吉原では、もちろん遊女が主役です。彼女たちを支える様々な人たちが、廊で働いていました。
太鼓持(たいこもち)も、その一人。幇間(ほうかん)とも呼ばれていました。

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座敷を盛り上げるのが、彼らの仕事です。男芸者も座敷を盛り上げますが、太鼓持の方がランクは下になります。

具体的に、男芸者は吉原に住んでいる三味線や踊りで盛り上げるプロの芸人です。妓楼に属する内芸者と吉原見番から2人1組で派遣される見番芸者がいました。一方、太鼓持はおしゃべりや酒の相手が主な仕事で、さらに下のランクになると、裸踊りをする者もいたとか。

つまり、特に何か芸を身に付けているわけではなく、お調子者で世渡り上手なことが大事だったのです。でも、これも立派なスキルのひとつですよね。

ちなみに、市中に住んでいる太鼓持は、野太鼓と呼ばれていました。落語によく出てくる一八(いっぱち)は、この野太鼓が多かったようです。いわば、フリーランスの芸人ですね。
花柳界のプロダクションに属することなく、直接旦那に雇われ、座敷を盛り上げます。お客さんの機嫌取りも、大事な仕事。旦那に従いつつも、ご祝儀はちゃっかりといだきます。

フリーの場合、「つまらないヤツ」と思われたら、二度と仕事の依頼もきません。「面白いヤツ」と思ってもらえたら、万々歳。次の仕事につなげるためにも、宴会をいかに盛り上げるかが大事なのです。旦那にいわれた予算内で、芸妓や料理の手配も行います。今でいう幹事の仕事に通ずるものがあるかも?!

太鼓持はお世辞もいうけれど、どこか憎めないキャラで人気者。落語でも太鼓持が登場する話はたくさん!

太鼓持の語源や意味は?江戸時代、吉原遊郭での宴会の盛り上げ役からきています


河鍋暁斎「吉原遊宴図」

例えば、若旦那が鍼をやってみようと思い立ち、太鼓持の一八を座敷に呼んで、鍼を打とうとする「たいこ腹」、芸妓のお梅に惚れて逢い引きの約束をするものの旦那のお座敷で無理やり酒を飲まされてしまう「つるつる」、野太鼓のの一八がお客にありつこうと道を歩いていると、浴衣を着た男と会い、鰻をごちそうしてくれるという「鰻のたいこ」など。

どの話でも太鼓持のキャラが活きています。きっと吉原でも、太鼓持は宴会の場を明るく盛り上げていたことでしょう。とはいえ、客の本音は…やっぱり「早くお目当ての遊女に会わせてくれ~」ですよね。


参考文献:ゼロからわかる!図解落語入門、大江戸ものしり図鑑

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