このドラマの中でたびたび登場人物の口から飛び出す言葉があります。「チェストー!」という叫び声。ナレーションの西田敏行さんも最後に「きばれ、チェスト!」と締めくくることが多いです。
この「チェスト!」にどんな意味があるのかをご存知でしょうか。今回はその由来や意味について紹介しましょう。
■「チェスト」にはどんな意味がある?
「チェスト」とは、江戸時代末期ごろに鹿児島地方で流行った掛け声です。『日本国語大辞典』を引いてみると用例が載っていますが、やはり叫ぶように使われた言葉のようです。「外来語かと言われるが語源は未詳」だそう。
確かに「チェスト」というと英語ではタンスやバストを意味する言葉ですよね。でもそれとは関係がなさそう。由来の一つとして「チェスト(胸)を狙え!」というものもあるようですが、本当かどうかは定かではありません。
基本的に、気分が高揚したり激励したりするときに「チェストー!」「チェー!」と叫びます。
■示現流とも関係がある
薩摩藩の武士といえば、示現流(じげんりゅう)の使い手です。「西郷どん」第一話でも少年時代の吉之助が立木を激しく打ちながら「チェエエエエエ!」と叫ぶシーンがありましたが、かなり凄まじく力強い斬撃であることがわかります。
この示現流の教えに「智恵を捨てろ」というものがあるそうなのですが、これが変化して「チェスト」となったとも言われています。
示現流は初手から全力を注いで切りつける「先手必勝」の剣術で、新選組も薩摩藩士と斬り合いになる際は「初手は絶対にかわせ」と言っていたんだとか。まともに太刀を食らうと脳天を突き抜ける衝撃があり、ひとたまりもなかったようです。
この示現流の流派の一つに「薬丸自顕流(やくまるじげんりゅう)」というものがありますが、こちらは打ち付ける際に「キエエエエ!」と猿叫(えんきょう)します。まさに猿の叫び声のような独特の掛け声で、これが気合をいれるための掛け声として使われているんです。
江戸時代ではありませんが、例えば「ゴールデンカムイ」に登場する軍人・鯉登少尉は薩摩隼人であり、作中でも度々猿叫する様子が描かれます。
「チェスト!」も「キエエエ!」という猿叫と同じく、気合を入れるための掛け声だったのです。
西郷隆盛に関しては先日紹介した「西郷南洲遺訓」の記事もあわせてどうぞ。
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