平安時代の雑学、第4回。これまでの記事はこちら。


平安時代の雑学【1】この世の春を謳歌した平安貴族、その生活ぶりはなかなかカオス

平安時代の雑学【2】罰ゲームもあった?平安貴族の、雅を重んじたロマンティックな宴を紹介

平安時代の雑学【3】平安貴族の夜宴ディナーはゴージャスだけどもややこしや

前回は平安貴族の晩餐会である宴もろもろと、格式・儀礼についてのうんちくを語らせていただきました。本項では、貴族達の愛したディナーについて紹介致します。

■山盛ご飯に保存食のオンパレード…どう見てもお供えだ

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平安貴族は、当時において富と権力を兼ね備えた“雲の上”の存在でしたが宴はそれを知らしめる場でもありました。宴で珍しい食材を供することは、己の威勢を誇示することでもあったのです。

しかし、如何に美味しい食材を見つけても冷凍や冷蔵もできませんし、トラックも飛行機もありません。そう、徒歩や牛馬で運んでも腐らないようにするには、塩漬けや乾燥しか方法が存在しませんでした。つまり、アワビやウニ、キジ、カモなど高級な素材を加工した保存食が宴のメイン食材という事です。

また、これら保存食フルコースと山盛りにした米飯を、少しずつ食べて後は残すのが礼儀作法でした。残された食べ物は、使用人や貧しい人などに施されていました。当時の貴族達にとって食にこだわること=はしたない行為だったのです。

こうなると神社のお祭りでスルメや高く盛られたご飯などをお供えしているのと変わらない、と思うかもしれませんが、当時の宴は儀式でもありました。儀式ならば、このようなスタイルになるのも無理はないですね。


■味の善し悪し言っちゃだめ!味付けはセルフでお願いします。

平安時代の雑学【4】平安貴族のディナーで味の善し悪し言うのはタブー?


この頃の宴では保存食以外には、蒸し物や焼き物、吸い物、生もの(魚や鳥)などがありましたが、だし汁や味付けして供する技術は未発達でした。『めぐり』と呼ばれる調味料4点セットで味付けをしました。この『めぐり』は塩・酢・酒・醤(ひしお、味噌のような物)で、素焼きや蒸しただけの料理を食するための必需品です。

どうしてこうも素っ気ない料理なの?と思われる方も多いことでしょう。それも先述したように、食べることを卑しむ風潮とは無縁ではないようです。現代では宴会に限らず、料理を褒める時には美味しさを賞賛しますが、当時は味の良し悪しを云々するのはタブーとされていました。

体が資本=ガッツリ美味しく食べるのを大事にした武士や庶民と違い、朝廷の儀式と政治に携わる貴族の仕事は肉体労働ではありませんでした。そうした環境が、見た目は豪勢で優雅であっても、味や栄養には乏しいメニューを生んだのかもしれません。

■デザートは別腹?平安の宴会ではスイーツも大流行

平安時代の雑学【4】平安貴族のディナーで味の善し悪し言うのはタブー?


途中から批判点ばかりを述べてしまったようですが、平安貴族の宴会にも特筆すべき魅力がありました。それは、デザートが豊富だったことで、料理とは真逆に甘味は食べても美味しいものが多かったようです。

デザートは現代の和菓子とは異なり、柑橘や栗などの木菓子(きがし、果物)が主でした。
他にも、中国風の揚げ菓子・唐菓子(からくだもの)、山芋をアマズラと言う甘味料で煮込んだ芋粥などがあります。この芋粥は、『今昔物語』の説話にも登場しており、それは芥川龍之介によって短編小説の題材にもなっています。

いかがでしょうか?平安貴族の宴は一見すれば華やかなものですが、その裏には格式ばったしきたりがあったり、威勢を誇るための悩みもありました。一方で保存技術が未発達であっても工夫し、かつ宴を締めくくるデザートを凝ったモノにしたりと、現代にも受け継がれている食文化の萌芽も見られます。これら平安時代の宴会料理は、現代人の口にも会うように再現されているものもあります。興味のある方は実食してみるのも楽しい……かもしれませんよ。

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