏んだ方踏まれた方がお互いに謝ることでとげとげしい空気でなくなるのです。

こういった振る舞いの根底にあるのは、思いやりの心でした。一歩引いて、他者への思いやり・譲り合いの気持ちを大切にすることで、気持ちよく過ごしていたのです。

参考文献:暮らしうるおう江戸しぐさ 越川禮子、江戸の繁盛しぐさ 越川禮子

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